「燈火」

 燈火(ランプ)を片隅に置きて
 我頬づえして無音に沈むる…
 燈火のともし やわらかく
 我が眼を射抜く弓ならず
 我が眼を染める蜜柑色よ
 瞳を閉ざせ ぱすてるからあの泡景色
 もっと睫毛が長ければ
 上下を糸で縫い留めるものの
 我が睫毛の憎きほどに短なるぞ
 与えられしは燈火の揺らめき
 夕暮の空たちのぼる陽炎
 かなわぬ心いたづらに歪み
 燈火の硝子は鏡となれず
 あらぬ景色を抱えるのみ
 まだ蜜柑はモノクロにならないでいる
 蜜柑は耿耿と揺らいでいる
 酸素を吸うか
 吹く息を待つか
 ゆがんだ硝子の燈火の夜よ

「燈火」

「燈火」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-15

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