コトワリⅦ

これちかうじょう

杵柄元就と上智比呂

「申し訳ありません」
「ごめんなさい」
何があったんだろうと僕は思った。
鍵を開けて、入ったらもうそこは、ズタボロの世界だった。
「杵柄が悪いんです、僕が言うことを理解しないから!」
「で、でも俺はちゃんと理解しようとした!でも上智がほいほい机も椅子も投げてくるから!」
「確かに杵柄は反撃しませんでしたが、でも悪いのは僕じゃありませんから!」
「だって人を傷つけるのは最低のことだから!」
まあいいよと僕は二人をなだめた。
杵柄は反撃しなかったのは分かる。
上智が全部こうしたんだろう。
でもさすがに、ひどいなと僕は苦笑した。
「僕たちがいなくなってから、話をしたんだよな?
 それで、どうすれば、どういう話をすればこんな状況になるんだろうか」
「で、ですから杵柄が全面的に悪いんです!僕の言葉を理解しないんです!
 このくそ鈍感めが!」
「俺のどこが鈍感なんだよ!俺は神経質で通ってるんだぞ!」
「そのどこが神経質だと言うんだ!?僕が何度言っても理解しないじゃないか!」
「だから俺にも分かるように言ってくれたら理解できるって!」
「…なあ上智、杵柄に何と言ったんだ」
「会長命令ですか」
「ああそうだ」
「…僕の心はもうお前のものだと、そう言ったんです」
「…で?杵柄はどうそれを解釈したんだ?」
「心っていうのはものじゃないと思いました」
はあ、と僕は頭を抱えた。
「上智、猪瀬は?」
「部長は用事があるからと文房具屋に行きました。
 その後合流するからとのことです」
「頼みのつてがこれじゃなあ…」
「会長、会長は分かりますよね?僕が言っている意味が!」
「分かるよ、ものすごく分かるよ。でも言い方が杵柄にはまだ難しすぎる」
「何故ですか!?僕は至極簡単なことを言っているのですよ!?」
「上智、お前は前に杵柄に殴られたことがあったよな。
 それに耐えられるか?
 こいつが本気を出すと、脱臼するけど」
「…は?」
「杵柄、お前は上智に何を求めたんだ」
ああ、と杵柄が向き直る。
「お友達からお願いします、と前に言ったので、その返事を待っているところです」
「…上智、分かるか?」
「いえ、意味が分かりません、僕は友達じゃなく、付き合いたいと言っているんですから」
「…杵柄、分かるか?」
「いえ、意味が分かりません、俺はお友達からお願いしますという言葉の返事を待っているんです」
ああもう、と僕は机に頭をぶつけた。
「ぶ、部長!お怪我なさりますから!」
「杵柄、お前は上智が好きなんだよな?」
「はい、そうです」
「上智はそれと同じことをお前に言っているんだよ、
 杵柄が好きだと言っているんだ、
 それでも理解できないのか?」
「いや、だから、俺はお友達からお願いしますという言葉の返事を待っているのであって」
駄目だ、僕じゃ駄目だ。
頼みの猪瀬がいれば、何とかなるのに。
「猪瀬は何時に戻ると?」
「もうじきです、購買部の文房具屋なので、もうじき来られます」
「じゃあそれを待とう。その前にこの惨状を猪瀬に見せるのは酷だから、
 今から掃除だ。
 杵柄は机と椅子、上智は散乱した書類をまとめるんだ。
 僕は壊れたものを直すから…」
「申し訳ありません部長、あまりにも上智が暴れるので…」
「誰のせいだよ」
「最初は上履きだったんですが、鞄、椅子、机となって、
 …結果こんな状態です」
「馬鹿者」
いいから早く掃除を、と3人で掃除をした。
そして綺麗になったところで救いの神、猪瀬が戻った。
「悪い、遅くなった」
「…猪瀬、もう僕はどうしたらいいのか分からない、
 お前は上智の先輩だろう、上智を何とか説得してくれ」
「どうしたんだよ?上智、何だか疲れてるけど?」
「部長…部長は天野先輩にはどう言ってるんですか、
 好きだという気持ちをどう伝えているんですか…」
え、と猪瀬がひきつる。
「な、何で急にそんなこと、…上智、熱でもあんの?」
「どう僕が表現しても理解してくれないんです…何故ですか、
 部長はどう言ってるんですか、どうすれば天野先輩は理解するんですか…」
「え、あー、うーん、俺達が交換日記をしてるってのは知ってるよな?
 そのさ、そのノートがなくなっちゃったから買いに行ってたんだけど、
 まあ、内容としては、ただ、好きだーとか、
 逢いたいなーとか、勉強頑張ってねーとか、
 そういうことを書いてるだけ、なんだけど?」
「それで天野先輩はどう返して来るんですか…」
「嬉しいなとか、僕も好きだよとか、大地に逢いたいなとか、
 そういう言葉をしれっと書いてくるだけ、なんだけど?」
そうだ!と上智が鞄をごそごそと漁り始めた。
「…なあ橘、どしたんよ」
「杵柄が鈍感すぎるだけだ」
「まあ、それは俺も薄々感じてはいたけどな」
あった!と上智がピンク色のノートを出した。
「まだ使ってないノートだ、母さんが僕にと買っておいてくれて助かった、
 僕が一番嫌いな色のノートだからな、使うこともないと思っていたが、
 まさにこの時のためにあったようなものだ」
「上智、何するんだ?」
「僕と杵柄も交換日記をします」
えー!と猪瀬が驚く。
「だって部長は交換日記で天野先輩をものにしたんですからね、
 僕はこれで杵柄を落とします」
「あの、上智?お前、何かはき違えてない?」
「おい杵柄」
上智がつかつかと歩いていって、杵柄の目の前にピンク色のノートを差し出す。
「何これ」
「僕と交換日記をするんだ、今日から」
「は?…あ、またお前、俺を女子だと言うんだろ!交換日記ってもんはな、
 小学生レベルの、しかも女子がやることだろ!
 何でそれを俺にやれと言うんだ!」
あ、猪瀬が灰になった…。
「お前から書いてこい、明日僕に提出すること。それで僕がそれに対して返事をする。
 次の日にお前に返す。そういうやり取りをして、僕は絶対にお前を落としてみせる」
「俺は女子じゃない!男だって!女子のやることを俺に求めるなよ!」
あ、猪瀬が消えた…。
「まあいいじゃないか、人それぞれだよ、杵柄、いい機会だ、
 上智に伝えたいことを書いてみればいい。
 それに対して上智が答えてくれると言ってるんだ、
 だからやってみたらいい」
「ぶ、部長がそうおっしゃるのなら…仕方ありません、やります」
「じゃあもうこの件はこれで終わりだ。
 冬休み後の試験の話を今日の議題にする。
 まずはその告知をしなければならないから、
 この紙を掲示板に貼るんだけど」
「俺が行ってきます!部長はここで草案の決済をしててください!」
「じゃあ杵柄に頼もうか。上智はそのうっすらになった猪瀬を現世に引き戻せ、
 草案作りをしてもらわないと困る」
「分かりました」
では!と杵柄がウキウキと出て行く。
「部長、部長、死なないでください!
 部長に死なれたら僕は生きていけません!」
「…うう…小学生の女子レベル…はは…」
杵柄、言葉を考えろよ…。
人を傷つけないっていうのは分かるけど、言葉は時として手よりも武器になるんだよ…。
それも僕が教えないと駄目なのか?

