自我同一性障害 .1
私は誰なのか?
いつでも何かに脅えている
形も、音も、臭いも、感触も、何も無いモノに、
得体の知れない静寂が私の身を焼く
ジリジリと、低温火傷の様に心を蝕む病、
自分は其処にいて、此処には居ない、
自分は此処にいて、其処には居ない、
終わりの無い二重螺旋、同じ事を繰り返すだけのメビウスの輪、
当の昔に壊れ果てた自己同一性の欠片を手に取ってみては、
鋭い切先が掌を深く傷つける、
存在が曖昧な操り人形は
与えられたルーチンをなぞるしか能が無い、
意図を裁ち切られたら自分で立ち上がることすら出来ない、
其処に心なんて無く、また肉体すら自分のものではなかった、
他人が理解できないから、他人が理解してくれるわけも無く
また他人が助けてくれないから、他人を助けようとはしなかった、
苦い煙草の味が脳を支配する、
鎮痛剤が激しい頭痛を和らげる、
徐々にはっきりとしてきた思考の中で、
どうやって自分を殺すかを考え始めた。
自我同一性障害 .1