「喪失」
甘ったるいケーキの塔のてっぺんから
仰向いて四肢を大きく広げて
埋もれながら落ちていた
高い 高い 雲を凌ぐ塔だった
やわらかくって
あまあいの
おなかは膨れて
頭は冴えた
塔が立つは腐葉土じゃなくて堅い鉄
自分の落下の痕跡は一直線でありました
スポンジをえぐり
ホイップをもぎとった黒い影 棒の影
わたくしは背中に反発するいやな冷たさの上に大の字で倒れて
絶滅した真っ赤な真っ赤な血を全身から流して居た
黒に 赤の映えることよ
わたくしは涙も無く眼を閉じた
「喪失」