[400字小説/13]

──午前6時58分。
目が覚め、携帯画面を見て驚いた。どうやらわたしは、あのまま寝落ちてしまったらしい。乱れたシーツと床に散らばった二人分の服が、昨夜、自分の身に何が起こったかを教えてくれた。

そっとベッドを抜け出し、自分の服を拾い集める。何故か最初に脱ぎ捨てたであろう上着が足元にあり、最後に脱ぎ捨てたはずの下着が、ドアの真下に落ちていた。
「……っっ」
自分がとった行動を思い出すと顔が熱くなる。何故、それがそこにあるのかも思い出した。勝手知ったる自分の家とはいかない他人の家。トイレと洗面所だけを借りて、彼がいるベッドへ舞い戻る。
「やっちゃったなあ」
彼とわたしは許嫁の間柄だから、誰もわたしと彼の行動を咎めない。生まれる前から許嫁である不条理さに憤っていたのに、初めて顔を合わせたその日に、なんてどうかしている。

ベッドに舞い戻り、彼の背中に顔をうずめると、何故か懐かしいにおいがした。

2023/03/18

毎日19時にお題が出題されるスマホアプリ『書く習慣』で『不条理』をお題に書いた散文を400字小説(ショートショート)にまとめました。

初めて会った許嫁と迎えた朝

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-19

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