青硝子のペアリング

 秘密にしてね、わたしの右手のくすりゆびをみて、(さなが)
 芸術神アポロンの太陽を 夢に引架けるようにして
 かの恋人と対となる 愛と信頼の双を結ぶ、
 青硝子の対指環(ペアリング)をしているの、あなたにだけ、教えるわ。

 右手のくすりゆびは 太陽神アポロンを司るらしい、
 くわえてわたしの芸術を墜落(たか)めるの、ええ、所詮占い。
 わたしはわたしの「(わたし)」を出血させる。「わたし」を売淫()らない?
 いいえ いいえ、幼子の石渡す笑みに似せ、売淫るわ、躰吊るわ。

 恋人がいらっしゃるかって? あなたはそれを訊くのね、ええ、
 いるわ いるわ! わたし、かれをずっと俟っているの、
 お空にいらっしゃるわ、不在というものよ、不在というすべてよ、

 つまりはわたしの淋しさよ、わたしは孤独と約束したの、とわに
 恋人でいようって。不在がわが右薬指を埋める。守護(まも)れるわ。幾たびも、
 契りを千切ろうと彷徨うたび、青硝子 両で想いた淋しいお歌を零すから。

青硝子のペアリング

青硝子のペアリング

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-04-05

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