アナザー・ライフ ~another・life~ Numberⅷ

アナザー・ライフ ~another・life~ Numberⅷ

『過去』



「はぁ・・・はぁ・・・・やっと、生まれたのね・・・」

テレビも、本棚も、ベットしかない部屋で、赤ん坊の声が響き渡る。

女は汗を流し、涙目で自分の産んだ、我が子を見る。

なんて可愛らしいのだろう。自分は、兄弟は兄しかいないので、『赤ん坊』とやらは見たことがなかった。

「自分の、子供・・・」

正直言うと、『子供を持った』という実感はわかなかった。だが、ただただ、子供を抱えていることは感じられた。

『子供』について考えていると、遠くの方から、ドタドタとうるさい足音が聞こえた。

すると、何もない部屋に、男が来た。

「お、お前・・・!ついに・・・」

「あんた、うるさい」

ハーハーと息を立てる夫に、少し苛立ちを覚える。

だが、夫は気にしないで話を続ける。

「よく頑張ってくれた――!!ありがとう・・・。ありがとう!・・・・いい家族をもって、俺は、幸せだ」

夫は、泣いていた。いつも泣いたりはしない夫が涙を流した。

どんなにこの命の存在が、私たちにとって幸福をもたらしてくれるか。

今の夫の姿を見てこのことが考えられた。



ヒビヤside

「くっ・・・・」

-つ、強い・・・!

俺は、黒龍軍の大将のような奴と戦っていた。

相手は、長い槍を持った奴で、闇魔法を使ってくる。動きも早いし、防御、攻撃、すべてが安定している。手ごわい。

「はぁぁぁぁああああっ!!!!」

-なにっ・・・・!?

『すべてを闇へと導く・・・』

闇魔法。それも、この魔法は確か、上級魔法だったはずだ。それも、上級中の上級。

俺は、後ろにステップで相手から離れ、上級焔魔法を繰り出した。

『すべてを焔へと変える!炎龍爆炎火!!』

俺の周りが全て炎へと変わった。いける。そう思った。

だが。

『無地の世界へ ワープ・ループ』

「なっ・・・・!」

-俺の上級魔法が打ち消された!?馬鹿なっ!そんなわけ・・・っ!

「驚いた?これが黒龍と炎龍の違い・・・」

―女!?

真っ黒なコートのフードを取ったのは女だった。紺色の髪のショートカット。また、左目には眼帯をしている。

「私たちには誰も敵わない」

女はそう言うと、右手を天に指した。

『デイザン・リヴェウント・イディッサ』

すると、女の指の上には、大きい紫色の球があった。

―闇魔法、上級Aランク・・・!俺も簡単に出せねぇってのに・・・っ

俺は、炎と闇の魔法、どっちも使える。親が、焔魔法のエキスパートと闇魔法のエキスパートだからだ。

「ちっ!」

―今は、隠れて何か手がないか探すしかない・・・。

俺は、瓦礫のそばに魔法で瞬間移動をした。

『リベウント・サークル!!』

この魔法は、初級魔法だ。しかし、応用すれば、すごい技にもなる、瞬間移動の技だ。

―何か探して、早く母さんのところへ・・・っ!

俺は、傷にいたんで、顔を歪めたが、俺は、踏み出した。

「どこだ・・・!?でてこい!!」

女の声が聞こえる。まだ遠い。まだ余裕があった。

もう少し。あと1箇所でこの魔法が完成する。

「よし、終わった。次だ次」

『リベウント・サークル』

次の瓦礫の後ろに飛んだ。

すると、

「どこだー!!でてこい!でてこないと、この場所とも塵にするぞ!?」

近くで聞こえた。ヤバイ。このままのペースでは、この場所、この魔法がバレてしまう。

急いで取り掛からなくては・・・。







「見つけた」






「━━━━・・・・!?」

俺は、恐る恐る後ろを振り返ってみると、あの女が闇魔法を俺に繰り出そうとしていた。

「はやく、あの方のところに行ってください。お待ちしていますよ?だから、一回ここで寝ててください」

―やばい!!やられ、・・・・・

「・・・くっ!!!」

俺は、瓦礫のそばを離れ、広い所へ走った。

「逃げるんじゃない!!」

すると、女も、俺の跡を追いかけて来た。


―よし。今だ!!!!


俺は、俺は・・・・。俺は・・・・・・!!!!


母さんを、母さんを助けるんだ!!!!!!





『リヴァン・エクス・ディセイント!!!』




真黄色の柱が空に広がり渡った。

「何、何だと!?この私が、・・・この私が!!ここで、負けるだと・・・・きゃ、きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!」

女が、叫びながら消えていった。

終わったのだ。この女との戦いが。だが。

「・・・・・しかし・・・・いずれあの方はこの世を世界する、運命なのだ・・・・フフ・・・・・・・・・また奪いにくるよ・・・・ヒビヤ様・・・・」

頭の中に、消えたはずの女の声が聞こえた。


「はぁはぁ・・・・・・」

瓦礫しかない、この広い広場で俺だけが立ち尽くしていた。


真っ赤な夕日が自分たちを照らしていた。

少しまぶしかった。炎天がユラユラゆれていた。

あの日、何をしてたんだっけ。

あ、そうだ。思い出した。あの日は、暑い暑い夏の日だった。

夕日が俺と藍を照らしていた。


『ねぇ、日比哉?この世界のこと、どう思う?』

『い、いきなりなんだよ』

『私ね?もうすぐ、死んじゃうかもしれない』

『・・・・え・・・、それってどういう意味だよ』

『だからさ、言っておきたかったんだ。日比哉にさ』

『だから、それってどういう意味だよ。はっきり、言えよ』

『だから、もうすぐ私、死んじゃうんだよ』

『・・・・・』

『言っておくね?』










『―日比哉、大好き』






夕日が、涙をいっそう輝かしていた。

アナザー・ライフ ~another・life~ Numberⅷ

すごい、更新が遅れてしまいました・・・・\(^o^)/

すいません・・・・。


まぁ、次は、すぐ出せるように頑張ります!!!

アナザー・ライフ ~another・life~ Numberⅷ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-12-30

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted