ハイリ ハイリホ(15)(16)

一―八 パパ 二―八 僕

一―八 パパ

 竜介の声だ。今度は、俺のことを心配してくれる声だ。ちゃんとわかってくれている。学習効果は絶大だ。たとえ、過去が間違っていても、その過ちを正せば、未来は正しい行動ができるのだ。俺は、思いっきりやさしい声で竜介に声をかけた。太陽からもらったまぶしさを暖かさに変えて。
「パパは大丈夫だよ。庭に出てごらん、パパの顔が見えるから」
 ハイリ、ハイリホ、ハイリホ。

二―八 僕

 さあ、次はどんな言葉をかけたらいいのだろう。これまでの、数少ない会話やパパの寝相姿から想像しなくちゃいけない。とにかく、何かに行き詰まったときは動き出さなくちゃ。じっとしていても時間が過ぎるだけ。時間が過ぎるだけならいいけど、何かをしなくちゃいけないというプレッシャーだけが脳に重く圧し掛かり、心が萎縮し、よけいに動き出せなくなってしまう。パパと僕の束の間の触れ合いの時。パパ、動き出すよ。
「パパがおうちの服を着ている」

ハイリ ハイリホ(15)(16)

ハイリ ハイリホ(15)(16)

パパと僕の言葉を交わさない会話の物語。一―八 パパ 二―八 僕

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-01

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