気付いた時には日陰者になっていました。

父の肩に乗せられ、夕日の沈む水平線を見せてもらった記憶があります。その時の光景は脳裏に焼き付いており、今でも目を閉じれば思い浮かべる事が可能です。

思えば小学生時代が華でした。
小学生の時、僕は活発に遊び回る子供でした。
休み時間の開始を知らせるチャイムが鳴ると同時に、級友達とグラウンドへ飛び出し鬼ごっこをしました。
給食を食べる時間がもどかしい程、体を動かしたくて堪らなかったのです。
休みの日は友人と協力し、河原へ秘密基地を作りました。ブルーシートの屋根が作る青色の影の下でパイの実を食べました。

しかし成長するにつれ、人間関係がどんどんと難解な物へとなっていきました。
クラスでは一軍やら二軍やらが暗黙のうちに決められ、誰と誰が付き合っているだとかの噂話が蔓延し始めます。僕は産まれ付き下半身にゾウさんを飼っているので多くは理解してませんが、女子の中では容姿や服装により優劣が付けられているようです。
中学生になる頃には、そういったものが僕の想像も及ばない程に複雑で難解に絡み合っているようでした。
僕にはそれら全ての根本に性欲がある気がしてならないのです。どんな男子がどんな感じでカッコイイとか、どんな性格の女子がモテるとか、どんなタイプの人が好きとか。全部、他人を使ってマスターベーションをする口実にしか思えないんです。
僕はそういった面倒な段階を踏んでまで欲求を満たす性癖を持ち合わせていません。現に、手淫に耽ける事で満たされる欲求である事も重々理解しております。だからこそ、他人と関わる事がどんどん億劫になっているのです。
僕は自分でも分かるぐらいに孤立しています。
日陰者に話しかければ「アイツはアニメキャラでオナニーばかりしているような奴だ」と格付けされ
反対に陽キャラ達や女子へ話しかければ「アイツは身の程知らずだ」と煙たがられます。
とどのつまり僕には居場所がありません。かと言って誰かを見下す事ができる程に突飛した何かを持ち合わせている訳でもありません。
要するに、僕は上手く人付き合いのできない卑小で卑屈な人間なのです。

時々、すごく寂しくなる事があります。
小学生の時のように、友達と一緒に鬼ごっこをしたり、秘密基地でパイの実を食べたくなるんです。
でも、みんな変わってしまいました。
ただ、あの日父に見せてもらった水平線だけが、今も変わらず地球の輪郭をなぞっているのです。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-05-09

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