「平成三〇年十月二十四日」

 満月の一日前に
 天寿をまっとうしようとがんばった双子の兄へ
 おまえは九年間
 ほんたうに一生懸命生きていた
 生きるために生れてきてくれた私の双子の兄よ
 眠るように
 すや…と月へ昇ったいとしい兄よ
 その小さなからだで
 嫌いなだっこも最後には三回ゆるしてくれたね
 大嫌いな病院じゃなくって
 しかたのない妹に撫でられながら
 大好きなお家の中で
 ゆっくり
 ゆっくりやすめて真によかったね
 双子の兄さん
 私の魂の片割れ
 あなたが満月の一歩手前なら
 あなたはもう満月のもとにしかいかないんだよ
 君が満月なら
 私は新月となって君に会いにゆこう
 私はしがない唄うたい
 まさかこんな近くいつも近くに
 詩じんが居たとは思わなんだよ
 どおりで人間には理解されない唄だ
 私の唄は君に捧げよう
 むちゃくちゃな唄でも君にあげよう
 私が生きているよと君に伝わるように
 君は話し言葉より無言のつぶやきや無言の会話の方が伝わりやすいと思うから
 私は唄っていよう
 泣きながらでも
 血を流しても
 君の月へと届けよう
 万感の花束はりんごの花で
 私は今日の澄みわたった月と空を忘れない
 雲一つ無い
 澄みきった清らかな晴やかなやさしい君の心になったみ空を
 ご覧 お月さまの光の筋が
 花のように開いて此方を照らしてくれている


大好きな愛兎ポポちゃんへ、ありがとう―

新月記す。

「平成三〇年十月二十四日」

「平成三〇年十月二十四日」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-21

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