トキノコエ No.2 キラ

登場人物

凰神夏月 おうがみ なつき

黒我玲王 くろが れお

時雨瑠夏 しぐれ るか

謎の少女

さて、瑠夏が少女の着替えを始めてから約20分が経過した、ようやく瑠夏は部屋から出てきて二人を部屋を入れる。
「おまえ、着替えさせるのにどんだけかかってんだ?」
玲王が不満の声を漏らす、夏月も全く持って同感だった。
「しょうがないでしょ?女の子にはいろいろあるの」
何故だろう?これ以上詮索しちゃいけない気がする。動物的本能、直観的な行動。身の危険を感じた玲王と夏月はそれ以上の詮索をやめた。だって瑠夏の後ろから「だまれ」ってオーラが見えるから・・・。
「で、夏月。この子いったいなんなの?」
瑠夏は部屋にあった唯一の椅子に座り、腕組をしながら偉そうに聞く。そんな瑠夏の前では何故かこじんまりとしている夏月と玲王がいた。いや、玲王は関係ないじゃんか。巻き込まれただけだよな。
「えっと、その。大変言いにくいのですが・・・」
「ん???」
「まったくなにもわかりません」
本当の事だからしょうがない、俺は嘘はついていないんだ!!目を、目を見るんだ瑠夏!!!
「はぁぁぁぁぁぁぁ!?この子、あんたの知り合いとかじゃないの???」
「はい、全然顔も名前も知らない子であります」
呆れた瑠夏、ため息をつき玲王を見た。
「ひ、左に同じ」
と言うことは玲王も知らないということ、瑠夏はますます機嫌が悪くなった。
てか何でそんなに機嫌が悪いんですか、瑠夏さん。あれか、俺が無理やり家に呼んだ挙句に「何も知らない」って言ったから、それで怒ってんのかな。いや、そんなわけわかんない理由で怒るわけないし・・・。
「わからん」
「なにが?」
「いや、何でもないよ瑠夏さん」
?顔をする瑠夏。まあこの際、瑠夏の機嫌なんてどうでもいいか。
「とりあえずはこの子が起きるのを待つしかない」
夏月は包帯を巻かれ、夏帆の服を着た少女にかけ布団をかけてあげる。その寝顔は天使のように美しく、そして無垢な顔をしていた。

