18歳

[400字小説/12]

卒業証書の入った筒を大切そうに抱えた少女を見掛け、そういえばもうそんな時期なんだなと、まるで他人事のように思う。いや、他人事のようじゃなくて他人事そのものか。最終学歴である高校を卒業してから、かなりの時が経過しているから。

高校時代、遅刻ギリギリで自転車を走らせた通学路。徒歩通学らしい彼女は時折、何かを懐かしむかのように空を見上げている。三寒四温の寒い日に当たってしまった今日。おそらくは溜め息をついたのだろう。彼女の口から白い息が立ち昇った。
この時期に思い出すのは自分の卒業式じゃなく、大好きだった先輩の卒業式だ。自分の時より、先輩の時のほうが悲しかった。都会に行ってしまう先輩には、もう会えない。そんな気がして、でも必死で涙をこらえて笑ったっけ。

トボトボと歩いていた彼女は不意に、真上を見やった。きゅっと唇を噛み締めて。そんな彼女は、まるで「泣かないよ」とでも言っているかのようだった。

18歳

2023/03/18

こちらのお話は上限400字のショートショート投稿サイト『ショートショートガーデン』他へも投稿しています。書く習慣アプリから出題された『泣かないよ』をお題に書き下ろさせて頂きました。

18歳

彼女はそっと空を見上げた

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-18

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