邦題 横浜 人形と素敵なお嬢様
横浜に向かう・・。
横浜の夜景は綺麗だが、夜になるまで待たなければならないのがもどかしいような気がした。
それで何とはなしに横浜線の改札に足を向ける。少ししてホームに入って来た黄緑色の電車に乗っていた。
終点の桜木町でJR根岸線に乗り換え、関内で降りるのが一番近いのは分かっている。
やはり桜木町で下車する事にしたが、乗り換えはせず階段を降りてからバスが来るのを待った。
すぐ傍にはタクシー乗り場があり、タクシーの到着を待つ人の列が出来ている。
その列の最後尾に並んでも良かったのだが、其れだとあの時と同じ事になる。
あの時、タクシーに乗ったのは二人だった。夜景を見たいのとは別の目的もある。
其れにタクシーでは着くのが早過ぎてしまう。バスなら左手に横浜の海を眺めながら、右に馬車道、続いて中華街に洒落たホテルと続く。
まだこの時間なら、ラッシュ時の乗客で満員になる事は無い。忙しさを忘れたかのようにゆっくり走るバス。
其れでも、ニ十分もすればマリンタワーが近付いて来、山下公園の向こうに氷川丸が見えれば下車となる。
腕時計の針は、動きが遅くなったような仕種で午後四時を示している。陽が暮れるまで時間を潰さなければならない。
先ずは、赤レンガに似せている壁に囲まれた、アンティークな店に立ち寄る。
大分前に店を閉めた筈なのだが、珍しくなのかどうしたのか、以前の様に海外で作られた小物やアクセサリーが所狭しと並べられている。
其の品々は何方かと言えば後進国で作られたものが多い。其れで、近代的な文明に毒された表情をせずに待っていてくれる。
客は誰もおらず、暫しそれらを物色しながら店内を回る。以前は、素材が如何にも現地で作られた事を物語っている様なモビール等を購入した。
今回探しているのはまた異なり、風情は・・何処の国の産だろうか、手作りの宝飾品の類。
そう迷わずに、宝石で作られた様な指輪を手に取り其れに決めた。更に店頭に置かれたバケツの水の中から、綺麗だが名が分からない花を一輪。
明らかに黄色人種では無い店の主人に代金を支払う。指輪は其のまま、花は透明なセロファンのようなもので簡単に包んでくれた。
店の壁に掛けてある時計を見るまでも無く、外は次第に薄闇に包まれて来た様で、隣のマリンタワーが紫色にライトアップされている。
タワーの向こうにあるのが「人形の家」で、世界中の人形が飾られている。その近くには「シルク博物館」も有り、蝋人形のようなものも。
人形というものはかなり怖く見えるものもあり、人によっては好みでは無いというケースもあるだろう。
五時が閉館で、もうすぐ。全館を見るつもりは無い。如何にも横浜らしく、野口雨情作詞の童謡『赤い靴』の像は山下公園に。
同じ野口雨情作詞の童謡『青い目の人形』にも出てくる日米の交流の証である「友情人形(青い目の人形)」や「返礼人形(市松人形)」は此処で見られる。館内は撮影可。
市松人形も怖いというタイプ。世界中の人形が展示されており、特別展では企画展示「チェブラーシカとロシアのかわいい人形たち」も。
南国でオレンジを食べていたら箱の中で寝てしまい、そのままロシアに運ばれてしまった正体不明の不思議な生き物と紹介されている。
つまり、此の人形の家の人形達には国境というものは存在しない事になり、「世界に1つだけのマトリョーシカ」もある。
閉館前に・・。
入口の近く。赤い靴の女の子が青い目の人形を持っている。後五分で閉館。
突然、女の子の後ろから・・。
「よく来てくれたわ?」
ドレスがピッタリ似合っている彼女が現れた。
「いや、久し振り・・相変わらず美しい君だ・・」
会話は後程にしなければ・・。
二人は隣のマリンタワーに。
展望室から・・眺める景色は素晴らしいが、後程食事をという事にしてある。
タワーを階段で降りて行けば、ブリキのおもちゃの展示が。三十分毎に交代で動き出す玩具達。
ところが・・ショウケースの灯りを除く照明が・・消えた。彼女が指で指し示す都度・・全てのおもちゃが次々に動き出した。
其れ程長くは動いていないが、二人を歓迎してくれているようだ。やがて何事も無かったかのように静かになるFloor。
二人は、少し離れたところにあるランドマークタワーに向かう。此の国では二番目の高さだった。
Elevatorに乗り69階に向かう。僅か40秒でレストランに。マリンタワーの高さは106mだが、ランドマークは296.33mと、此処からの視界は山下公園・氷川丸を真下に見、前方向こうにはベイブリッジ(横浜高速道架橋。)が、右手の丘の上は山手と言う高級住宅街で、各戸の灯りが見える。
更にその近くには「港の見える丘公園」「外人墓地」各国の外交官の家等が。
正面の黒々とした海・・その先は・・異国という事になる・・。
「此れ、君に・・と思って・・」
「・・あら・・嬉しいわ。指に嵌めてみるわね?」
「・・花は一輪だが・・君の傍では・・劣るかな?」
「ううん?そんなこと無いし・・」
二人は眼下の夜景を眺めながら・・食事を・・。
積もる話は・・山ほどあるのだが・・別に此処で全てを話す必要も無さそうだ・・。
食事をゆっくりとった後・・。
彼が空間に指で描くのは・・支払・・海外では其れで通じる所もある・・。
「さてと・・準備は宜しいですか?une fille adorable~素敵なお嬢さん~by French 」
彼女はdressの裾を両手で持ちpauseをとり・・挨拶を・・。
二人が向かうのは・・海外では無い。
更に遥かな彼方・・。
夜空一杯に煌めく星々・・。
巨大な・・五感では感じられない・・0型母船が迎えに来ている。
「やあ、二人一緒に・・」
と、第三の彼が・・。
「・・ああ、そういう事・・宜しく?」
「・・最短距離でお願いします・・」
「・・勿論・・船酔いしないで?」
全ての・・は第三の彼の三つの頭脳内の仮称~directoryの各部分で行われる。
当然・・cockpit以上に複雑で有るが・・頭脳内で行われる為・・ミスなどは有り得ない・・。
瞬き・・仮称~畳まれた空間に・・仮称~blackhole・・仮称~多次元且つ多層宇宙空間に・・仮称~見えざるmaterial・・が・・。
仮称~約百五十億年先に届くのは・・仮称~半日もあれば・・。
二人は・・頭脳に映されている次々に現れる仮称~光の粒子は見ず・・専ら・・指輪と花の土産に付き・・頭脳間で・・やり取りを・・既に・・半透明な姿で・・其れも・・次第に・・見えなくなった・・。
「色を見るものは形を見ず、形を見るものは質を見ず。夏目漱石」
「好人物は何よりも先に、天上の神に似たものである。第一に、歓喜を語るに良い。第二に、不平を訴えるのに良い。第三に、いてもいなくても良い。芥川龍之介」
「読んだだけ、聞いただけがただ残っていくという意味の物知りがいる。これは知恵というものにはならない。志賀直哉」
「by europe123 piano・E,piano」
https://youtu.be/K2baVzlE3to
邦題 横浜 人形と素敵なお嬢様
指輪と花・・。