Ea, CEO et flos District 彼女とCEOと花街の夕餉
尾上雄二率いる巨大グループ。
「冗談。そう言えば最近の記事で、75歳の男性が若い女性のハーレムを作っているとか・・その手口が宇宙人に襲われるから・・と言うらしいが・・宇宙人?宇宙までは良いとしても・・人は拙いな。其れに、僕がそんな事する様に見える?其れは・・あまり光栄では無いな?」
奥座敷の花は皆とも言えそうだ。
奥座敷から窺える庭の佇まいは、今宵の夕餉を一層盛り立てる様に・・更に墨を流した様な夜空の画面に浮かんでは煌めき輝かせている星々がアクセントで、丸い衛星では兎が踊っている様コンツェルンCEOである尾上雄二には、且つての法務室時代も忘れられない一コマ。
金では買えない仕事のスリルは案外想い出になる。全国出張をし広域暴力団と交渉した事もあった。
全国津々浦々を回り行った訴訟の法廷での弁論や断行仮処分のお陰で支店の若い連中からも信頼をされるようになった。
或る時などは、鹿児島支店で依頼された都城の案件をすっぽかしてしまった事があったのだが、その次に鹿児島に行った時。
泊まったホテルから出掛けようと思った際、ホテルの正面に支店の車が止まっており、仲が良くなった若い社員に言われた。
「・・支店長から尾上さんが逃げないように見張っておくように言われまして・・」
思わず雄二は笑みを零していた。
「・・其れは・・御苦労さんだったね・・では、真面目に・・現場まで送って貰う事にするか?」
支店等でも法的措置のマニュアルは渡してあるから、何も不安は無いのだが、頼りにする若者の笑顔に逆らうつもりは無い。
今日は審査課の女性と共に都内の足立区に来ている。社を飛び出したまでは良かったのだが、新入社員の女性に仕事の一部を見せてあげようと思い加賀さゆりを誘ってみた。
彼女は審査課の所属であるから、本来は男性社員が担当する管理課の危険が伴う業務には縁が無いのだが。
東京23区でも低所得者が多いと言われる、板橋区・墨田区に足立区では至る所で債務者の姿を見掛ける。
二人が最初に向かったのは、墨田区の個人商店。車のクレジットを組んでいたのだが、支払い困難で車を引き揚げる事になった。
二人が商店に着くなり、契約者が顔を出す。勿論、事前に連絡をしておいたから。
社の提携先の運送業者にも連絡を入れて置いたから、其処で合流した。
通常は管理課の社員が引揚車を運転し、モータープール迄運ぶ事が多いのだが、今回は業者に依頼をした。
雄二が車の置いてある場所がおかしいのに気が付く。マニュアルのトラックだが、店の柱に張り付くように止められている。
ドアを開け、マニュアル車のチェンジレバーがローギアーに入れられている事を確認。
エンジンを掛ければ柱に激突する。では、ニュートラルにチェンジすれば良さそうなものだが、生憎コンクリは斜面になっており、やはりぶつかりかねない。
其処で、専門の業者を手配した。彼も分かっているだろうが、念の為その事を伝える。
素早くBackギアーに切り替えたので、何事も無く引き上げは終了した。
そういう事は滅多にないのだが・・中にはそんな事もある。
人類は金銭が絡むとおかしな反応をするもの。車を処分しても残は出るので、その回収につき契約者に承諾して貰う。
店を出てから車に乗り、彼女に何が問題だったのかを説明。
車は昼食を取るためにファミリーレストランに向かった。
メニューを渡し、彼女が好きなものを頼むようにと。雄二が目を遣ったのは奥のテーブルに座っている男性。
以前、管理課の男性から彼の事は聞いている。其の頭脳におさまっていた契約者の姿を浮かべる。
其の男性が破産者である事を裁判所が認めたので、これ以上請求を続ける事は出来ない。
一定額までは貯金も許されるが、その男にはその余裕も無いようだ。
「・・あれ見て御覧・・?」
雄二がさゆりに男の行動を注視するように話す。さゆりが言われた通り男を見た時には、席を立ち歩き始めている姿に二人の視線が注がれる。
レジの前には代金を支払おうとするサラリーマンが数人立っている。
男は其のサラリーマン達の後ろを腰をかがめながら通過した。
レジの店員は其の事に気が付かず、サラリーマンの生け垣は彼の姿を見せなくする道具に使用されていた。
「・・尾上さん・・あの人捕まえなくていいんですか?」
