「不快と鏡」
鏡のわたくしが泣いて居る
どおしたの
何があったの
尋ねるのは 誰?
鏡のわたくしは恐がって居る
何をおびえる
誰に…おびえる
過去の記憶が鏡に宿る
わたくしを傲慢な目で以て睨めつけた憤怒の顔面
憎し
許すまじ
わたくしはあの日から決別を常々胸に掻き込み
同類もどきを鼻で笑って睨み返した
炎の色は何色だらう
悔しい涙
苦しき詰り
誰とても水面の潜った場所で生きられないから
孤独をわし掴みにされずに済むものの
分った顔はその通り上ッ面で
その表情は何一つ分っちゃいなかった
奴が同類にはなれず終いで
決別を挑んだわたくしの心よ
二度と日の目を望んじゃいけないよ
奴が感じとられるものか?
わたくしの水面下の呼吸を奴に分るものか?
分るまい
分るまい
こればかりは分るまい!
辛いものか
苦しいものか
泣きたいものか
煮え切らない燻った不快の念の岩石場で
奴の姿はずっと仁王立ちをしていやがる
勝手になさいよ
野暮天グズグズ野郎に用は無い、ナムアミダブツ。
鏡のわたくしが泣いて居る
鏡のわたくしがおびえて居る
尋ねるものは我が心よ
「不快と鏡」