「むすめ」
むすめは今日も眠っている
広い籐椅子に
腰を沈めて
うしろを凭せているように
この水槽の中で眠っているのです
青藍の薄絹 着物は水と同化して
はだけた白 露わな鎖骨に重なる緋の痕
蛇が締めた傷痕のような鱗のかた
よく見れば椿の欠片である
ほどけた紅椿の花なる鎖骨に付き従う雪の心臓 白い花
花糸は触手のようにうようよ伸びて彷徨えり
葯の涙花粉となって
むすめの足首まで積もりて
さみしい両足をぬくめけり
むすめは今日も眠っている
むすめはずっと
眠ったままで
「むすめ」