或る阿呆どもの一生
デスクに秘書室長から尾上雄二に連絡が・・。
「CEO・・お客様がお見えになりました・・お通しして宜しいでしょうか?」
訪問客は雄二と同じ家に住む若井夕子と・・。
「貴方の脚本で三田綾子事務所の撮影風景を見に行くんでしょ?あ、此方は・・【時間】から来られた方で・・」
雄二の巨大グループ企業にはほぼ人類の社員しかいない。其処で雄二と同じ様な百五十億年彼方の「創造惑星」から訪れているのは三人になる。
時間が無く、仮称~という表現はやめるので~造語同然として解釈をして戴きたい。勿論、時間や距離・空間・その他あらゆる事が人類社会の常識でははかり切れない事になるのは・・仕方が無い事である・・。
【時間】の意味だが、巨大な宇宙空間には多くの生命や生命体が存在する。一例で表現をすれば、多層・次元・・その他空間という事になる。
どうして彼が訪れたのかは・・何れ終わりごろに分かるだろうが・・本日は時間の都合上尻切れトンボで終えるが・・仕方が無い・・また明日続きをという事になる。
少し説明をするが、三田綾子と尾上雄二は其々同じ時期に青い惑星の二名の人類と互いに合意の上同化していた。
つまりは、人類と同じ社会を体験をした事になる。其れに対し、若井夕子は二年程前にやって来た。
という事は、科学の向上により二人より更に進化を遂げているという事になる。では、双方の違いはどういう事かなのだが、宇宙空間は広大で計り知れないと言ってもおかしくはない。従って空間全体を把握する事は出来ないのが実情とも言える。
如何に先の二人が優れた文明の住民であるにしても、限りがあるのはやむを得ない。夕子はVersion up という言葉は和製英語であり・・英語圏では使用されないが、素直に部分的に頭脳が進化しているという意味で構わない。
部分とは何かと言えば、二人より広範囲の生命や生命体と交流が可能だという事になり、其れで、【時間】次元の彼を伴って来た。
では、「創造惑星」についてなのだが、例えば青い惑星は自然災害などによる危険と対峙してきた。
百五十億年遥かに進歩した彼等の創造惑星は、およそ太陽系の恒星の百倍以上の大きさ・・と言っても実際には人類の常識である単位とは異なるが。
彼等の長い経験上知り得た知識から、球体が創造されたのだが、青い惑星の様にマグマも無ければ、海水・大気も無い。
其れがどういう事かはお分かりだと思う。更に、過去彼等が遭遇した中で最も危険性が高いと判断したのは、巨大な隕石・軌道を外れた惑星等が球体に衝突した事である。
現在も同様球体の表面を覆う様に堅固で且つ弾力性に富んだネットのbarrierが施されている。
目的は、衝突時に衝撃に耐えるばかりでなく、跳ね返し距離をおいてから消滅させる事にある。
しかも、光というものを透さない・・万が一外敵が訪れた際にも透視できず、人類のような生命体では、五感では感じられない。
且つて、様々な惑星などから信号が送られてきた。一例が青い惑星のNASAなどからの信号なのだが・・距離的に届かない事と極めて信号としては脆弱だった事に起因する。
其の後宇宙空間を移動する際に、生命体反応をキャッチしながら、多くの生命や生命体の存在を把握してきた。
其れが、現在では次元といっても人類の定義する其れとは異なるが、【時間】のような次元空間とも交流を図るようになった。
まあ、その事については人類の関心事では無いのだから此処でやめておく。
彼等は綾子の撮影所まで向かう事にした。京都や東京都の撮影所では無く、今回は雄二の別三次元空間所在グループ会社の撮影所で行われている。
其処に向かった。
「あら・・いらっしゃい・・其方が夕子さんの信号を捕らえ交流が始まった方ね・・どうぞ宜しく・・しがない役者ですが・・此処では・・」
彼の出番までは・・信号のみで表現する。
「・・ところで、今回のものは綾子さんお得いの時代物かしら?」
「・・ええ、時代物というか・・教育番組というか・・勿論撮影だから筋書きはあるわよ・・雄二の脚本による・・」
「・・三田さん・・尾上CEO・・お願いします・・」
赤いランプ・・撮影中という意味・・。
今回の主役は今でもそうかは分からないが・・業界では「M3層」と呼び、50歳以上の男性(Male)をカテゴライズした言葉。元はビデオリサーチのマーケティング用語。
準主役はM1層(エムワンそう)20~34歳までの男性で、Z世代などという様な言葉は無かった。
実はこのシナリオは脚本と若干異なる展開のsceneになっている。
脚本では、こんな事になっている。
主役の彼と同じグループのcadre~元幹部~元TOPからの助言の一幕が前提となっている。人気が落ち・・向かう目的には・・巷の強力な人気が必要だった。改正だけでなく・・全てを強引に押し進めるのには・・不人気のままでは無理が来る・・そこで主役の彼と同じグループのcadreが図ったのはこんな事。
