われは桜の精なりと /新作短歌

おぼろ月夜の桜下に立ち現れし一人の乙女あり
眉目秀麗にて髪背丈ともに長く 身に一重の薄衣を纏いたり
人影もなきこの夜更けにと怪しみ 何処の者と問わば応えず
幻のごとく失せにけり はて彼ものとは


 

悲しむな 花は散れども我ここに 緑の衣に変われどなお・・・

きみ何故に 華やぐ春を楽しまで
 われの裳裾に依りて涙す

おぼろ夜の夢かそれとも幻か
 麗しき乙女 出て問いたり


春風に身を任せて散る我なれど
 一夜の逢瀬を夢と思えば

我は人 花のごとくに年ごとに
 春は巡れど老い行くこの身は


辛き世に 今宵一夜の桜下の夢を
 きみに届けん酔いて眠れや

夢は夢 消えて哀しき朝露の
 嘆きの明日を如何にせんとや


人の世も 昨日の夢とかわらぬものを
 知れば心の傷も消えなん

心に重き 消えぬ夢をば抱いてこそ
 生きる辛さを身に沁みて知る


おお君よ その身はいつか朽ち逝くを
  知らぬわけではあるまいに

身を変えて 世も変えてなお移りゆく
  心の旅路は果てしなきもの


我は凡人 世尊のごとく悟るは難し
  日々の暮らしに追われる身なれば


美しき乙女はやがて立ち消えぬ
  散りゆく花の涙残して


春の夜の夢を包みし朧月
  汝も花の散るを惜しむや


☆今年も桜の開花の早いこと、夏の暑さが
おもいやられますね。よいお花見を。(いずみ)
 



 
 
 



 

われは桜の精なりと /新作短歌

われは桜の精なりと /新作短歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-19

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