murmur in the kitchen

深夜の冷蔵庫とおしゃべりをした次の日は、
フェルトみたく重たい雲が空を埃色にする。

耳鳴りが始まるのはいつも右側からなんだ。
ままならない声帯を抱えて自分の席につく。

良い夢は覚めなければ良い夢になるのにね。
ここは、デジタル時計の心臓が動く場所だ。

見送っていくものが増えて、
取り残される時間が増えた。
廃業したラブホテルも、
取り壊されたパチスロも。

新しいコインランドリーの店名を知らずに、
顔をしかめて明日着る服の悩みを口にする。

確証欲しさにスクロールを止めない中指は、
落っこちそうな北斗七星の端をはなせない。

面白くないことも笑えるようになったんだ。
悔しいと言ったら、それも笑いごとになる?

製氷機の相槌をお供に、
今日もまたおしゃべりをしよう。
LEDを手放して、
羽より軽い暗闇の中で。

murmur in the kitchen

murmur in the kitchen

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-04-19

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