七ならべ 2023年1月

消え入りそうな
初夢だけど
それを希望と
受け入れるなら
どんな壁さえ
希望といえる
右手に残る
リアリティだけ
色彩を持つ
アンダルシアの
月を飲み込む
起伏のような
やさしい痛み
舐め続けても
いつか交わる
日が来るならば
胸に消せない
星はかがやく

(2023年1月2日)



しぶんぎ座って
どんな星座か
わからないまま
宙をながめる
流れる星は
見れなくていい
もうこれ以上
願わなくていい
スマホの中の
文字が踊った

(2023年1月4日)



ことば足りずに
窓を裏切る
言いたいことは
すぐ凍るから
信号なんて
待ってられない
誤解はいつも
宵に生まれる
だから
生まれたばかりの月に
理性のかけら
預けておこう
最後の五文字
伝えるまでは

(2023年1月7日)



気怠い空が街を覆えば
何を描いても風になるから
壁の記憶を掘り起こしては
恋のかけらを拾い集める
歴史はなにを語っているか
まともに耳を傾けもせず
安い批判で居場所を築く
そんな奴らに椅子はいらない

(2023年1月7日)



空に上がれば
月が待ってる
雲のあたまを
白く照らして

距離を隔てた
恋人たちは
月を頼りに
想いを飛ばす

そんな想いが
雲の上では
あちらこちらで
花を咲かせる

夜間飛行は
こころ細くて
花をたよりに
進むしかない

(2023年1月10日)



午前零時の
時報の裏で
錆びた線路が
歌い始める
夢はどこまで
続いているか
誰もわからず
軋む枕木
ひとを眠りに
誘うひつじは
役目終えたら
消えてゆくけど
線路の歌が
葬送曲と
知る由もなく
滲む群青

(2023年1月11日)



楽しいからか
哀しいからか
おどる理由は
わからないけど
全ての音は
雪が飲み込む
有無を言わせず
静寂が降る

そう長くない
残り時間に
沈黙を抱く
春になみだは
ベタすぎるから

(2023年1月14日)



宙から届く
真夜中の声
触りたくても
触れないから
語幹の熱は
膨らんでゆく
この週末は
大雪らしい
そんな未来を
抱きしめながら
迷路に落ちる
仮定表現

(2023年1月18日)



帰る理由が
わからないまま
ひとりで帰る
長い道のり
たどり着いても
冷え切った部屋
あたたまるまで
時間かかるし
もう眠いから
夢に沈もう
生きているなら
死は必然で
それを帰ると
言うのであれば
いずれは帰る
時が来るけど
そこも冷たい
部屋だとしたら
生死を超えて
夢は醒めない

(2023年1月23日)



夜のヒミツを
見てしまったら
戻れなくなる
舌が背中を
調べる度に
こころの壁は
骨抜きにされ
ぬるりと残る
感覚だけが
現実となる
無数の殻が
敷き詰められた
平野に落ちて
這い出さずには
いられなくなる

(2023年1月24日)



セックスのとき
月をみる癖
見て見ないふり
そうしないと
すり抜けるから
窓を覗けば
ホワイトアウト
吹雪の夜の
きみはやさしい

(2023年1月25日)



別ればなしを
切り出す時は
履いたことない
靴用意して
これからどこへ
向かうにしても
見たことのない
絵を描くために
はじめての靴
履いたふたりが
いつもの場所で
待ち合わせして
春の匂いに
包まれている

(2023年1月27日)



正しい月は
幻想でした
だからぼくらは
巡り逢えない
日が少しずつ
長くなっても
蓋をあけたら
停電の危機
だからぼくらは
声押し殺す
隠しきれない
欲望の画に
繋がったまま
立春は来る

(2023年1月31日)

七ならべ 2023年1月

七ならべ 2023年1月

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-21

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