トキノコエ No.3 安らぎ

登場人物

凰神夏月 おうがみ なつき

黒我玲王 くろが れお

時雨瑠夏 しぐれ るか

桜木綺羅 さくらぎ きら

「キラ」
そう言って少女はまた眠りに就いた。
「キラってこの子の名前かな?」
「かもな」
・・・・・・。はい、会話終了。だって情報少なすぎるし、この子はまた眠っちゃったし。
「とりあえず、もう夜の6時だ。今日は二人とも帰っていいよ、あとは俺がなんとかしとくから」
「ちょ、なんとかって、まさか・・・・」
「あんたまさか、この子が寝てる間に変なことする気じゃないでしょうね?」
瑠夏と玲王がものすごい形相で夏月に迫る。瑠夏さん、玲王くん、何を馬鹿なことを・・・。
「ちげーよ」
夏月は二人を押し返す。この場合、マンガやゲームなら瑠夏の胸に手が偶然・・・、なんてことがある。だがそこはそれ、無駄な所に気を使う夏月さんであった。
「今日はこのまま寝かせておいて、明日病院に連れていくってこと」
「いいのか、わけありなんだろ?」
「別に訳ありなんて言ってないだろ」
「とかなんとかいって、夏月もしかしてロリコン?」
瑠夏がけがらわしいものを見るようにして後ずさってゆく。
「ちゃうわ、ボケ!!!」
「そーゆー発想にすぐ転換できるところとかさ、瑠夏ってオヤジ臭いよな」
玲王、それは禁句だよ・・・。気付いた時には遅かった、瑠夏と玲王はその後小一時間、まるで命が散る瞬間をスローで見るような。とにかく言葉にできないほど恐ろしい目にあった。ちなみにいっておくが、瑠夏は京極高校女子柔道部と空手部の部長をしている。本来なら部長の兼任はできないのだが、瑠夏は強過ぎるため特別扱いとなった。俺から言わせりゃ化けも・・・。夏月の意識は停止した(笑)

「それじゃ後は任せわよ」
「あ、あぁ」
「な、夏月、それじゃな」
「お、おぉ」
夏月はボロボロの身体で、同じくボロボロの身体の玲王と、気分爽快状態の瑠夏を見送った。
ガチャン。
しっかりと施錠をする。実は最近新手の空き巣が頻繁していた、被害件数は数十件にも上り、またけが人も多数出ているということだった。
「さてと、今日は・・・・リビングで寝るか」
自室のベッドはあの子が使っているし、他の部屋は現在物置状態。残された安息の地はリビングのソファーの上だった。
夏月は自室に戻りクローゼットの中から使っていない布団をリビングへと持っていく、4月とはいえまだ夜は冷えるのだ。
「今日はちょっと疲れたな・・・」
晩御飯の用意をしようとした夏月だが、少々眠い。夏月はソファーに横になりそのまま寝てしまった。

