森の魔法使い
絵に描いたような
静かな森の中で
箒に跨る君を見付けた
初めての事だらけ
伸ばした手の温度も
知らない事ばかり
たちまち笑い声に変わる
君の言う終わりがいつなのかなんて
僕はずっと知らなくていいんだ
ただこうやって 捲らなくていいページを
そよ風が進めてくれる
この時間だけでいいから
ちょっとだけ、悲しくなった時は
君の魔法が僕を包んでくれるだろう
じゃあ君が悲しくなった時は
何も使えない僕はどうすればいい?
ひとりきりで空を飛んでいた
夜に隠れて生きる君の名前は
繋がっていたくて
心臓の管を絡め合った
奪った時間は添えたもの
拾った命は巡るもの
果てる時は、世界がよく見える
君の目線の、あの悠然な空の中がいい
君が生まれた日のこと
何も覚えていないって
散って落ちる花を理解できないみたいで
「役目が終わったから」
散っていくのだとすれば
願いの届かなくなった
魔法にも意味はないのかと
嵐が続く季節は 鳴り止まない電光が
僕らの内緒話を邪魔してしまう
音が消える魔法のベールの中は
ふたりだけの秘密基地
この時間だけがいいから
知らない文字ももう無くなって
読めない本ももう無くて
「人間」を知った君は
酷く辛そうな目をするようになって
芽生えた感情が分からなくて
答えられない疑問の渦の名前は
繋がっていたのに
心臓の管は解けてしまった
奪った時間を返されても
拾った命は預けれないと
果て欠ける、空を駆ける
君の目線は今、どこにあるの
君の言う終わりが来た時
僕は何も出来ず
終わらない雨に 飲まれる日を待っている
君が飛んで行った
空の方角すらもう曖昧で
最後に君に読み聞かせた物語
君は嬉しそうに聞いていた
もう知らない言葉なんて、無いはずなのに。
僕の魔法は、この日を
超えるためにあるんだね
君にとっての明日が
僕にとっての未来になりますように。
芽生えた感情が分からなくて
ひとりと、ひとりに戻った僕たちは
お互いを知る事なんてもうなくて。
失くしてしまった時間に
奪われてしまった感情は
どこに行ってももう 見つからなくて
ちょっとだけ、悲しい時は
君の魔法が包んでくれるから
僕らの冒険が終わってしまう前に。
崩れかけの箒を握りしめて
君は立っていた
灰色になった背中は
声をかけただけで、壊れそうで
「
君のいる世界は
美しくも、醜くも
それでも僕が包んだよ。
色とりどりのベールで。
色とりどりの魔法で。
」
嵐の去った世界には
まだ残った命が増え始める
君があんなに連れ出してくれた
空がもう、窮屈で。
また新しい物語を詠もう
今度は笑っちゃうような物語を
君は空になったの?
まだそこにいるのかな
僕が出来るたったひとつの魔法は
君を忘れないことー。
僕の顔はもうしわくちゃで
君が今見てももう気付かないだろう
君にとっては僅か
僕にとっては果てしない時間が流れて
いいかい
100年も前の話だ
空を飛ぶ魔法使いがいた
ひとりぼっちでずっと泣いていた
星を包むほどの力を持って
嘘じゃないよ本当の話さ
多分今もどこかで
ほら、大きな空から
僕らを見て
見て
見ているかな。
Risking my life to protect the planet
where you live
森の魔法使い