「銀のナイフ」

 鋭さを失った銀のナイフの夜露に冷えることよ
 熱を失ひし切っ先
 白霜に沈みつ

 ナイフは鏡より数多のものを刀身に映せり
 あまりに磨き済んだ神経を酷使しすぎて
 映るものはみな歪みき

 ナイフは挑みき
 挑んだものすべて吾が身より遥かに硬きものなり
 擦り傷を負わせしも
 みづからが怪我おびただしく
 幻聴の 風鈴の響き沁みて
 しめやかな響き沁みて
 ナイフは空を仰ぎつ
 白き土肌に背中捧げて
 痛みに火照る身体に雪を受く
 空から降る瀧の雫よ
 気まぐれな飛沫の心地いいこと

「銀のナイフ」

「銀のナイフ」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-15

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