「博愛」

 雨あがりの秋は
 空がきれいで
 哀しいくらい澄みきっている
 ものたりないくらい澄みきっている
 つい数時間前までの苛烈な冷たさが
 猛る嘆きが
 すっかり高い空に昇って
 天の水面
 うつくしい眺めになっていた
 秋晴れの空がこんなに哀しいのは
 こんなにうつくしいのは
 我子を殺されても誰一人憎まず殺せなかった
 気高き聖母の微笑まれるのとおんなじだからであろうか
 博愛のうつくしき光よ
 哀しき青の空よ

「博愛」

「博愛」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-15

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