あなたの指先の美しい動きを見つめている
あなたの指先の美しい動きを見つめていると、夢の国のおとぎ話の世界へ連れていかれ、世界とは神秘な眼には見えない奇蹟が流れている事を知る。
あなたは一体何者なのでしょうかとそっと名前を呼んでみる。
グレングールド。
あなたの頭脳はどんな暗号のやりとりをして、宇宙空間に超新星を誕生させて、誰も見た事のない光の渦を浮かべるのでしょう。
それを地球と無限の重力のやりとりで回転し初める惑星が空間に浮かぶのをこれ程安心して、ゆったり親しんでいる。
その人間は宇宙空間に浮かぶ星々の色彩を見て、この世で初めて星をその手で誕生させ男になれた。それだけで生命の本能なのです。
あなたの指先に触れて、その神秘で微かな救世主の時空を感じる事に、人間のイメージは絶対絶命の境界線の先で、無限に明るい野原に浮かぶマリアの絶唱があった。
ピアノが勝手に動き始める、世紀の一大詩の世界が浮遊し始めた、その先に安息日があった。
もう人生における最上級の光がそこにあり、初めてその指先はキリストの手を掴む事を許され、嘆きの道をひたすら沈黙の中に登っていく。
グレングールドのピアノの音が聞こえ、五線譜が宇宙の鼓動を、その満月で輝かせたあなたは創造者。
ピアノが音波となって宇宙空間を漂流し、音とはこれ程までにまざまざと感性のひだを頼りに、そっと生と死のはざまに動き続けるの。
この世が全く新しい五線譜で一直線に横の線を美しく軽やかに動かし続けた人生が、全く新しいスムーズ姓で回転し始めるの。
難しく考えてはなりませぬ。
ピアニストが新しい玉を転がすのがわかりますから。
頭の中は一体どのようになっているかがわかる人がいたら、あなたこそ神童と同類項です。
さあ、パトスが五線譜に、メトロノームで規則的に流れ、宇宙の音が形作られていくのがわかります。
音の粒が積み重なり、一音性が二重性の波と重なり、深層のさざ波が波形の高周波の頂点で重なる、その時にこそ人生の真実はピアノの音になるのです。
そっと音譜に手を当てて考えてみた時、あなたの今まで生きてきた人生の音が流れて、そっと青空を見上げ本当に生きているんだわ。
この世に音譜の形状を型にはめた、真実の人生の産声を、叫びに近い鼓動を初めて聞いた人間の耳は幸せです。
振り子の波は正しく規定されて、生々しく生きた音を流して、琴線に触れる魂は生まれ変わった素の原始光。
原始光が宇宙で初めて、その生命に形状を与えたのです。
宇宙で生きた原始光が初めて言葉を語り初めた、その時空は初めて明るくなった。
宇宙に言葉の渦が降り注ぎ、原始の遺伝子の記号に触れた時、微かに光を感覚し、神経の中に一人孤独に言葉をじっと見つめている。
意味を知ったその時、生命が音楽となってピアノを弾き月光の波長が響いた。
月が微かに光の波長を強めたようです。
ピアノが自然に語り始めた、その一つ先の未来が、ほらっ、ここに見えているよ。
その色は満月がピアノに反射した色でした。まさに人間として満行の達成日なのです。
音譜の中に沈んでいく、この世で最も幸福な波長の静けさに、新しい朝が来たのです。
新しい朝であなたのピアノが門出を祝う、その静寂な灯火に沈むもう一人前のアーティスト。
女神が微笑むのを感じる。心の憧れがその未来で、ピアノに愛されているのをグレングールドは知っている。
私の人間としての指先が、宇宙と宇宙の間で鼓動を始めたのがなんとなくわかります。
さあ、音譜が浮いているのがわかりますか。
音譜はもう私のもので、宇宙で一つだけの愛になったのです。
その静けさに一人生きている人間は何て幸せなのでしょう。
語り始めた一つの音譜は原始の遺伝子と調和して素粒子になった。
ほらっ、本当にこの世に存在している。
あなたの指先の美しい動きを見つめている