ルック・フォー・ハッピー

ルック・フォー・ハッピー

「自分なんて大嫌い」は「愛して欲しい」の裏返し。

彼、悠一とはあまり話したことは無い。
ただ、たまに授業中で目が合うだけ。
かわいこぶって首傾げてみようとか、笑ってみようとか、そんな恥ずかしい計画はいつも未遂に終わる。
だから自分の気持ちがイマイチよく分からない。

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「ねぇ、紫乃ー。悠一って麻莉奈ちゃんと付き合ってんやて」
昼放課、屋上で親友のひなから突然のスクープ告白。
「は!?」
思わず声が上ずってしまった。
麻莉奈ちゃんと言えばスタイルも良くて顔も可愛い、でも結構ワガママ、って子だった気がする。
ひなは固まる私の顔の前で、おーい、と言いながら手を振っている。
「いつからなの?」
「・・・え?」
「いつから二人は付き合ってんの?!」
ひなはポテトチップスを頬張りながら声を荒げる私を見て目をパチクリさせた。
「や、詳しくは知らん!でも、最近噂になり始めたから・・・んー、結構前やない?」
「うっ、噂なら嘘かもじゃん!」
「まぁ・・・それもあり得るけどさ、火の無い所に煙は立たぬとかいうやん。ていうか紫乃どうしたん?」

火の無い所に煙は立たぬ?
・・・・確かに。

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悶々と考えながら受ける授業は全く耳に入ってこない。
「よし、この問題をー、紫乃!」
「分かりません(即答)」
何ということだ。
先を越されていた。しかもかなりショック。
ふと斜め前の席にいる悠一を見てみる。
でも次の瞬間、悠一は遠くの席にいる麻莉奈ちゃんと口パクで話し出した。
こちらからは悠一の表情はよく見えないけど、麻莉奈ちゃんは嬉しそうな顔をしている。
(あぁ、やっぱ付き合ってるんだ)
こんな事で決めつけるのも良くないが、いつになく、閑散とした気持ちになってしまい、終いには腹痛まで起こるしまつだ。
そして私は見ていられなくなり、2人を視界に入れないよう静かに顔を伏せた。
麻莉奈ちゃんはなにも悪く無いのに、今目を合わせたら思いきり睨んでしまいそうだったから。
嫌な奴には、なりたくない。

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「紫乃、何か老けた?」
あれから一層悠一と麻莉奈ちゃんが付き合ってるという噂が広まった。
「寝てないんだよねー」
私とひなは廊下を歩きながら話していると、前から悠一が歩いてきた。
胸が高鳴るのを抑えながら、歩いていると一瞬目が合った。
その瞬間眩暈が押し寄せて悠一の顔がぼやける。
「でさぁ・・・あ、ちょ、紫乃?!どうしたんや!」
ー・・・ドサッ!!

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話もあまりしたことないのに、こんな急激な感情変化に自分でもおかしいと思う。
でも、悠一と麻莉奈ちゃんが付き合ってるという事を知って、悔しくて、何もできない自分が情けなくなった。
まれに話している時、一度目が合うと離せなくなってしまう。
うざいって思われたくないし、可愛くないって思われたくない。
でも1番は嫌われたくないって思いが強すぎて、上手く話せなくて、素直になれない。
だけど、会いたい。声が聞きたい。
私の事考えて欲しい。私の気持ち分かろうと努力して欲しい。
言いたい事は山ほどある。おこがましくてごめんなさい。
でも愛されてるって自信が欲しいんだ。
こんなことなら、好きにならなければ良かった。
なんて、ちょっと後悔しつつ、まだ好きって気持ちに嘘がつけない私が、すっごく・・・

ー・・・イラつくの。
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「ん・・・」
なんだろう、隣に・・・誰かいる?
「大丈夫?」
悠一?
声低いし、ひなじゃないよね。
ゆっくり目を開けると、そこには心配そうな顔をした悠一がいた。
「あ、れ?ここどこ?」
天国だったりして。
「保健室。紫乃、いきなり倒れっから。あ、ひなはさっきまでいたけど授業始まったから帰らせた」
そう言われると薬品の匂いが鼻につくし、少し動くとベットがきしむ音がする。
「そっか」
「それから先生出張で保健室まかされた」
悠一は保健室の鍵を顔の横で振りながら無邪気に笑った。
心地いい風が窓から入ってきて、グラウンドからは笛のなる音や生徒と先生の声が小さく聞こえる。
「あのね」
「ん?」
きっと、私が願っていた事は、夢のまた夢。
「私悠一のこと好きだった」
だから今言った言葉は過去形。
「うん。知ってた。俺も好きだった。何回も目ぇ会うし、何となく気になってた」
驚いたけど、悠一もまた過去形だ。
「でも今は、麻莉奈だけなんだ」
悠一は苦しそうに顔を歪めた。
今告白しなかったら、もしかしたらお互い同じ気持ちで、まだ目を合わせてくれてたのかな?
「うん。だから友達でいよう!もう恥ずかしがらずに話せそうだから!」
でもなんか、スッキリした。
「おう!」
私達はお互い謝らなかった。
謝ったらきっと余計悲しくなる。
でも心のどこかで言おうとしてた、貴方が私を好きじゃない理由1つでもあるなら、私は貴方が好きな理由100いってあげる、って。
でも片思いだけで100も言えない。


心臓が爆発しそうになって、頬が熱くなって、相手の彼女を恨んで自分が情けなくなって、崩れそうな夜は貴方を思って・・・・・
そんな毎日を送れたなら、最高の片思いだったと思う。


ルック・フォー・ハッピー


私が幸せを探す中、貴方を好きになれた。辛かったけど、


幸せでした。


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ルック・フォー・ハッピー

ルック・フォー・ハッピー

聞こえないよ。 だから皆と違う言葉を言って。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-01

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