視凝め合わずに愛し合う
ぼくはきみを
穴の開くほど視凝める
視凝める
きみは眼差されることで
一層曖昧になる
それは
ぼくも同じか
捉えどころがないという所見が
ぼくを一層単純にする
きみを好きなのか
きみという観念を好きなのか
ぼくにはもう判らない
判らない
忘れてくれ
穴の開くほど視凝めながら
基礎を粉砕して
根なし草にしてくれ
ぼくを生かしたい
というきみの願いはぼくを生かすのに
きみを生かしたい
というぼくの願いはきみを殺してしまう
そんな夢を見たと、きみには言わなかった
きみも同じ夢を見たのだと思って
根なし草が絡み合う確率を思う
愛は証明を乞われた瞬間に死ぬ
似た者同士か
これからは視凝め合わずに愛し合おう
ぼくらはもう、穴そのものなんだから
視凝め合わずに愛し合う