「・・人気が無いのなら・・此れでいける・・同情を買えば人気は上がり・・次にはお前の故郷である・・被災地広島で行う意味は・・「Group of Seven」summit(山頂の意。) meetingでさらに盛り上がり・・お前の目的に向かって突き進む事が出来る・・万々歳じゃないか?」この件については、文明の民である雄二達は誰達(言い出しっぺは勿論・・鰻公あん・・かなり広範囲の人物迄・・。)が事前に関わり、脚本どおりであれば至極満足の筈だった。
雄二の弁。
「・・まつりごと(政治)・・は「あやかし」「騙し」が常套手段・・」
脚本家である雄二は・・以下にあるような展開を書き出していた。
此処で、元TOPの企画がどのようになったのかを、一旦演技より先にシナリオを逆転させると・・。こんな事になった。
雄二がシナリオと脚本とが異なる部分を質問。
「・・7・・?」
シナリオライターが・・。
「・・そもそも・・5から6になり・・8まで行ったのですが、大ものが外れて・・現在は7。ところが・・実際には既に巷が求めるような状況では無くなっているんです。グループが描いたものは・・何処からも好まれ頼りにされる筈だった。広島で行ったのも・・本来被爆者を追悼するという趣旨が意義があると思われた。ところが・・終了した結果寧ろ・・評価が上がるどころか・・下がる原因になった・・シナリオは其処のところを変えなければならなかったんです。被爆者の絶望は・・。どうして・・広島でやったのか・・被爆の状況を考えて貰うのでは・・?特に反感を買ったのは・・認知が衰えたバイデンの一言「・・絶対に謝らない・・」被爆者としては・・誰が無差別大量殺戮をしたのかを承知の上での期待だった。其の本人が・・知らぬ存ぜぬばかりか・・唾を吐きかけてしまった・・韓国の慰安婦どころの規模ではない・・東京大空襲では二時間に十万人・・更に全国での犠牲は数えようもない・・其処に駄目出しの二県への人体実験目的での投下で・・7万・9万・・その後も核実験を繰り返し・・人体実験を繰り返し・・禁止兵器によるベトナム・イラクの民間人虐殺に至り・・USA国民からの非難もあった・・結果・・広島は人気を挙げるどころか・・後に期待をぶち壊す事になってしまった。最早・・第三世界のニーズに応える方が重要になって来、大物は笑っている・・みた事じゃないか・・仕掛けた国の見かけのGDP?Default回避で景気回復?そんなに簡単に考えるのは・・早計じゃないの?・・株価は連動していない・・其れも一年半後迄で・・真っ逆さま・・」
再び・・。
「M3層」が或る人類を褒め称える所からスタートが予定されているが、シナリオを見た M1層が少し勘違いをしたようで・・。
カメラさんはシナリオ通りに、既にスタンバイしていた彼にカメラを回す。此処で手違いが生じた。
「NG・・。(「No Good」の略。つまり、やり直し。)」
「・・お~い、まだ早過ぎるよ・・自分だけ目立とうたって・・主役が何もしていないのに・・喋り始めてからで無きゃ・・ああ、それじゃあ・・不自然だよ・・現実味がないじゃないか・・」
既に彼は手に持っていた缶詰を・・投げてしまっている。
再び・・NG。
の筈が・・撮影は進行している。
どちらも役者であるから・・相手の動きに合わせて演技を披露するのだが・・
シナリオでは・・周囲がその動きに反応をし・・だったのだが・・。
「・・お~い・・その演技・・」
内トラ・・スタッフによるエキストラ・・が、慣れていないせいか・・。
「・・お祭りの神輿じゃないんだから・・そんなに大勢で持ち上げ・・如何にも目立つように・・彼方此方に・・USAなら・・即ズドンーで終わりだぜ・・」
肝心の主役は・・翌日・・誰も言わないからと・・他のキャストの台詞を・・。
「・・暴力反対・・」
「・・自分で言ったらだめじゃん!」
どうやら・・まだ終わりそうもない・・。
時間が無いので・・続きは明日に持ち越す・・。
雄二達の頭脳の中を写したカメラは何を物語るのか・・。
何処がどうおかしいのかを・・。
乞うご期待・・。
まあ、此れでは・・詰まらないだろうから・・貼り付けなら時間がかからないので・・少しだけ・・。
「彼方此方で・・Downpour・・」
「あ、あれ・・」
安田明は腕時計を見て呟く、「昼休みもあと十分程で終わりだな」
銀座七丁目の裏通りを会社に向かって歩いていた。
突然の雷鳴に雷光。
明は朝のニュースチャンネルの天気予報を思い出した。
「今日は大気が不安定なので、急な豪雨に注意をして下さい。お出かけの際は、折り畳み傘を忘れずに」
明は空を見て、「天気予報が当ったようだ。雨だ。参ったな」
会社まで走ろうとした。
背後で鈍い音がした。
