高空の墓
如何なる翳 陽なきが故にむしろ不在した、
あっけらかんと淋しさの光源をしろく閃かせる領域、
失意のあかるみの射し、淋しいほど率直にざらついた地、
無為にいたみの刻まれた荒野よ、幾夜の墜落地に在れ──
その領域に わたしは墓を建てたのだ、
空とすら結ばれぬよう 冷然なステンレスに言葉の骸を閉ざし、
安っぽい涙のような何ともいえぬ照りかえしは軽蔑のそれ──
わたしは其処に墓を建てた、わが身よ 一つの希みを絶て。
祈り断ちて去り背を立った──背骨に銀液を注ぎ 時は経ち、
アルミの石はわたしの企みの儘にようよう剥がれて往き、
象徴派詩人どもの荒み砕けた眼元の如き、暗い荒廃を晒す、
わたしを凝視する点でしかなきその墓石の奥──白銀花の眸荒れ、
炎ゆる。余りにあまりに鮮明な白で刻まれているが故、
眞昼時 光のうえで辷り浮ぶことなき墓標が刻まれている、
夜の巨きな翼降り、幾夜の断末魔曳く荒野の背を圧迫するとき、
圧しだされるように、その言葉が銀の吐瀉物とし燦燦と垂れ──
墓標──「愛の交合」
孤独を守護し、磨け。わたしはその墓に花すら捧げえぬ。
だらしなく揺蕩うわが水の躰を 呪わしき撒水の如くに投げ放ち、
それがアルミに点と撥ねて辷りえるのを、他人行儀に一瞥する我。
わたしは孤独の風景に打たれ、音楽に斃れこんではいけない、
淋しさに安息してはいけない。孤独を主体に孤独を打て。立て。
背を墓にせよ。わたしは死せる夜鷹の彫像の如き墓石を高空へ残す、
詩人は、地に立つことなぞできやしないから──そらで背骨を立て。
*
御覧、あなたのそれは美しいだろう──自恃の宿る一領域──
肉を押しだす レリイフの如きゴチックな建築美の突起、
流れ往く儘に理不尽に泳がされ洗われた、青春の奇形疾患、
肉に産れ契りに縛られ生命を嘔吐した硬質な背骨。──破裂を俟て。
高空の墓