「・・僕達は警察官では無いのだから、彼を現行犯逮捕する事は可能でも、そんな事に関わり合う意味が無い。尤も、殺人だとか傷害事件なら話は別だがね・・?」
金のない者がどういう行動に出るのかは、容易に想像がつく。
文無しを捕らえたところで・・レストランから感謝される程度だが、個人商店ではない大企業なのだから、経営には支障は無いだろう。
彼女には審査を依頼してあるのだから、管理課の業務まで覚えて貰おうというつもりは無い。
審査とは、契約の入口であり、管理課は出口に該当する。
入口がしっかりしていれば、とは言っても実際には限界はあるのだが、出口に至らず契約の締結を防ぐ事が出来る。
新入社員にそこまで神経を使わせる意図は無いが、何も知らないよりは良いような気がした雄二。
店を後にした。信号が赤になった。車の前の横断歩道を歩いて行く親子連れ。
子供には関係は無いが、男は延滞の常習犯。かと言い、今目の前を歩いているのは、まだ支払日が到来していない延滞者になる前。
親子連れの家は、担当者の報告では戸建ての旧い市営住宅で如何にも資産が無い事を物語っているが、担当者からは、訪問するとよく妻が顔を出す事を聞いていた。
家族の生活は決して楽では無いのだろうから、妻も子供の事は心配の種であろうが、当然ながら子供には何の罪も無い。
TVくらいはありそうだが、そんな世帯ではNHKの受信料迄支払う余裕は無いと思われ、放送法六十四条の規定・・受信機(TV)を持っているだけで、其れを支払う義務が生じる。
少し強引過ぎる法律であり、NHKは不払い者には今後一層強硬措置を取り、通常の金額の二倍~三倍の金額を請求すると明言している・・まるで制裁が好きなUSAにそっくりと言えそうだ。
世界中がUSAの指示に従っており、小国には西側諸国から次々に金員の支援やジェット戦闘機の供与が行われるそうだ。
事の発端は大国であっても、戦争とは簡単にケリがつくものとは言えず、今の世代は此の国が且つての戦争でUSAから如何に残虐な大量殺戮をされた事など、政府の様な上から若者の様な下までが、小国には応援をするが、自国の過去の戦争犯罪には少しも疑問を感じないという辺りは、お国の為に亡くなっていった沢山の犠牲者が浮かばれない事に繋がる。
人類には争いは付きまとうものであり、世代が交代した後平和が長く続けば、道理も通用しなくなる。
まるで、サッカーや野球の応援にも似たように思われる。そんな政権は一旦下がった支持率を、韓国との交流や小国への訪問で誤魔化し、増税も後に延ばしている。 地方統一選挙での勝利につなげる意図が見え見えなのだが、此のままでは、国が貧乏国になっており、日銀に買い上げて貰った国債は遂に5000兆円にも及んでいる借金経営と言える。
首も回らないまま将来、今の世代の年金資金が底をつく事は既に目が見えている。
足立区でもう一件全く連絡が取れない契約者がいる。契約をした営業マンの話では・・。
「家は父親が個人タクシーをやっているのですが、息子の事については知らぬ存ぜぬ」
手掛かりは一つだけありそうだ。
雄二は、営業マンに連絡をし、其の契約者の見た目の特徴と勤務先を聞き出す。
「・・勤務先の住所は・・で、契約者の特徴は、背が高く黒縁の眼鏡をかけています。しかし、勤務先に顔を出してはやり過ぎになるのでは・・先日も、タクシー会社の本社に向かったところ、二階に上がる階段の壁に(借金取りお断り。)と書いてありました、確かに個人情報を他人に漏らす事に繋がると思い、訪問は断念しました」
「・・その判断は正しいね。僕なりのやり方を試してみるだけ・・」
二人は、其の住所に向かった。会社はすぐに分かった。とは言え中に入る事は出来ない。
車の中で雑談をし時間を潰す二人だが、雄二が時々其の会社の玄関の自動ドアに目を遣っている。
「・・君は、不動産の担保を取るという意味は分かるかな?」
「・・まあ、契約の金額が支払われなくなった時の事を考え、契約者の所有する不動産に抵当権などを設定する・・と、先輩から聞いています・・」
「・・そうだね・・正解。でも、若し担保に取った不動産の価額が急に下がってしまったりすればどうなるんだろう?」
「・・そんな事あり得るんですか?誰もそんな事を言いませんが?」
