七ならべ 2023年2月

吹雪の夜は
外の様子を
見たくないから
スマホに眠る
ことば掘り出し
熱源とする
紅茶はさらに
冥い動揺
あなたの街を
見てみたくても
ライブカメラは
うなだれている


マッチを擦って
観るまぼろしは
あたたかいとは
限らないから
脆い約束
瓶に閉じ込め
死のはじまりを
想いつづける


これまでのこと
思い起こせば
余白に書いた
出来事ばかり
脳とセカイを
白く塗り替え
あと数日で
流氷が来る


夜の線路は
凍えてるから
寂しげな音
鳴らし続ける
春は来るのか
いつ来るのかと
歌い続ける
春を待ってる
わけじゃないのに
ぼくの気持ちを
置き去りにして 
風船はとぶ


雪がいとしく
感じられたら
春がちかくに
来た証拠です
春はしまひの
季節ですから
綺麗に溶ける
準備しませう
春のなみだは
わたしの為に
光らせたくて



ひとりの窓に
雪の結晶

二月の夜を
濾過すれば船

月のかたちは
おなじ想い出

紡ぎつづけて
春のたまさか

手を伸ばしても
あと千哩


シチューの夜は
木彫の熊が
少しほほえむ
家族はだれも
気づかないけど

熊がよろこぶ
顔をみたくて
ぼくはにんじん
食べないでおく


スプートニクが
飛び立ってから
もう何年が
過ぎただろうか
帰れないかも
しれないなんて
悪い冗談
言ってたけれど
ぼくらはここで
待ち続けるよ
若い記憶が
燃え尽きるまで


淡い予定を
雪に書いても

冬の魔法に
嫌われていた

徐々に冷えゆく
黄道のうた

たぶん春には
春の助動詞

角を曲がれば
天の羽衣


秘密基地には
ひみつがなくて
液状化した
記念写真が
散らばっている
 
裂け目があれば
嘘は生まれる
それでもあの日
話したことは
嘘ではないし
まぼろしでない
 
この山奥で
生きていこうと
した人たちの記憶で
土は
酸性化する


地震の夜は
灯りも消えて
被害伝える
ラジオの声が
部屋に溢れる

朝がこんなに
恋しいなんて
考えたこと
なかったけれど

脈拍でしか
伝えられない
こともあるよね


白い大地が
信じられるか
日が昇るまで
答えなどなく

列車の窓に
飛び込んだのは
希望に似せた
鈍い現実

そうだとしても
手を伸ばしたい
還る場所なら
やわらかいはず


交わることは
失うことと
教わってきた

欲望の火が
着いてしまえば
コントロールは
もう出来なくて

でも、それならば
失うものは
何なのだろう
それもわからず
冷たいしずく


小数点の
右と左で
違う誰かを
あたためている

小数点は
声を荒げた
なぜ自分だけ
小さいのかと
他の誰より
重要なのに
数字みたいに
セクシーじゃない

円周率に
翻弄されて
歯形のついた
小数点が
図る幕引き


約束の地が
雪溶ける頃

言い訳もなく
冷めた珈琲

持続可能な
飴を探して

仕組まれていた
朝のあかるさ

迷いつぶして
二月を急ぐ

七ならべ 2023年2月

七ならべ 2023年2月

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-21

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