夢想に降る花束を剥く
30になった自分への誕生日プレゼント。
少年の 甘やかな夢想のうえに、
ましろき水音の花束が降った 月の織重なる行進で。
仰ぐ純潔な頬に 花の柔かい切先が落ちてきた…
跡には白き灰が残光している──夢の頬は双掌に包まれている──
*
背を折りまげ 躰をごつごつ膨らせた中年男が
そがこぢんまりな水溜の夢想を ビルの如き腹の翳に蔽い
嘗ての薄明のしろき落葉を拭った、嗤う現実の傷穴が晒された、
かれは一個の神経と変容する──清む光は神経で、神経に番う。
*
純粋さを求めるなら、現実を、塗るな。
その本性まで、傷みながら、剥け。──ぼくは齢をとって了った。
夢想に降る花束を剥く