明が振り返ると、今通ってきた歩道に置かれている黒っぽい塊を、事務服を着た女性が、右手の人差し指で指さしながら、左手で口を押さえている。あっと言う間に数人の人垣ができた。明は何だろうと思って覗いてみようとしたが、雨は土砂降りになるし、時間が無い、戻らなきゃ。
明の会社は老舗のデパートだ。昼休みは交代でとるが、時間までに戻らなければ、他の社員に迷惑をかけることになる。交代で、菅野洋子が休憩に入った。
明の所属は、紳士服及び婦人服売場のブランド店で、メンバーは男女三人だ。
一応、明が責任者、あとは女性が二人。洋子と今井美紀、美紀と明は三年程前から、付き合いを始めて三年程になる。明は二十代後半、美紀は二つ下、洋子は四十代のベテランだ。洋子が休憩を終え戻って来た。洋子は年の功だけあって、仕事や社内の人間関係などに詳しい。スピーカーというニックネームを持っている位、お喋りでもある。
売り場では私語は慎まなければならないから、昼休みや三時の休憩時間などに女性専用の休憩室で一気に花が咲いたようにお喋りが始まる。
今日のトップニュースは何だったのか。
しかし、彼女の別名はそれだけでは無かった。ベテランで一人者だから、貯金が相当あって、「銀行」とも呼ばれている。つまり、銀行に融資を依頼するように、金を貸してくれと言って、結構多額の借金を依頼してくる者もいるらしい。尤も、社員同士での金の貸し借りが、何処の会社でもそうだろうが、社内で漏れたらクビにもなりかねない。何処からそんな話が漏れるのか。ひょっとしたら、貸借りにトラブルがあって、争い事があるのかも知れない。とんでもない高利で貸し、取り立ては鬼のように厳しいらしいから。
今日も、明と美紀は待ち合わせをしていた。社を出て少し歩いた処に中華料理屋があるのだが、その横から細い地下道がメトロ銀座四丁目の駅まで繋がっている。近道として或いは人目に付きにくいからと、利用する人達は多い。
明が地下道の手前にある小さな書店で雑誌の立ち読みをしていた美紀の肩に触れながら、「お待たせ、待った?」
美紀はびくっとしたように顔をゆっくりとこちらに向けた。
明が笑顔で、「何、何かあったの?」
美紀は手に持っていた雑誌を元の場所に戻して、明と歩き始めた。
美紀は並んで歩きながら、「今日昼頃、社の近くのビルから飛び降り自殺をした人がいて、その人の着ていた黒いスーツがうちのブランドだったらしいの」
明が昼に見た光景を思い浮かべながら、「ああ、あれがそうだったのか。また、スピーカーからの情報なの?」
美紀は大きく頷きながら、「それが、また、洋子さんが販売した客だったらしいから、休憩時間はその話だけで終わってしまったくらい」
夜の銀座を、二人は並んで歩いて、二丁目の裏道にあるパブに入った。
一番奥のテーブルに向かい合って座るとドリンクと摘みを注文した。
明がグラスを手にして、「電車に飛び込みっていうのはよくあるが、ビルから飛び降りってあまり聞いたこと無いね。昔はあったかも知れないけれど・・」
明が笑顔を見せると、「暗い話はそろそろやめにしよう。この前の時に話したけれど、君の実家に行ってご両親に挨拶をしようと思うんだ。もう、二人で決めた事なんだから、その方がいいよね」
美紀が笑顔を浮かべて、「そうね。うちの親なんか気を使わなくてもいいんだけれどね。まあ、一応、そうして貰えれば喜ぶだろうし、その後は二人だけで海外の教会あたりでやるのもいいしね」
明も笑顔満面で、「いいね。今、そういうのが流行みたいな事も聞くし。海外か、海の綺麗な・・バリ・ハワイとか・・」
二人の素晴らしい夢は叶いそうだ。
美紀が店の窓を見て、「あら?雨かしら?」
窓ガラスを流れる雨の様子ではかなり降っているようだが。
話も一段落をして、明が、「そろそろ、引き揚げようか?折り畳み傘は持っているから。ああ、君も持っているの、良かった」
二人がパブを出た時には土砂降りだった。
明が、「なるべく一緒に行かないと、傘が小さいから」と言って、美紀に体を合わせるように歩き始めた。
鈍い音がした。
降って来たのは雨だけでは無かったようだ。
黒い塊が目の前に。
胸にネームが「菅野」
銀座通りの電光掲示板には・・。「今日は雨時々・・でしょう」
「世の中に片付くなんてものは殆どありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから他にも自分にも解らなくなるだけの事さ」
「矜誇、愛欲、疑惑、あらゆる罪は三千年来、この三者から発している。同時にまた、おそらくはあらゆる徳も。芥川竜之介」
「人知におもいあがっている人間はいつかそのためにむごい罰をこうむる事があるのではなかろうか。志賀直哉」
「by europe123 Vor der Tragödie 」
https://youtu.be/N6mykOAclrI
或る阿呆どもの一生