烏よ さよならを教えて
さよなら、
打ち棄てられ 淋しさの高空を泳ぐ烏、
真暗に清んだ神経の闇をただよう 薄気味わるげな少年…
──さよなら、さよなら…!
さよなら、
うす暗闇の神経痛に痛み、淋しさに傷み、
無き城へ黒翼を撥ねるようにし祈りに悼む 風景と分離した翳…
──さよなら、さよなら…!
さよなら、
夕陽に炎ゆり夢に砕ける街に 冷たげに弧を曳いた、
あなただけのあなたの生きた孤独の翳、地に臥す肉の骸…
──さよなら、さよなら…!
さようなら、さようなら、
さようなら、さようなら…!
幾たびも翳を吐き呻いた別れの歌を 光無き風景を…
喪失に「亦逢いましたね」と笑み浮べ 無を抱きすくめる。
*
黄昏にうで振る無為な暗みの一個よ 烏よ、
さよならを教えて さよならをさせないで、亦逢いましたね。
烏よ さよならを教えて