「其れはそうだ。今、実は不動産の価額は、且つてのバブルの時を超えて上がり続けている。物事は何でもそういう事は考えられるし、僕達はそういう事も考えておくのが仕事の内だという事では無いのかな?」
「・・先の事が分かるんですか?更に上がり続ける事も・・?」
「そうだね。そういう考え方もある。だが、上がり続ければ・・何時の日にか下がるようになるとも言えそうだ。二年後あたり・・」
雄二がそう言った後・・会社の自動ドアが開いた事に気が付き彼女に見ている様にと話す。
運が良かったとも言えるが、先が読める雄二には・・こうなる事が分かっていた。
最初は女性が出て来た。
続いて社員男女が数人・・。
皆で何かの作業をやり始めた。
「・・いいかな?営業マンが言った契約者の姿は・・?」
「・・確か・・背が高く・・黒縁の眼鏡をかけている・・でしたね?」
「・・よく覚えていたね。もう一つ契約者の個人情報があるとすれば・・?」
「・・ひょっとして・・名前の事でしょうか・・?」
「では・・見ていて?」
雄二は車のドアを開けると・・車外に出、他の社員には聞こえない程度で。
「・・さん?」
一人だけが・・驚いた様に雄二の方を見ているのだが・・他の社員は全く気が付いていないようだ。
雄二が、頷いてから・・少しだけ手を挙げる。
男は確かに人相書きの様で、雄二に近づいてくる。彼としても何があろうと、会社の同僚には知られたくない・・という何かがあるからだ。
雄二は黙って内ポケットから取り出した名刺を見せる。
男が納得をしたようで・・。
「・・あの巨大グループのCEOで・・?済みません。・・に払おうと思っていたので・・大丈夫です」
男の言う事は嘘では無い事が・・雄二には分かっていた・・。
二人は再び車内の人となる。
「この画面の女性・・知っている?」
「・・え?有名な女優では?その横の方も同じ位綺麗な方ですね?」
「・・では、君のこの後の予定は何かあるかな?今日はあまり良い事では無い事ばかりに突き合わさせてしまったから・・今度は」
「・・いえ?でも・・?」
「良かったら・・この二人も交えて夕食でも食べないかい?美味しい料理だから・・きっとお気に召すと思うけれど?」
彼女が頷く事は分かっていたが・・やはり、許可を得なくては拙い。
雄二が独り言を言っている様な気がした彼女。
頭脳から二人の頭脳に連絡を・・。
車は、首都高速を走り花街の茶店に向かった。
茶店の前には女優・三田綾子のマネージャーの車が止められている。
その後ろに車を止め茶店に入る二人・・。
店からは芸者達の元気の良い声が聞こえ始めた。
「二人から聞いていました。何か会社の女性も・・私の手料理で満足して頂けるかな?」
茶店の女主人がそう言いながら笑みを窺がわせる。
既に茶店の奥座敷には何時ものメンバーが揃っている様で・・賑やかそうだ。
芸者達に彼女は眼を見張っていたが・・今時芸者が見られるのは限られた場所くらい。
次に二人から声を掛けられ・・照れくさそうな彼女。
「三田です・・此方は若井夕子さん。雄二と私達は同じ郷里の出身なんです」
彼女は笑顔で挨拶を返した。
奥座敷にはアトリエの大物写真家・画伯・芸者達・二人と、着物女性の勢揃いとなった。
長机にすらっと並んだ手料理。
刺身にいろいろな・・海苔や紫蘇の葉、その他珍しい食材の天ぷらステーキも・・。
「ご主人の手料理だから・・口に合えば良いけれど?」
現在も、青い惑星の別の三次元空間は巨大グループが空前の好景気で・・資産や資本は人類の社会では信じられない程で・・金銭に例えれば此の国の一年の予算額の何倍?を遥かに超えている。
澗(かん)という単位で、兆・京・垓・秭・穣・溝・の次がこのかんで、後ろにゼロが36つく事になる。
世界中の金銭を全て合わせても此処までは?青い惑星には存在しないhigh technologyが駆使された素材から製品まで・・無いのは兵器の様な類・・。百五十億年先の文明の象徴の様なものとも言えそうだ。
新入社員の彼女の雇用契約上の賞与は一千万程度を超えている。
勿論、主人や芸者達は人類からの収入にグループからの引当金なども加えられ支給されている。
ただ、この様な紙幣は・・雄二達の郷里では・・何の価値も無く単なる紙屑に過ぎない。
揃っている顔の中には・・。
「・・あら?前の千円札の方?」
今は変わったが、以前の千円札には夏目漱石が刷り込まれていた。
