やつれた瞼

 清廉な 銀の飛沫の水音よ… 硬き涙音燦らせて
 ──それは天浮ぶ熾天使の、冷然な眸の如くでした──
 蒼穹 さながら重たく垂れ込む青玻璃のタイルの天井が、
 一刹那に質量を喪う さればわたしの背に蔽い被さる──

 わたし 其をやつれた瞼を透かして視た、
 わたし 其をやつれた瞼を透かして聴いた、
 一刹那に折りたたまれる悉くは空無であり、ましろ、
 果て織られ、重装し飛翔びあがって、揺蕩うは天の衣装よ。

 わたし 其をやつれた瞼を透かして視た、
 わたし 其をやつれた瞼を透かして聴いた、
 わたしには音楽が光であり、光が音楽であるのだから。

 そが死のフーガ──生を賛美する光のモティーフ、
 幾たびもくりかえされる筆致の、重奏構造の建築、
 重たく被さった瞼は一条の光にひらかれる──沈みえれば。

やつれた瞼

やつれた瞼

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-29

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