ひとひ

ブーツの金具が拍子をとって
革靴とピンヒールが歌いだす

白い一等星がぼやけていく
オリオン座が遠のいていく

だから春は怖いのだ
黄砂をかぶったフロントガラスが泣いていた
足の裏に力を込める方法を
忘れそうだから怖いのだと


肌を刺す風のなかで 一羽
電線の鳥が鳴き続けている

日向ぼっこしていた黒猫が
ふらりどこかへ歩いていく

絵を描きたいと思った

想像のパレットから作った色で
格子形のワイヤーを染めるのだ

あかく沈む太陽を縁取って
切り抜く真似をしたいから


フロントガラスはまだ泣いている

砂利の端で フキノトウが咲いている


春は歌いだす

存在を問いただすように

春を歌いだす

ひとひ

ひとひ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-27

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