水滴

水滴

私は宇宙を手で掴もうとしている。
実相の虚無の存在確認の作業に、天地が我を祝福している。
人生が変わろうとしている、新しい水が田に注がれている。
広々と続く空に雲がたゆたい、新しく生まれ変わった魂の母性回帰。
人間は空を見上げ、人生の諸行無常について考察する課外授業。
あなたは教室の窓から、その創世記の気が遠くなるロマンの情景を、静けさの中で見つめていた。
空から一雫の水滴が落ちてきた。
その水滴は生きていた証拠を示す、凝縮した魂の拠り所。
その水滴は生まれて初めて、地球に流れる情景を感覚している。
何という原始的な創世記の感覚に、水々しい流動的素性で、人間的復古の躍動する魂なのでしょう。
宇宙でたった一つの原始リズムの振り子で、水滴が生まれて、初めてこの世に飛び出そうとしている。
宇宙に太古から流れる原始の水は、地球の無限の情報に触れて生き生きと脱皮し、常に進化の系譜をたどっていく。
無限の感覚情報は昔々から流れていた水の音色に還っていく、柔らかい何も存在しない生命根元の状態。
飛ぶように、水滴もうきうきした地球の躍動体の生命活動に感化されて、常に変化していく。
水は多種多様で無限に形を変化させていく、宇宙は刻々と新しい心を提示していく。
新しい心がこの日常に戻ってきて、ふっと我にかえる人生は水滴のような一つの形に集約されたのです。
この水滴は如情無限観音様。
全情報をたった一つの水滴に集約する、全凝縮的な結晶の最も美しい物質状態。
あなたはついに重力にさからうのです。
重力を反作用して、水はふわふわと天空の真実にむけて浮き始める。
その一点は完全に、人間の感覚の一つ一つの細胞が全てを生かした色なのです。
水は命を育む、情熱の宇宙的な心象風景に清らかな風が、草原のひなげしの花を揺らす。
そして種が生まれて初めて、空中に舞うことを許され、地上に初めて花が咲き誇る、天上の楽園は青白く沈んでいく。
水滴はあなたの真実を写す、本当に初めて地球の音色を聴いた心の振動。
あなたが初めて心が動くという真実に、ひなげしの種は無限に空中に舞い続け分解し飛翔する、天の作用反作用に感動する心。
水滴は地に降っていくように、ひなげしの種は人生の役割を終えて再び地上の土に舞い降りて、色鮮やかな満開の花を、この楽園に咲かせるのでしょう
あなたに生きる真実を教えたのかもしれない。
水滴がひなげしの花に落ちた時、人生が迎合していく天地の無上の悦びがあった。
人生とは異世界同志の結合という感覚の微妙なざらつき。浜辺に佇む巫女を天空へと舞い上がらせる。
そして、砂が天空に舞い上がっていくのです。
砂の舞い上がり方は、巫女にはもうすでに知っていた事なのです。
あなたが人生を砂にさせたのだとしたら、水滴がその虚しく移ろう人生に確かな潤いを与えて差し上げましょう。
花と水滴の、誰かの意思による気が躍動する循環サイクルに、気が遠くなるような感慨に抱き、十字架の讃歌を掲げた。
水滴は天空に向けて舞い上がっていく。
宇宙の所存を知る者よ、水滴を浮かせるのです。
水滴にはあなたの全人生が宿っています。
水滴が人知れずそっと産み落とされた時、明けの明星があなたの頂上で輝き始めた。
何という美しい世界が、ここにたった一つの水滴に存在している夢のような現象。
現象は真実となり、あなたの人間の回帰へと至る大事な生命現象で、一つ誰も知らない美しい水を産んだのです。
これから水は一体何処へ行くのでしょうか。
水は生命を持ち、たった一つの生命の動きをどくんどくんと行っていく。
水は完成し、全く生まれたばかりの生命にときめき、人間の初夜を迎えるのです。
人間はそうして水に還っていく不思議。
あなたは人間になったのです。

水滴

水滴

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-06

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