烏よ さよならを教えて

 さよなら、
 打ち棄てられ 淋しさの高空を泳ぐ烏、
 真暗に清んだ神経の闇をただよう 薄気味わるげな少年…
   ──さよなら、さよなら…!

 さよなら、
 うす暗闇の神経痛に痛み、淋しさに傷み、
 無き城へ黒翼を撥ねるようにし祈りに悼む 風景と分離した翳…
   ──さよなら、さよなら…!

 さよなら、
 夕陽に炎ゆり夢に砕ける街に 冷たげに弧を曳いた、
 あなただけのあなたの生きた孤独の翳、地に臥す肉の骸…
   ──さよなら、さよなら…!

 さようなら、さようなら、
   さようなら、さようなら…!
 幾たびも翳を吐き呻いた別れの歌を 光無き風景を…
   喪失に「亦逢いましたね」と笑み浮べ 無を抱きすくめる。

  *

 黄昏にうで振る無為な暗みの一個よ 烏よ、
   さよならを教えて さよならをさせないで、亦逢いましたね。

烏よ さよならを教えて

烏よ さよならを教えて

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted