「過去を喰らう」 第1話
プロローグ
血を流せ。
涙を流せ。
汗を流せ。
鼻水を流せ。
涎を流せ。
それが、心が生きている証だ。
卒業証書を破り捨てて。
ラプラスの封印を解いた僕は。
“魔女”になった。
弱音を吐け。
血反吐を吐け。
ゲロを吐け。
身体中全て空にして。
過去を喰らいつくせ。
卒業式
けったるい。
ここにいる皆全員死ねばいいのに。
殺してやる。
僕の名前は鶯夜雨(うぐいすよさめ)。
僕の手には賞状筒が2つある。
死んだ彼女の分だ。
優しかった彼女、月夜雨子(つきよあめこ)が殺された日は忘れない。
プールの水に雨子の血が混ざって、膨れ上がった死体が沈んでいた。
それを僕が見つけてしまったんだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
あの日は夕暮れの16時。
春なのに暑い時期だった。
上着を脱いで、雨子を校門前で待っていた。
夜雨「うわ!」
急な突風に襲われた。
上着が吹っ飛ばされ、かなり遠いプールまで飛んでいってしまった。
ハッキリ言って異常現象だった。
しかし他生徒は何事もなく下校している。
おかしい。
僕は誰もいないプールまで行くと、
夜雨「…ん?なんだ?浮き輪?なんか赤…」
僕はそこで腰が抜けた。
夜雨「あ…あ…」
浮き輪なんかじゃない。
夜雨「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
死体だ。
僕の叫び声で先生や生徒が集まってくる。
先生「どうした!うっ…皆!来るな!警察呼んで!救急車も!夜雨!大丈夫か!?」
夜雨「え…」
僕の口から鉛の味がする。
どうやら叫びすぎて血を吐いてしまったようだ。
鼻血も出ている。
ズキンッという喉痛みと共に、僕は意識を失った。
…!?
気付くと僕は病院にいた。
母がずっと手を握ってくれていた。
夜雨「か…」
母「夜雨っ!ダメ!喋っちゃ!」
ナースコールを押す母。
母「喉にダメージがあってね。安静にしてなさいって。」
そこまで危険な状態だったのか。
その後医師から2週間は安静にと告げられ、母がホッとした表情で僕の頭を優しく撫でた。
医師が出ていこうとした時、ドアが空いた。
刑事だ。
医師としばらく話して僕に近寄ってくる。
刑事「鶯夜雨君だね?」
母「あ、あの」
刑事「お母さん。ごめんなさい。事件解決とかそういう話は後でいいと思ったんだ。でも夜雨君に言わないといけない事がある。」
何だろうか?
刑事「夜雨君。深呼吸をしよっか。今から僕が言うことはきっと君を傷つける。覚悟をして聞いてほしい。」
は?何言ってるんだ?
僕は言われたように深呼吸をした。
刑事「君が見つけた死体は月夜雨子さんだ。」
…。
は?
…?
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僕は口を大きく開け、舌を出して。
夜雨「ごふぇ。」
舌を噛みちぎった。
そして僕は泣き叫んだ。
僕の声帯はぐちゃぐちゃに潰れ。
二度と喋れなくなった。
卒業式その2
あれ以来僕は誰とも喋らなくなった。
病院を抜け出して、3日山ごもりをして見つかって。
刑事から、一日もたってないのに膨れ上がった水死体なんてありえないと言われ。
怪奇事件として世間で有名になった。
犯人は不明。
何だか僕の周り全員が犯人に見えてしまう…。
夜雨「…」
涙が抑えられない。
「おい。」
夜雨「…?」
クラスメイトが肩を叩いてくれる。
「大丈夫…なわけないよな…」
僕はコクリと頷く。
「お前大学には行かずに雨子の事件追うんだってな。金とかはどうすんだ?」
夜雨「…」
そこまで考えてなかった。
「その…良かったらさ、俺達全員で、お前に仕送りしようと思ってて。兎に角、一人で背負うな。とりあえずだ。夜の同窓会来い。高校でやるからさ。」
あんだけ敵だと思っているクラスメイトはいつも、ずっと、こんな感じだ。
そうだ。
皆がそんな事するわけないじゃないか…あんだけ仲が良かったのにさ…。
雨子に出会った時のことを思い出した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
雨子「鶯夜雨って言うんだ!私は月夜雨子!凄い!名前似てるね!」
夜雨「あ、ああ…」
雨子はクラスで人気者だった。
クラスメイトの喧嘩の間に入って解決したり。
頭が良いのに、順位つけされるのを嫌がっていたり。
それなのにスポーツ万能で、体育祭で一位取った日には大暴れして先生に怒られたり。
遅刻しかけたときは忍者のように壁をよじ登り、窓から入ってきたり。
保険委員で雨子が治療すると、めちゃくちゃ傷の治りが早くなるって噂がたったり。
面白く、優しく、賢く、強い人だった。
僕は歌が下手くそで合唱コンクールがニガテだったのに、彼女がレッスンしてくれたおかげで、クラスで一番歌が上手くなった。
雨子「貴方の歌声に惚れました。夜雨君!好きです!付き合ってください…!」
合唱コンクールで一位を取り、代表で喋った一言がラブコールだった。
夜雨「あああああ!!!先手を越された!!!」
とうなだれた覚えがある。
皆も祝福くれて、本当に最高な人生だったのに。
今はもう…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ああ、いけないいけない。
僕は頬を叩いて周りを見る。
僕にはまだ仲間がいる。
夜雨「…!」
僕は立ち上がり満面の笑みで。
グッと親指を立てた。
同窓会
雨子「忘れてないよね?」
夜雨「何を?」
雨子「ほら〜!」
雨子に鼻を摘まれる。
夜雨「あいでぇ!やめでぇ!」
雨子「卒業証書。皆で屋上で破るんだよ!忘れたとは言わせないよ〜」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
夜雨「…」
そろそろ同窓会の時間だ。
また…懐かしい思い出に耽っていた。
そうだ、一応ラインしておくか。
夜雨「(皆、卒業証書破る?)」
「(草)」
「(マジでやんのかw)」
雨子は死んだ後も僕達に伝説を残してくれたようだ。
「(雨子のは破る?)」
…。
夜雨「(当たり前だろw勿体ぶる気はないよ!雨子が言い出したことだもんw僕が責任持って破る!)」
「(おけ!任せた!)」
夜雨「(任せろ!w)」
ラインを閉じる。
本当は破りたくなんかない。
でも雨子は言ってた。
雨子「思い出は勝手に残るもの、作るものじゃないんだよ?だから――」
絆もずっと残る。
そうだったよね?雨子。
同窓会その2
同窓会は屋上でやるらしい。
屋上の扉を開けると…。
雨夜「♪」
一番乗りだ…!
そうだ、LINEしよう。
雨夜「(さきついたー)」
「(マジ!?)」
「(早くて草)」
「(俺らも後から行くからさ。ジュースとか色々届いてると思うんだよ。持ってって貰っていいか?)」
雨夜「(おけ)」
「(悪い!俺たちもすぐ行くわ!無理すんなよ!)」
なんてな。
皆が来ている頃にはジュースどころか、テーブルも椅子も全部用意してやるぜ。
一階の玄関にはジュースの箱とか、お菓子とか、色々な物が届いていた。
雨夜「!?」
おお!花火もある!
雨子が見たら喜ぶだろうな…。
さて、大変だが運ぼう。
最後ぐらいはカッコつけたい。
〜♪
♪
…♪
…。
。
遅い。
いくらなんでも遅すぎる。
おかしすぎる。
LINEを見てみ…。
…。
僕はスマホを落とした。
拾い直そうとした手が震える。
一分前のLINEメッセージだ。
「(よるあめに)」
「(けろぷーるくる)」
僕の夜雨という名前は普通の検索じゃ出てこない。
だからよるあめなのだ。
つまりだ。
《夜雨、逃げろ。プール来るな。》
僕は屋上からプールを見下ろすが、時刻は19時半。
暗くて見えるわけがない。
僕は階段を飛び降りる。
噓だ。
そんなの。
悲鳴も、声も。
何も聴こえなかったじゃないか!
ド、ドッキリだよな!?
いや、そんな事アイツらがするわけがない!
一階の昇降口の扉から、出る時間なんて勿体ない!
できるだけ!
プールに近い窓から…。
夜雨「…」
嘘だろ?
生徒が倒れている。
僕の仲間が。
雨子の宝物が。
いや、一人だけ立ってる。
あいつが。
あいつが犯人か。
殺してやる…。
僕は窓を強引に開け、プールへと一直線に走る。
段々と犯人の顔が見えてくる。
白い服に青い帽子、そして赤く長い髪。
同じ歳か?
女だ。
それが識別できるぐらいまで僕は接近していた。
拳が女の頬にめり込む。
殴ったのは。
僕だ。
「ぶっ!?」
プールのフェンスをブチ破りぶっ飛んでいく女。
人間とは思えない力だったと、当時は思わなかった。
友達を守るのに必死だったから。
恐る恐る、振り返ると。
夜雨「〜…」
僕は項垂れた。
血まみれの皆が、倒れていたのだ。
しかし、プールには一人も入っていなかった。
「これからさ、水責めするところだったんだよね。」
後ろから声がする。
「お前の名前なんかどうでもいい。ラプラスを渡せ。殺す。」
何だこの女…。
ラプラスって何だ…?
「ば…かやろ…う。夜雨…何で来た…」
夜雨「…!」
クラスメイトの弱々しい声が聞こえた。
ああっ…!
くそっ…!
声が出せないっ…!
「早く言えよ。お前が持ってんだろ?ラプラス。」
女がお構いなしに質問してくる。
僕は横に首を振る。
「は?まあいいや。ちょうどお前で百人目だし。」
女は手を伸ばすと、そこから真っ黒い槍が現れた。
召喚したと言えばいいのか…?
「お前を殺して、ラプラスを私のものにして殺す。それで解決する!」
槍をぶん投げる女。
夜雨「!?」
避けるわけにはいかない。
みんなに当たる!
でも死ぬわけにはいかない!
だから槍を受ける!
グサッ!
僕の腹に槍が刺さった音だ。
あまりにもの威力で運動場までぶっ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
身体中走る激痛。
意識が朦朧とする。
そうだ。
このままみんなで死んで、雨子に会うのも良いかもしれない。
女はふわふわと浮きながら近づいてくる。
「ん?お前の持ってるそれはなんだ?」
夜雨「…?」
あ。
僕、雨子の卒業証書の入った筒ずっと持ってたんだ。
せめて雨子の為に破らないと。
鳴いてる暇なんてない。
僕は震える手で蓋を開け、卒業証書を手に持つ。
「ハッ。ただの賞状か?」
僕は女を睨みながら破った。
手の力が抜けて、卒業証書が吹き飛んだ。
ハハ、これじゃポイ捨てだ。
最悪なタイミングで風が吹いた。
死ぬ前に悪い事しちゃったな。
破り捨てた卒業証書が、夜空になって舞ってった。
深化
(オイラを呼んだかい?)
何…だ?
目を開くと、夜空に大きな魚が泳いでいる。
(力が必要かい?)
僕はもう手を上げる力もない。
でも、コイツだけは。
この女だけは許せない!
ニヤニヤと女は近づいてくる。
僕にとどめを刺すつもりだ。
まだ、死ねない!
負けてたまるか!
(そうかい)
魚がこちらに向かってくる。
そして僕を丸呑みにした。
夜雨「…!?」
魚の口の中は青く光っており、まるで宝石のような…。
…。
夜雨「…え?」
気付くと、僕の目の前に女が立っていた。
「ラプラス!」
そう叫ぶと僕の心臓目掛けて槍を突き立てきた!
夜雨「ぐぬううううう!!!!」
僕は精一杯の力を振り絞って槍を手で弾いた!
槍が天高く空を飛ぶ。
火事場の馬鹿力で反射的に足が動く!
女との距離を寝そべりながら取り、跳ね起きる!
「クッソ!」
女はとんでもない脚力で空へと飛ぶ。
槍を取りに行ったのか?
夜雨「あ、声が?え?」
自分の身体を目や手で確認する。
夜雨「…女の子?」
「そうだよ?だって君は魔女になったんだから。」
僕の隣には青い魚が空中を泳いでいた。
ラプラス「オイラの名前はラプラス。」
夜雨「僕の名前わっ…」
急に身体ふらつく。
!?腹の傷が治ってない!
魔女の衣装だろうか?
血で真っ赤だ…!
ラプラス「このままだと死ぬね。」
「なにぐちゃぐちゃ喋ってんのっ!」
夜雨「なっ!?」
あの女!?
もう戻ってきたのか!?
ラプラス「殺しに来ている。君の心臓を一突きさ。彼女は魔女を殺すプロだからね。オイラの能力は至ってシンプル。とりあえず…彼女から槍を奪って、腹に刺し返してみて?」
夜雨「無茶苦茶いうな!」
クソ!この状況どう打破する!?
…?
…ん?
…待てよ?
僕が意識を保っていなかった間、あの女は何をしていた…?
とっくに殺せただろ?僕なんか…。
いや、違う。
夜雨「ラプラス。ごめん。僕。嘘を。ついた。すごい。簡単な。事。だった。とりあえず。やって。みるね。」
ラプラス「なーんだ。嘘か。」
「舐めやがって!死ね!」
女は叫んで槍を投げた。
あーあ。
やっぱり。
投げたか。
夜雨「よっわ。」
僕は飛んできた槍をキャッチして、投げ返した。
「なっ!?」
夜雨「BINGO♪♫♬」
見事に僕の投げた槍は女の腹を突き破った。
僕が卒業証書を破る時、この女も投げた槍を拾いに行ってたんだ。
夜雨「ん!?」
シュ〜と僕の腹から煙が立ち込めて、傷が治っていく。
ラプラス「オイラの能力はダメージ上書き、ダメージオーバーライトさ、あ!オーバーロードでもオーバーライドでもないからね!オーバーライト!トだから!」
夜雨「何で“ド“じゃなくて“ト“なの?」
ラプラス「えへへ。オイラが食べちゃった。」
夜雨「…は?」
くだらないことを話している間、僕の腹の傷は完全にふさがった。
さて。
「ぐっ…ぐっ!?」
女は必死に槍を取りに行っているようだ。
身体を引きずっている。
夜雨「お前の名前は?」
僕は石ころを手に持ってぶん投げる。
項を狙ったが、女は手で石を防いだ。
さすが魔女を殺すプロだ。
ラプラス「どうせ話す気はないだろうから。オイラが教えるね。彼女の名前はゆあ。優しいに愛と書く。苗字は知らない。」
夜雨「ありがと。ラプラス。おい、優愛。雨子を殺したのはお前か?」
優愛「ククク…クカカカカカ…」
優愛は邪悪な笑い方をする。
夜雨「コイツ!!!何がおかし――」
優愛「早くしねぇとお前のお仲間も雨子みてぇになんぞぉ!」
!?皆!?
僕は振り返ってしまった。
ラプラス「あ!逃げる!」
しまった!隙を突かれた!
優愛に視線を戻すと、目が真っ赤に燃えた大きな白蛇が優愛を包んでいた。
夜雨「なんだアイツ!」
ラプラス「ブラッドスネイク。優愛の相棒さ。ひっっっと言も喋ったことがない。無口な奴さ。」
優愛「じゃあなぁ!ヨサメ!次あった時はぶっ殺してやるからな!!!“魔女会”で会おう!」
地面が揺れるほどの衝撃が起こり、土埃の中、優愛は空へと飛んでいった。
優愛に構っている暇なんてない。
夜雨「…皆!」
僕は一蹴りしてプールへと戻る。
フェンスに皆がもたれかかってるのが見えた。
夜雨「皆ァ!」
「生きてる…まだ…みん…な」
喋ったのはクラス委員長だった。
「おま…え…よ、さめか?」
夜雨「そうだ…そうだよ!」
「お…れたちを…“喰え”」
な、何言ってるんだ?
夜雨「おい!なんの話だよ!」
ラプラス「願いに関わった人間を喰らうことによって、願いが叶うんだよ。100人喰らわないといけないんだけどね。」
夜雨「どういうことだよ!意味分かんないよ!」
「あ…めこ…をいき…かえ…らせろ…ふ…たりで…しあわ…せに…」
夜雨「待ってろ!お前らの傷!全部直してやる!オーバーライトで傷をうつ…」
ラプラス「ダメッ!」
ラプラスが僕の脇の下に頭を突っ込んでぐりぐりする。
夜雨「なにすんだよ!邪魔するな!」
ラプラス「ブラッドスネイクの能力は毒性を持つ腐食化だ!君は槍で優愛にオーバーライト出来たけど!今いる全員の腐食化を受けるなんて!君の命が持たない!優愛を探す前に!君が死んじまう!」
「よさ…め…おま…だけ…なん…だ…あめ…こが…まじ…じょだっ…てし…らない…こ…と」
はぁ!?もうちんぷんかんぷんだ!
夜雨「おい…なんだよそれ…!」
「よさめ…!」
最後の力を振り絞って委員長は声を出す。
「あと…は!ラプ…ラスが!話してくれる!もう…時間が…ない!はや…く!俺達を!楽に…してくれ…よ…!」
夜雨「で、でも…」
僕が戸惑っていると…。
皆がゆっくりと手を上げる。
夜雨「あ…!あああ!!!」
皆はニヤリと笑いながら僕に親指を立てたのだ。
夜雨「クソッ!クソがぁ!」
ラプラス「夜雨、覚悟を決めるんだ。唱えて。イット・ザ・ペストだ。」
「あと…は頼んだ…!」
夜雨「分かった…分かったよ…絶対に…絶対に復讐するから!僕は!負けないから!」
僕は大きく息を吸って唱える。
夜雨「イットザ…ペストッ…!」
ラプラス「過去を…喰らう!」
再びラプラスが大きくなり、皆を丸呑みにする。
スゥーっと撫でるかのようにすり抜けるラプラス。
血まみれの亡骸だけがそこに残った。
夜雨「喰らうって…皆の何を喰らったの?」
ラプラス「冠動脈。生命力が高い状態じゃないと喰えない。夜雨、君も優愛にあと一歩で喰われる所だったんだよ?」
夜雨「…」
ラプラス「君は生き残った。それでいいじゃないか。」
ポツポツと雨が降り始め、途端に激しくなる。
夜雨「…は…?」
天気予報は一日中晴れると言っていたのに。
夜雨「良い訳ないだろ…」
皆と雨の中走り回った日を思い出した。
夜雨「ああ…」
あの雨が好きだったのに。
夜雨「嫌だ…」
大切な仲間を失った僕は。
夜雨「あああ!!!嫌だぁぁぁ!!!!皆ぁぁぁ!!!!」
僕はその日、雨が好きだった理由を忘れた。
エピローグ
ラプラス「大丈夫かい?」
夜雨「少し…落ち着いたよ。」
僕達は雨風を凌ぐために公園のトンネルに移動した。
大切な仲間を置いて。
僕はLINEを見直す。
夜雨「クッソ…」
僕が屋上に物を運ぶ間、
(スマホ壊れちゃったから、雨子のLINE使ってます!屋上禁止になっちゃったのでプールに再集合してください!)
雨子のアカウントで何者かが喋っていた。
夜雨「こんな…僕が雨子のスマホ持ってるわけないじゃないか…!こんな見え見えの罠…」
ラプラス「違うよ夜雨。皆は優愛を知っていた可能性が高い。君が何も知らないだけでね。」
それじゃあ優愛が雨子のスマホを持っていたことを皆知っていて、LINEの相手が優愛だってことも知っていた。
僕がただ作業に夢中でLINEに気付かなかったってことになる。
クソ!全然分かんねぇ!
夜雨「そもそも、なんで皆雨子が魔女だって知ってたんだ?」
ラプラス「そりゃ保険委員で、皆の怪我を魔法で治してたからね。その時に僕が見えるようになったのさ。君は怪我したことないだろ?雨子は反射神経が凄いって、いつも君の話をしていたよ。」
何だよ。
それじゃあ僕だけ何も知らないって事か?
夜雨「じゃあ優愛はなんでラプラスを狙ってるんいるんだ?」
ラプラス「それが分からないのさ。ま、優愛に聞けば全て分かることさ。君の命もオイラの命も、彼女は必ずまた狙ってくる。」
夜雨「雨子は…どうだったんだ?」
ラプラス「雨子は一人も喰わなかった。人の傷を癒やすために自らを犠牲にするタイプだったのさ。優しいと有名だった。優愛は逆に魔女を喰ってきた。世界一強い魔女になるために、魔女だけ100人喰って最強の魔女になる願いを叶えた。でも失敗した。」
失敗した?
ラプラス「どんなに強くても、雨子の回復能力に勝てることはなかったんだ。君の反射神経の能力が強化されたのと同じ、雨子は治癒能力に恵まれたんだよ。人を大切に思う気持ちが魔女の中で誰よりも強かったのさ。だから世界一の魔女は雨子を殺した。何故か狙われているオイラを守る為に。雨子は優愛に会う前にそつぎょーしょーしょ?にオイラを封印した。一対一じゃ叶わないと思ったんだろうね。解いたのは君だ。」
夜雨「そうか…凄いや…雨子…は…」
少し疲れた。
ラプラス「眠たいみたいだね?寒いだろ?今日は寝よう。暖を取ってあげる。」
ラプラスは少し大きくなり僕に包まる。
温かい。
ラプラス「まだ、沢山聞きたい事あると思う。それは明日にしよう。」
まぶたが重くなる。
ラプラス「君はよく頑張ったよ。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
RESULT
喰らった数。
30人。
雨子を生き返らせる為喰らう数。
残り70人。
【優愛の二度目の願いは何なのだろうか?100人目を僕で飾ろうとしている理由は?ラプラスを消そうとしている理由は?何故僕は魔女について何も知らない?ラプラスと会話が全く噛み合わない。ってことは誰かが嘘をついてるはずだ…。兎に角、彼女が言ってた“魔女会”で会い、理由を聞きださねば…何かがわかるかも…】
「過去を喰らう」 第1話
音書のあとがき。←(大寒波氷河期親父ダジャレギャグ)
改めまして音書命です。
いつもは一話でスッキリ解決する小説を書いて、ちょっとだけ付箋やフラグを匂わせるって言うのが僕の書き方なんですが、今回大好きなカンザキイオリさんと花譜ちゃんの曲を二次創作として小説を(クソ生意気に身勝手に)書くということで、かなり力を入れすぎて、一話だけじゃ謎だらけで分かんない!僕も書いてて訳が分かんなくくらいの謎を沢山盛り込んであります。勿論、過去を喰らう→海に化ける→人を気取ると、主人公、夜雨は辿っていくのですが・・・いや、これ以上はネタバレになるから言うのはやめておこう。
歌って、一人一人意味が違って聴こえると思うんです。僕にとっての過去を喰らうシリーズは魔女の暴走、そして後悔の歌だと思っています。自分なりの過去を喰らうシリーズを(クソ生意気に身勝手に)書いていきますのでよろしくお願いします。
最後に素敵な本家様のURL→https://www.youtube.com/watch?v=tMKrECxEpq8
そして人間六度さんの過去を喰らう(I am here) beyond you.のURL→https://www.youtube.com/watch?v=MyJSW_kpf6g
もう二作品とも大好きです!!!
本当はもっと愛を語りたいのですが、今回はここまで!
では皆さん2話で会いましょう!