視凝め合わずに愛し合う

ぼくはきみを
穴の()くほど視凝(みつ)める
視凝める

きみは眼差(まなざ)されることで
一層曖昧になる
それは
ぼくも同じか

捉えどころがないという所見が
ぼくを一層単純にする

きみを好きなのか
きみという観念を好きなのか
ぼくにはもう(わか)らない
判らない

忘れてくれ
穴の開くほど視凝めながら
基礎を粉砕して
根なし草にしてくれ

ぼくを生かしたい
というきみの願いはぼくを生かすのに
きみを生かしたい
というぼくの願いはきみを殺してしまう
そんな夢を見たと、きみには言わなかった
きみも同じ夢を見たのだと思って

根なし草が絡み合う確率を思う
愛は証明を()われた瞬間に死ぬ

似た者同士か

これからは視凝め合わずに愛し合おう
ぼくらはもう、穴そのものなんだから

視凝め合わずに愛し合う

視凝め合わずに愛し合う

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-18

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