三人はとりあえず警察にも病院にも少女をつれていかないことにした。三人は下のリビングへと降り、とりあえず休むことにした。
グルルル・・・・
玲王のお腹がなる。
「腹減ったな」
「もうすぐ12時か・・・」
夏月は時計を見る、時刻は11:50だ。本来ならばもう入学式は終わって下校準備に入っているとこだ。
「夏月、昼飯作れ」
「はぁ?何言ってんだお前」
「腹が減った、これじゃ俺はもうすぐ死んでしまう。お前の作った飯でいいから、なんか食わせてくれ」
「なに無茶なこと言ってんだ、俺料理なんてしたことないから」
あいにく夏月の家にはインスタントラーメンなるものもおいてはいなかった。理由は簡単、母親が寝込み毎食インスタントラーメン生活をした夏月。つまりは家にあったインスタントラーメンを全て夏月が食してしまったということだ。偏食野郎め。
「よっしわかった。じゃあ、あたしがおひるごはん作ってあげる!!」
勢いよく、そして唐突に瑠夏が宣言した。腕まくりをし台所へと向かう瑠夏。出来ればものすごく阻止したいのだが、瑠夏の機嫌を損ねると何されるかわかったもんじゃない。
トントントン、グツグツグツ、ガチャン。
一応まともに料理しているような効果音は聞こえる。だが、それとは裏腹にものすごい異臭が部屋中に充満していた。
「な、夏月。俺もう、だめ・・・」
瑠夏が料理を始めてから10分。なんとかハンカチで鼻を押さえ、臭いを防いできた夏月と瑠夏。だが既に臭いは限界レベルまで達していた。
「耐えるんだ玲王、とにかく一度部屋から出ないと」
「お、おう・・・」
ハンカチで鼻を押さえながら部屋をこっそりと出る二人。部屋を出来ると二人は新鮮な空気を胸一杯に吸い込んだ。
「やべぇ、感激で涙が出そう。こんなに普通の空気がおいしいなんて」
「ほんとだな、グスッ」
マジで涙が出てるよ、お二人さん。前に一度、瑠夏は家庭科の授業でドーナッツを作ったことがあった。だが調理を始めてから1分後、家庭科室にものすごい異臭が充満した。まさに今さっき夏月達がいた部屋と同じような状況である。そんな家庭科室をある一人の学生がこう例えた、「毒ガス室」と。
実に瑠夏の調理(?)時間は50分にも及んだ。マンガやラノベなら台所はぐちゃぐちゃになっているのだが、不思議なことに台所はきれいなままだった。ただ異臭がするだけで、それ以外は普段通りになっていた。
「ある意味この臭いは兵器だな」
「なんかいった?夏月」
「いいえ、なんでもないですよ、瑠夏さん」
「?」
「そ、それより何作ったんだ?カレーか、それとも・・・・」
「じゃーん。うどんでーっす!!!」
やっぱりか・・・。ま、わかってはいたけどね。
瑠夏の得意料理。それは王道のカレーライスとかではない、何故か"うどん"なのだ。ちなみにいっておくが、作ったうどんはごく普通の"かけうどん"である。
「じゃ、あの臭いはなんなんだよ」
ボソッと玲王がつぶやく。まったくもってその通り、見た目はうまそうなうどんである。もしこれが店とかで出されても何の疑問も持たないだろう。そこまで言わせるほど"見た目"はいいうどんだった。
「あ、夏月」
「ん?」
「これ、おばさまのおかゆ」
瑠夏はおかゆを乗っけたおぼんを差し出す。
「作ってくれたのか?わざわざ」
「まぁね。ご飯とかは残ってたから」
それって俺が炊いた失敗作じゃ・・・。そんなもんをおかゆにしたのか?大丈夫かよ。
「わかった。それじゃ母さんのとこにもってくよ」
そう言って部屋を出る夏月、そして部屋を出るとおかゆの味見をした。病気の母親に、さらに病態を悪化させるものを食べさせるわけにはいかない。
一口ぱくり。
その味は、以外にも"おいしかった"。
「うそ、まじで!?」
試しにもう一口。うん、やっぱりうまい。
「奇跡だな」
毒見を終えた夏月は、瑠夏の作った奇跡的にうまいおかゆを母親の部屋へと運んだ。

「さてと、昼飯も食ったし、お前の部屋に戻るか」
満腹になったお腹。まぁうどんはまずかったが、これからはおかゆを作らせればいいだけか。
「そうだな、あの子も起きてるかもしれないし」
三人は手分けして食器を洗い、夏月の部屋に戻った。
部屋に戻ると少女はちょうど目を覚ましたところだった。
「おっ、起きたか」
「・・・・」
数秒、辺りを見回す少女。そして起き上がり、夏月達の方に向き直った。
「傷の具合はどう?」
「・・・・」
「・・・・・・・・」
無言の間、なんとも息苦しいものである。
「そ、それより」
夏月は空気を戻そうと少女に話しかけた。
「君の名前は?なんであんなところに居たの?しかも傷だらけで」
「お、おい夏月」
「え?」
「そんな一度に聞いちゃ混乱するだろ?」
「あ、そっか」
夏月は少女に謝ろうとする、すると少女の口が開く。そして一言・・・。
「キラ・・・」
「えっ?」
もう一度少女に何を言ったか確認しようとする夏月と玲王、だが少女は一言だけ言うと再び眠ってしまった。

トキノコエ No.2 キラ

一日で2話目作ってしまいました。
1話1話がすごく短いので、これからも頻繁に更新できると思います。

トキノコエ No.2 キラ

魔法が当たり前に存在する世界。夏月はある日突然、謎の少女と出会う。まさかこれが自分の運命を変えることになるとも知らずに________

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-05-02

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