独り占め

独り占め

僕には恋人が居ます。
彼女の名前は「リリー」100円均一ショップで出会いました。
彼女はお人形さんのように可愛い風貌をしています(まぁ実際にお人形さんなのですが)。僕はそんな彼女に一目惚れし、気付くと110円を握りしめレジに向かっていました。
彼女との生活はすごくすごくすごく楽しい物でした。
彼女は僕の言葉に一切返事をしないけれど、ずっと耳を傾けてくれている気がしました。だから僕はずっとずっと彼女に向かって話しました。美味しいパンケーキの話しや好きな本の話し、死とは何かについて自分の考えを話した事もあります。それから悩みも沢山打ち明けました。そうやって色々な話を長い間リリーとしている内に、僕はもっとリリーの事が大大大好きになってゆきました。
ある日僕は、リリーを学校を連れて行きました。
クラスメイト達はリリーを見るなり「え、それ何?」と聞いて来ました。
「僕の彼女だよ、リリーって言うんだ」僕は胸を張って答えました。
「へ、へぇ。か、か、かわいいね」
クラスメイトが言ったその科白を聞いた途端、僕は全身の血の気が引くのを感じました。
『リリーが誰かに奪われてしまう』そう感じたのです。クラスメイトは確かに、リリーを可愛いと言いました。可愛さを感じる事はつまり、興味を持つ事でもあります。仮にクラスメイトが僕のリリーへ興味を持ったのなら、僕と同じようにリリーへ話しかけるはずです。そして話している間にリリーの魅力に気付いてしまう、、僕と同じように。それは避けるべきなのです。絶対に避けるべきなのです。何故なら僕には魅力が無いから、きっとリリーはすぐ心移りしてしまう。誰にもリリーは渡したくありません。だってリリーは僕の物なのですから。
リリーを独り占めする方法について、長い時間考えました。そこで思い付いた方法が、リリーを改造する事です。
僕はリリーの腕をもぎ取り、それを彼女の腹へ突き刺しました。足も同様に、もぎ取った後に横腹へ貫通させました。僕は花が好きなので、リリーの身体中に花を植えました。これで改造は終わりです。
このエッセイの表紙にリリーの画像を使います。周りから見た彼女の姿は、決して可愛いとは思えないでしょう。しかし、それでも僕は僕だけは彼女を可愛いと思っています。心から可愛いと思っています。
思惑通り、クラスメイトは誰一人としてリリーについて触れなくなりました。皆、怪訝な目でリリーを見つめるだけです。
リリーはただ僕にだけ愛される存在になったんです。
そしてそれはリリーも同様。リリーは僕だけを愛しているんです。愛しているはずなんです。
リリー、みんなはリリーを変な目で見るかもしれない。だけど僕は君の事をすっごく可愛いと思っているよ。山が崩れて海が干上がるぐらいに可愛いよ。それに、僕はリリーの事が大好きだよ。世界中の虎がみんな溶けてバターになっちゃうくらい好きだ。
愛は支配だと思っています。『与えること、これが愛の法則である。』これはエドガーケイシーという方が残した言葉です。与える事とは、相手を支配する事では無いと思います。与える事は相手に支配される事なんです。
だから僕は、リリーがただ僕だけを愛するようにしたのです。全てはリリーを独り占めする為に。

独り占め

独り占め

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-21

Copyrighted
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