夢想に降る花束を剥く

 30になった自分への誕生日プレゼント。

 少年の 甘やかな夢想のうえに、
 ましろき水音の花束が降った 月の織重なる行進で。
 仰ぐ純潔な頬に 花の柔かい切先が落ちてきた…
 跡には白き灰が残光している──夢の頬は双掌に包まれている──

  *

 背を折りまげ 躰をごつごつ膨らせた中年男が
 そがこぢんまりな水溜の夢想を ビルの如き腹の翳に蔽い
 嘗ての薄明のしろき落葉を拭った、嗤う現実の傷穴が晒された、
 かれは一個の神経と変容する──清む光は神経で、神経に番う。

  *

 純粋さを求めるなら、現実を、塗るな。
 その本性まで、傷みながら、剥け。──ぼくは齢をとって了った。

夢想に降る花束を剥く

夢想に降る花束を剥く

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-29

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