奇想詩『クリハラのハエ』

奇想詩『クリハラのハエ』

クリハラは天然パーマだ
クリハラの天然パーマの中に
ハエが迷い込んで出てこなくなった
学校が終わっても
出てくることはなかった
翌日気になってハエのことを聞いたら
クリハラに無視された
その日からなんか変な感じになって
疎遠になった


あれから卒業して十数年が経ち
クリハラとたまたま電車で会った
クリハラは天然パーマのままだった
天然パーマを見た瞬間に
クリハラの頭の中の
ハエのことを思い出した
クリハラは結婚していた
子どもの写真を見せてもらった
その子も天然パーマだった
クリハラは他にも色々と話してくれたが
そんなことよりも
クリハラの頭の中のハエのことが
頭から離れなかった
クリハラは「またな」と言って
途中の駅で降りていった


あれから数十年が経ち
クリハラと久しぶりに同窓会で会った
クリハラは年老いても
天然パーマのままだった
子どもの写真を見せてきた
電車で見たのと同じ写真だった
クリハラは離婚していた
クリハラの食べていたコーンスープの中に
ハエが入っていた
「やっと出てきた」
クリハラがそう言った
ハエと一緒にクリハラが抱えてきた
べつの何かも出ていったようだった
クリハラが笑った
おれも笑った

奇想詩『クリハラのハエ』

奇想詩『クリハラのハエ』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-28

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