文豪三人が彼女に質問を。
「・・貴女は、小説で何か好きな作品はありますか?」
「・・あまり知りませんが・・小僧の神様って・・有名ですよね?」
志賀直哉以外は・・苦笑をしている。
尤も、芥川が漱石に。
「私も志賀直哉の様な作品が書いてみたい」
と言い漱石が。
「其れは、人其々だから・・彼は彼ので君は君らしいものでいいのじゃないだろうか?」
と言った。
彼女のお目当ては・・他にも、女優綾子と正体不明の同じ様な着物美女・・。
「・・三田さんは今は何か撮影をされているのでしょうか?」
「時代物が好きなんですが、今は相手の役者がいないし・・いてもお爺さんばかりで・・此の国の昭和30年代の映画のようなものをと・・考えているんですけれど?」「案外、あの頃の作品を現代風にアレンジしても受けるのでは?」
と夕子が。
「・・凄いと思いますのは、公式サイトで見たのですが、三田さん、素顔で殆ど化粧をしていないとか・・?それと、濡れ場のようなものを演技する事は無いとか?」「勿論、いろいろな作品に応じてメイクはしませんと?濡れ場というのは・・男女の?いえ、プロデューサーも監督も其れは似合わないから・・と言われるし・・ですから原作や脚本もその手のものには縁がないようです・・・色気が無いというのでしょうか?」
此れには一同大笑い・・。
綾子ならず夕子も・・艶やかな容姿には・・当然ながら・・世間では番外の美しさと評されている。
雄二の提案で・・何れ撮影風景を見に行く事も・・。京都の太秦になるが。
食が・・飲み物が・・やはり、花街では大御所と言われる女主人の料理は、お茶屋で出されるものと同じ本格的な此の国も少し遡る時代の屏風絵にでも相応しそうな・・。
夕餉が終われば、マネージャーが彼女を車で送って行くことになっている。
綾子は今晩は夕子と雄二の家に泊まるそうだ。
「・・え?CEOのお家はハーレムの様?」では無い・・文明の民・・。
「秤屋に奉公する仙吉は、番頭たちの話を聞いて「鮨を食べてみたい」と思うようになった。
そんなとき、仙吉は電車賃をもらってお使いに出た。用事を済ませたあと、仙吉は番頭たちが言っていた鮨屋の前を通る。帰りは歩いて帰ることにして、帰りの電車賃の4銭を持ってのれんをくぐった。
小僧は勇気を出して鮨をつかみかけたが、店の主に「1つ6銭だよ」と言われて手を引っこめた。仙吉は、そのまま店を後にする。
貴族議員のAはその場に居合わせており、一部始終を見ていた。Aは、後日議員仲間のBと会ってその話をした。Bは「ごちそうしてやればいいのに」と言うのだが、Aは「そういう勇気はちょっと出せない」と。
それから、Aは子どもの体重計を買いに神田の秤屋へ行き、そこで奉公をしている小僧が、先日鮨屋に来た小僧だと気づいた。そして、Aは秤を小僧に運ばせることにし、途中で鮨をごちそうしようと思った。
秤を買う時には住所の記入が必要だったが、Aは名前を知られたあとでごちそうするのは妙な心地がすると思い、でたらめな住所を書く。
そして、Aは鮨屋に入って先に勘定を済ませ、「私は先へ帰るから、充分食べておくれ」と言って逃げるように去って行った。
仙吉はそこで3人前の鮨を食べた。店の人は、「お代はまだもらっているから、また来てください」と言う。
一方で、Aは変に淋しい気持ちでいる。人を喜ばせるのは悪いことではないのに、Aは悪事を働いたあとのような後味の悪さを感じた。
仙吉は、自分が鮨屋で恥をかいたことや、番頭の話の内容をAが知っていたこと、Aが自分の気持ちを見透かしていたことを不思議に思い、次第に「Aは神様かもしれない」と思うようになりました。
そして、小僧は悲しい時や苦しい時にAのことを考えた。小僧は、いつかまたAが思わぬ恵みを与えてくれると信じていた。
作者は、ここで筆をおくことにする。実は、作者は「小僧がAの書いた住所をたずねたとき、そこには家ではなくて小さな稲荷の祠(ほこら)があった」と書こうと思った。しかし、それでは小僧がかわいそうなので。」
「by europe123 piano・E,piano」
https://youtu.be/K2baVzlE3to
Ea, CEO et flos District 彼女とCEOと花街の夕餉
新入社員の女性と共に、いろいろな事に遭遇。