七ならべ 2022年12月

知らない街で
迷うのが好き
影に惹かれる
きみの口癖
背中に虹が
生えるのを見て
取り残された
ぼくの音符は
路地に溶け込む
2022年12月3日

冬、晴れた夜
冷えた空気の
刃先を当てて
凍った星の
ひかり取り出す

閉じたこころも
重なり合えば
少しは
溶けることも
あるから
ことばが探る

星と会話が
できるってこと
きみ以外には
教えたくない
2022年12月5日

駅の魔法に
抗うことを
諦められず
早足になる
アイスティーには
黒いストロー
右手の距離は
いつか哀しい
黒いコートと
オレンジの靴
残像つれて
走り出す窓
2022年12月12日

ひとりの月が
泣いていた街 
季節はずれの
白いあいさつ
空に透かして
会社がえりの
道がふるえる

ちいさい星が
淋しがるので
もう帰ります
2022年12月14日

そちらの雪は
笑ってますか
こちらの雪は
ふて寝してます
そんな文字列
縦に並べて
夜の長さに
際限がない
押しつぶされた
温度を放ち
寝惚けまなこで
飛んで行きたい
2022年12月16日

蜘蛛のかたちで
蜘蛛が死んでた
死んだ身体で
張り付いていた
生死を超えて
残せるものが
今のぼくにも
あるのであれば

青空をみて
泣いたりしない

ふやふやになる
ことばがあれば
べつに生死を
超えなくていい
青空をみて
泣いたっていい
2022年12月18日

夕陽背にして
はしる高速
急いでいても
足取り重く
左手にある
ことばを舐めて
融点を知る
蜜の味なら
独り占めして
2022年12月21日

吹雪の夜は
やかんがうたう
閉ざされた部屋
あたためながら
外の様子は
もう見えなくて
止むことのない
風の泣き声

宇宙の中で
ぼくひとりだけ
生き延びている
そう思えたら
諦めもつく
やかんのうたは
変ロ長調
2022年12月22日

凍えた町に
火が灯ったら
ぼくはサンタに
なれるだろうか
2022年12月24日

結局ぼくは
サンタになれず
海辺の町で
膝を抱える
風は激しく
家を揺らして
現実だけが
光を浴びる
夢から醒めて
崩れた朝に
ひつじは空に
身を任せたい
2022年12月24日

空は遠くて
あやふやだから
きみとぼくには
泣くわけがある
だけどお互い
見ないふりして
素直になれば
漏れていく声
腕に冷たい
音を感じて
涙はいつか
時間を溶かす
交わすことばが
濡れてくるまで
微熱をうつす
日曜の午後
2022年12月25日

枕の上で
描く世界が
同じことばを
繰り返すのは
分け合う術が
他にないから
ルイボスティーが
見ている前で
沈黙の手が
誓いのように
重なってゆく
2022年12月29日

暮れの夕方
絆創膏に
隠された文字
抱きしめている
また来年も
ことばの空に
浮かびたいから
2022年12月31日

七ならべ 2022年12月

七ならべ 2022年12月

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-21

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