指揮者

コンサートホールにオーケストラの神妙な響きで生命の伝道歌を述べ伝える。
この世で神様の遺言を託された男が一つ一つの言葉を真剣に述べ伝える。
タクトが生命の微分積分方程式の細部に宿る、一つの一つのありったけの細胞を分裂させる。
ヴァイオリンが開始の音を奏でる時、豊かな母性の感応性の中に、祈りのテーマが地球上に降り注いだ。
全てを調性的に満たして、縦の段に精緻なミニチュアスコアを重ね合わせ二つに合成された、全くこの世には無かった新しい音の響き。
高精度なリズムの模倣パターンに、理性の究極が宿り殻を破った己の限界があった。
他人が感じる事が無かった領域を見た人間の語る言葉は全く新しい光が宿る。
あなたが手を振って指揮するだけで新しい生命が分裂する音が見えてきます。
あなたのニュアンス豊かに広がる熟した手の運動神経が、御言葉を述べ伝える。
手の見事なしなりに連動し、ミニチュアの宇宙に光を与え、世界の深部でぽっと蓮の花が咲く。
赤黄緑と様々な連動分野に、弦楽器のデリケートな神経がこすれる微細な、宇宙の黒に沈む転生沈黙。
生命が触れる音感の虹の秘密が扉を開けて、誰も聞いた事のないミクロの自然のトーンが均一に静かにさざ波を立てて祈る色のパレット。
人間の色は何色あるのかを数える巫女の御姿の、そっと陰に咲くモニュメント。
あなたの手の表情が色とりどりの人生を演じ、悲喜がこもる熱情に、精霊の卵の殻が破れる音がしたのです。
殻を破れる事を知らないで死んではならない。
宇宙に一つの音楽が二つへと分化し、生命の余韻の中に全く新しい音階のテーマが現れた。すると極楽鳥の両手が巨大に広げられ、私をじっと見ています。
人の世界を酔わせたメランコリックな夜の中に、音の粒が一つ一つ丁寧に積み重ねられ、エロスの熱を初めて知る事になったのです。
鍛えぬいた筋肉美の凝縮が、たった一つの形式で、多段なパズルのモザイク画を確実にはめ合わせたのを、その時感じ取って、天を見上げたのです。
人間の中にあるオーケストラの全人的寛容さの日だまりの暖かさに、ぱっと初恋をしたのです。
初恋の中に一つの誠実な音があり、神様に化身した男が棒を強く握りしめて指揮している。
一つの腕を振っただけで虹色の宇宙が立ち上がり、この世が真っ白になる。
本気で描かれた優美な色のライン。メシアがワインを飲んで酔いしれた先の、微細な音の変容に恋している。
さあ、強いメッセージで門を叩き、意思が宿る音のミューズが降臨し、聖地でのあなたの誕生を祝っている。
指揮者を先生と呼ぶオーケストラが感謝の想いで奏でる。
努力し尽くした野性の激しきパトスで、生命の呼び水を誘い、人体は100%清められた水となります。
誰も聞いた事のない音の粒が、生命の水を呼び起こしています。
さざ波が本当の心の奥深い心理の中で、色の強弱を付けて、ぱっと伝説の傑作を時間を掛けて積み重ね、今私の遺伝子の音が成り立ったのです。
指揮する姿勢の中に、人の心を掴むギフトが創造され、遺伝子の色が動く。
初めて神様を見た日の事を憶えていますか。
端正で几帳面な感性のしなやかさで音符を発明し、満月のように飛翔させる。
この指揮者の頭の中は音の無限大。
調性が見事に変容したモザイク画の色が、一つの宇宙を形容したのです。
生命が弾けて全く新しい音が合成され、宇宙に虹が一面に如来した。
一つ一つの音の積み重ねられた努力の静寂の中で、全く新しい色が初めて意思を持ったのです。
宇宙に色がほんのりとしっとり一滴の雫を垂らした。
あたり一面に虹が広がる。さざ波は人類初めての意思の現れ。
そっとマリアの手がさざ波の水面に触れた。
全宇宙に音が全く無くなった。