チッチッチッチッ・・・・。
時計の針の音が聞こえる、そして徐々に体の感覚が戻る。だが意識がはっきりしていないため起きることはできない、だが何かのぬくもりを感じ取ることはできた。だがその直後激しい痛みが体中を襲う。
「っ!!」
私は勢いよく起き上がってしまった。
「いてて・・・」
腕をさする、するとその腕には何故か包帯が巻かれていた。よく見ると体中の、さっき激痛が走ったところ全てに包帯が巻かれている。
「・・・・・・なんで?」
分からない、思い出せない。ようやく思い出せたのはそれから5分もしてからだった。
「そうよ。確か私、教団に襲われて・・・・・・」
それから、わからない。気付いたらここにいる、怪我の治療をされて、ベッドに寝ていた。
少女は少し考える、そして何かを思い立ち部屋を出る。少女は、まるでスパイや忍者のように足音を立てずに階段を下りてゆく、そして階段を下りた先にあるドアをあける。そこはリビングだった、台所のほうだけ電気がついている。
「・・・・・・」
少女は誰かいないか、警戒しながら進んだ。すると少し歩いたところで足がとまる。何かに足が当たったからだ。恐る恐る少女は下を向く、するとそこにはマヌケ顔で寝ている一人の少年がいた。年は見た目高校生、顔はいたって普通。
「この人が手当を・・・・?」
「ン?」
しまった。思わず少女は逃げ出す、だが遅かった。目を覚ました少年は少女の腕をつかんだ。
「いやっ、離して!!」
少女は腕をブンブン振り回す。以外にも少年は素直に腕を離した。
「あっ、その、ごめん」
「・・・・・・」
頭をポリポリとかく少年、どうやら敵意はないようだ。とりあえず一安心。
「そーじゃない」
「え」
「君もう怪我は大丈夫なの?」
「え、えぇ」
なんとも締りのない返事をしてしまった。すると少年はドッと力が抜けたようにソファーに倒れこんだ。
「そっかぁ、よかったぁ」
なんなのこの人。少女は少しこの少年と距離を獲った、直観的に彼女の苦手をするタイプだと思ったからだ。
「それじゃあ、ちょっと質問していい?」
「・・・・・ぇ」
「君の名前は?キラっていうの?」
キラ、確かにそれは私の名前だ。桜木綺羅、それが私の名前。
「そう」
「そっか綺羅ちゃんね、かわいい名前だね」
この少年はストレートに思ったことを言う性格らしい。「かわいい」などとあまり言われたことのない綺羅は顔を赤くした。
「か」
「か?」
「かわぃぃって言うなぁ!!!」
綺羅は赤い顔を隠すため少年を突き飛ばした。
「ブホッ!!」
綺羅は数秒してから自分のした行為がなにか気付く。仮にも彼は自分を助けてくれた人かもしれないのだ、それを突き飛ばすとは・・・。
「いててて・・・」
「あ、その、大丈夫?」
綺羅は少年に歩よった、すると少年はにこやかな笑顔を綺羅に返した。
「これだけできればもう大丈夫だね」
どうやらこの少年は自分の身より綺羅のことを心配してくれているようだ。
「そ、それより」
「ん?」
「あなたが、助けてくれたの?」
「あぁ、まぁな」
そっか、やっぱりこの人が。ちゃ、ちゃんとお礼を言わないと・・・。
「そ、その・・・ありがと」
小さな声でポツリとお礼を言う綺羅。すると少年は再びにこやかな笑顔を見せる。
「いいえ、どういたしまして」
また顔を赤くする綺羅。どうして顔が赤くなるのかわからなかったが。
「おれ夏月、よろしくな」
少年は、いや夏月は綺羅に手を差し伸べる。
「えっと。よ、よろしく」
ぎこちない返事で綺羅は夏月の手を握る。

とりあえず明日は病院に行かなくてもいいかな。
夏月は綺羅の身を案じていたが、先程突き飛ばされた時の威力、もう大丈夫だろうと勝手に判断した。
「じゃとりあえず今日はもう寝る?お腹すいてるなら何か作るけど」
「あ、じゃあ・・・」
グルグル・・・
綺羅のお腹がなる、綺羅は顔を赤くして後ろを向いた。
「じゃーサンドイッチでいいか?おれ料理とかできないから」
「う、うん」
10分もしないうちにサンドイッチは出来上がった、それを二人は無言のまま食べる。
「ふぅ、ごちそうさま」
「・・・・・・」
綺羅はなんだか眠くなってきた。さっきまで寝ていたはずなのに、とおもいつつ無意識のうちにソファーに横たわり眠ってしまった。
どれくらいしたのだろう?気がつくとそこは何もない"真っ白な世界"だった。つまりは夢だ。だけど綺羅は夢が嫌いだった、なぜならいつも冷たい、そして暗い所にいるからだ。夢の中は綺羅にとっては、いわば"嫌いな場所"の一つだった。
だが今日の"嫌いな場所"はいつもと違った。
「温かさ」そして「ぬくもり」。そういったものが感じられた。多分、気のせいだったのかもしれないが、一瞬夏月の顔が浮かんだような気がした。綺羅はフト思った、「これが夏月のぬくもり」。さっきまで感じていた気持ち、それは苦手なタイプだからという気持ではなかった。それがいまわかった気がする。たぶんさっきまで感じていた気持ちは"やすらぎ"、またはそれに似た気持ち。
綺羅はそっと温かな眠りに就いた。たぶん、今までこんな気持ちで寝たのは初めてだろう。朝になれば夢からは覚める、でも今は子のぬくもりをもうすこし・・・。

「こんな顔するんだ・・・・・・」
夏月は綺羅の髪にやさしくふれながら言う。昼間も綺羅の寝顔を見たが、それはなんだか険しい表情をしている気がした。だが今の彼女の表情は優しかった、まるで生まれたての子供のようだ。
今日はここで寝るか。
夏月はソファーに寄りかかり、そして深い眠りに就いた。

トキノコエ No.3 安らぎ

第3話うpです。
瑠夏と綺羅の言葉使い、そして感情を書くのに苦労しています。
様々な小説を読み研究をしているのですが、、、、、

トキノコエ No.3 安らぎ

魔法が当たり前に存在する世界。出会った少女の名は「綺羅」、綺羅は何気ない夏月との会話で何を思うのか________

  • 小説
  • 掌編
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  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-05-03

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