Happy Birthday
ミルクレープの詩
君がバースデーケーキを食べるところとか
あんまり想像つかなくて
ちょっとさみしい
本当は一日はぴったり二十四時間じゃないけど
みんな三百六十五、六日で歳をとる
靴紐を結び直して履くか、無理やり足を突っ込むか
家を出る数分の差で
道端のツツジがぐじぐじに茶色くなっているのを
見なくても良くなったのかも
誤差みたいな偶然の末に
出会えた世界線でも
君のことは何もわからなくて
みじめ
誕生日は知ってるのに
好きな花とか知らないし
花が好きかも知らないし
君がツツジの蜜を吸うところも想像つかないけど
とりあえず定刻通りに来た各停に乗り込んで
十七年と三百六十五日目をやり過ごす
脱げないヴェール
最近は草木がモネの絵に見える風が時間があなた以外が
新刊の平積みの中にわたしを歌った歌はひとつもなくて
恋をして手に入れたのはチキンカレー煮込めるほどの心の空洞
成人になるまで百と十四日昨日と同じローファーを履く
プリクラは脱げないヴェール進学の話に相槌打つ春の波
ずっと好きでいられる覚悟カップスープだまにならないよう混ぜ続け
箔押しの手紙を読んでくれたのがわかってすこし速まる鼓動
近い夏オルタナロックをあなたさえ良ければあなたの隣で聞こう
であい
なんでもあげます。リボン。瞳。秒針。全てを捧げてもなくならないものが愛だと思うから。なんでもあげます。心もそっくりくれてやります。それでもまた懲りずに心が湧いてくるので、また渡すことになるでしょう。なんでもあげます。地球上の全ての砂漠のどこかに、花が咲いているように。わたしの全ての鼓動と孤独は、ただ一つのためのものだったのです。
Happy Birthday