蓮の華の上 ②

蓮の華の上 ②

母の願いは、蓮の華の上に座っているような老後を送りたい。

そんな母についてのお話です。

蓮の花の上に座れるのかなあ。

潔癖症


母は、潔癖症である。
綺麗好きというには、度が過ぎている。
ただ、すべてに潔癖というわけでない。
恐ろしいほどルーズな部分がある。


子どもの頃、友だちを家に呼べなかった。
友だちが帰った後、悲惨な状況に陥る私を知っているからだ。

家に入る時、必ず足を外で洗わされていた。雪がちらつく真冬であってもルールに変更はない。
家族以外、友だちでも然り...例外はない。友だちもうちに来るのは嫌がっていた。

家を出て靴を履き、忘れ物も取りに戻るなどという時も変わりはない。
※新しい靴の場合に限り、濡る雑巾で足を拭くことが許される。
言うまでもなく雑巾は真っ白である。

今は百均のスリッパを買い貯めして使い捨てにしている。

靴も、油断しているといつも洗われていた。
漂白剤に浸し念入りに...。
当時流行っていた紺の3本ライン入りのスニーカーは、白の3本ラインに変わっていた。
半ベソで抗議すると、逆切れされコテンパンにやり返されるのである。

日中、家の窓は全開。
時間かあると手には雑巾を持ち、掃除機をかけている。
真冬は外よりも寒い。
抗議すると[埃でアレルギーになってもいいのか、感謝すべきだ]と ど叱られるのである。

アレルギーになるより、凍え死ぬかもしれないと心の中で叫んでいた。

台所や洗面所、お風呂場、トイレはいつもピカピカに磨かれている。

トイレのスリッパがトイレに並ぶのは、陽がとっぶり暮れてから..日中は日光消毒と称し、表に裏向きに干されていた。
当然、トイレで用をたす時、裸足になる。(ナイショデスケド)

「トイレの神様」 という歌があったが、辛い過去を思い出すので、嫌いです。

台所、洗面所、風呂場を使用した場合、水に濡れていてはいけない。
使う前より美しく。
我家の掟。

冬場のお風呂は、出る頃には湯冷めしている。

お菓子は粉をこぼすのを予防するため、ゴミ箱を抱えて食べるのだ。
優雅にお皿にのせてお紅茶をいただく...ありえませんでした。
母は可愛い物が好きだったから、可愛いカップやお皿を買って来ることがあったが、使用させてもらうことはなかった。
洗って乾燥させてしまうまで時間がかか
るためだ。
それでも可愛いカップを使ってみたかったから、母がいないとき、こっそり使ってタオルで拭いてしまっておいた。


外では、エレベーターのボタンが触れない。
階段の手摺も...
病院なので出された椅子には決してすわらない。
帰宅すると一式着替えて、即洗濯するのだ。


そんな母であるが、もったいないと
使い捨てマスクを洗濯して使う。
孫たちに、うけようと生きたままの穴子を頭から口にくわえて噛まれ(穴子も必死なのだ)血だらけになったこともある。

まったくどういう潔癖症なのか...
70過ぎた今では治るはずもなく 被害が拡大せず、友だちに嫌われないように祈るばかりである。

蓮の華の上 ②

蓮の華の上 ②

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-03

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