哭き笑い

 涙より貴いものはないのです 涙より貴いものはありません、
 清む涙の きんと光る青の照りかえしより佳いものはないのです、
 それが流れ 頬を つ、と伝う朝暮の沓音よりいいものはありません、
 苦痛に明け暮れ幾夜を欠片の落葉と剥ぎ落す 砕けた音楽がそれなのです。

 その砕ける音 はらり、と揺れるような貴女の笑いの瞼です、
 頬伝う、つめたさに澄みきった消えいる沓音は貴女の笑い声です、
 まっしろに剥がれた星一つなき真夜中の群青の光は喜ぶ貴女の眸です、
 おおいなるくるしみに剥がれた貴女の砂漠の眸です まるで歓びの光です。

 下へ垂れる涙よりいやしいものはないのです、
 毀れるままに垂落ちる 酒噴零れるにすぎません、
 くるしみ圧しだし頬埋め 涙に洗ってはいけないのです。

 上へ沈没する涙よりとうといものはないのです、
 高空みすえ砂を曳き 希断ち爪立て墜ちるのです、
 肌硬く剥ぎ 内へ湛え水晶へ侍る湖の涙がそれなのです。

   *

 嗚 涙の純化は失意の底溜るさらりと砂と照るあなたの笑みでありました、
 嗚 とどめられた涙の清むは笑みであり、天沈む死は黎明の花嫁衣裳です。

哭き笑い

哭き笑い

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-04-01

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