murmur in the kitchen
深夜の冷蔵庫とおしゃべりをした次の日は、
フェルトみたく重たい雲が空を埃色にする。
耳鳴りが始まるのはいつも右側からなんだ。
ままならない声帯を抱えて自分の席につく。
良い夢は覚めなければ良い夢になるのにね。
ここは、デジタル時計の心臓が動く場所だ。
見送っていくものが増えて、
取り残される時間が増えた。
廃業したラブホテルも、
取り壊されたパチスロも。
新しいコインランドリーの店名を知らずに、
顔をしかめて明日着る服の悩みを口にする。
確証欲しさにスクロールを止めない中指は、
落っこちそうな北斗七星の端をはなせない。
面白くないことも笑えるようになったんだ。
悔しいと言ったら、それも笑いごとになる?
製氷機の相槌をお供に、
今日もまたおしゃべりをしよう。
LEDを手放して、
羽より軽い暗闇の中で。
murmur in the kitchen