七ならべ 2023年1月
消え入りそうな
初夢だけど
それを希望と
受け入れるなら
どんな壁さえ
希望といえる
右手に残る
リアリティだけ
色彩を持つ
アンダルシアの
月を飲み込む
起伏のような
やさしい痛み
舐め続けても
いつか交わる
日が来るならば
胸に消せない
星はかがやく
しぶんぎ座って
どんな星座か
わからないまま
宙をながめる
流れる星は
見れなくていい
もうこれ以上
願わなくていい
スマホの中の
文字が踊った
ことば足りずに
窓を裏切る
言いたいことは
すぐ凍るから
信号なんて
待ってられない
誤解はいつも
宵に生まれる
だから
生まれたばかりの月に
理性のかけら
預けておこう
最後の五文字
伝えるまでは
気怠い空が街を覆えば
何を描いても風になるから
壁の記憶を掘り起こしては
恋のかけらを拾い集める
歴史はなにを語っているか
まともに耳を傾けもせず
安い批判で居場所を築く
そんな奴らに椅子はいらない
空に上がれば
月が待ってる
雲のあたまを
白く照らして
距離を隔てた
恋人たちは
月を頼りに
想いを飛ばす
そんな想いが
雲の上では
あちらこちらで
花を咲かせる
夜間飛行は
こころ細くて
花をたよりに
進むしかない
午前零時の
時報の裏で
錆びた線路が
歌い始める
夢はどこまで
続いているか
誰もわからず
軋む枕木
ひとを眠りに
誘うひつじは
役目終えたら
消えてゆくけど
線路の歌が
葬送曲と
知る由もなく
滲む群青
楽しいからか
哀しいからか
おどる理由は
わからないけど
全ての音は
雪が飲み込む
有無を言わせず
静寂が降る
そう長くない
残り時間に
沈黙を抱く
春になみだは
ベタすぎるから
宙から届く
真夜中の声
触りたくても
触れないから
語幹の熱は
膨らんでゆく
この週末は
大雪らしい
そんな未来を
抱きしめながら
迷路に落ちる
仮定表現
帰る理由が
わからないまま
ひとりで帰る
長い道のり
たどり着いても
冷え切った部屋
あたたまるまで
時間かかるし
もう眠いから
夢に沈もう
生きているなら
死は必然で
それを帰ると
言うのであれば
いずれは帰る
時が来るけど
そこも冷たい
部屋だとしたら
生死を超えて
夢は醒めない
夜のヒミツを
見てしまったら
戻れなくなる
舌が背中を
調べる度に
こころの壁は
骨抜きにされ
ぬるりと残る
感覚だけが
現実となる
無数の殻が
敷き詰められた
平野に落ちて
這い出さずには
いられなくなる
セックスのとき
月をみる癖
見て見ないふり
そうしないと
すり抜けるから
窓を覗けば
ホワイトアウト
吹雪の夜の
きみはやさしい
別ればなしを
切り出す時は
履いたことない
靴用意して
これからどこへ
向かうにしても
見たことのない
絵を描くために
はじめての靴
履いたふたりが
いつもの場所で
待ち合わせして
春の匂いに
包まれている
正しい月は
幻想でした
だからぼくらは
巡り逢えない
日が少しずつ
長くなっても
蓋をあけたら
停電の危機
だからぼくらは
声押し殺す
隠しきれない
欲望の画に
繋がったまま
立春は来る
七ならべ 2023年1月