寺の建立

寺の建立

どの神社仏閣にも、なぜこの場所に立てたのかという初まりの時点があるのです。
初めて作った人間の顔の表情を想像してみる。
脈々と続く歴史の中で、人々の心の拠り所となって救われてきたのです。
この宇宙で初めて建物を作る、人間の意思と類い希なる行動力に和讃いたします。
お坊さんが仏門をくぐり清める心の領域で、ただ自然に流れるイロハを感じていた。
遠くで赤ん坊が泣いて、山里に秋の気配が立ち上がり、葉は赤く表情を変象し、万象は変幻していく。
その仏門には遠い歴史の脈々と熱い想いを爆発させ決心した、人間の御姿があったに違いない。
人間の媒体の知れない心の闇に、光を照らす法灯の行方はあなただけが知っている。
仏門を叩く強い決心に、人知れず雨風露は立ち昇り、人間の中の仏様を暖める。
じっくりと暖めた法灯の手触りはしっとりとなめらかだった。
人の恩を感じ情緒に酔い知れる、夜空の星は全て我のものになった。
お坊さんと禅門答しながら歩いて行く、古道の幾年にも想いを馳せた情熱。
かさかさと葉桜が音を立てて、本堂にお経の雫が立ち昇り、水の流れで湿った人智の才覚。
人間が立ち昇るお経の美しい問い掛けに、この暖かい心が必要だったのです。
こうしてお坊さんは葉のしめりを手に取って確認する。そこに空海も感じたであろう、万葉の文学がひらひらと舞っていく。
そして仏様の手の平に葉が舞い降りた時に、ふふっと微笑した。
私の方を見て万象変化のメッセージの中で、ふわっと羽化する始祖鳥。大きな羽根があり羽ばたける事を教えられた。
羽化する際の微かな殻の破れる音を奏でる時、豊かな心のシンフォニックに、ぱっと顔を微熱で赤らめた。
宇宙の中心で、お坊さんは小鳥のスムーズに翔るラインに、思想の柔軟性を教えられた。
小鳥がお坊さんの頭の上で念仏のさざ波を起こしている。
宇宙が起き上がった時に念仏が奏でられ、三つ葉の静謐な中心部に、次元的に広がる羽根でアリアを一番居心地良く歌う。
森の中には自然の明暗する念仏の響きが流れ、天上から光が注がれる時、全く新しい心が生まれた。
一つの悟りが、天上歌の中に舞い降りて、明星の一つの光が幸せになる為の法を授けた。
ダンス、ダンス、ダンス。この幸せな祈りの中に精霊の分化と合唱があった。
そして手を合わせると山犬が「がるる」と泣いている。
山犬の神掛かる様に、一つの努力の結晶があり、宇宙に輝く明星になったのです。
山犬を諭すお坊さんの様相に圧倒される救いへの指針。
山犬はこの世の鎮守の精霊の御姿である巫女へと、容姿を変えた。
表と裏の人間の心をぱっとこじ開けられる。人心の行方は、宙の身軽さに滴る一雫のスープ。
人間として生まれてきて、思想の変化の如く水が流れ、究めて変象していくまたとない一期一会。
一つの事象が変化して全く新しく生まれ変わる。
何を考えて森の中で人生を門答したのでしょう。
心の中には秘密があり、誰も感じた事のない言葉があります。
一人の人間としてこれまで生きてきました。
こうして森の奥に佇む仏門にたどり着いたのです。
決心して叩く堂々とした門の先は、万物の起点でした。
人間を究める為の日々の修行の積み重ねが、安らぎのオーラになっていきます。
この世は全く新しい森の色彩をしていて、新しい葉が分離してさざ波が現れ、しっとりと雫に結晶化して一つになった。
お坊さんは天の星々を見つめていた。
満天の銀河に囲まれて、満ち満ちた新しい音楽が生まれた。
銀河の軸の中心に、お坊さんが主役となり、お経のさざ波が流れ言葉の中心軸へとセットされた。
天地は一つの心にセットされて新しい物語が生まれた。
この世に一つの寺の建立は、お坊さんの熱い想いなのです。
さあ、この場所に仏像を立てましょう。
その決意が天地に救いをもたらすのでしょう。

寺の建立

寺の建立

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-06

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