僕は部屋に戻ってこんこんこんとノックをしてみた。
12月22日。
冬至の誕生日だなと思った。
今頃藤原家ではパーティーでもやってるに違いない。
こんこんこん、とノックがされるので、僕は立ち上がろうとしたんだけど、
その前に袂が開けてしまうので(鍵師です)、
ああもうとまた頭を抱えた。
「そうたろう、お疲れさまでした」
「ああうん…」
「どうしたの?今日は疲れたの?」
「うん、後輩のことでね。つくづく不器用で困るよ。
 杵柄が不器用というか鈍感すぎて、それに上智がぶち切れて、
 猪瀬が死にそうになって」
「ふうん」
あ、まただと僕は思った。
袂はどうやら、僕の膝の上が気に入ったみたいなのだ。
入ってくるとすぐに僕の膝の上に座るようになった。
「でも、そうたろう、笑うようになった」
「うん、そうだね、泣いてる暇がない」
「嬉しいな、あ、ねえ、しゅぱしゅぱは?」
「あるけど、袂がここに座っちゃうと僕が取りに行けないんだよ」
「ごめんなさーい」
「じゃあちょっとだけ待って」
ああそれと業者には発注したからねと付け足す。
「これで明日には売り切れもなくなるよ、みんなが買えるようになる。
 袂だけじゃなくて、みんなも飲める」
「そっかあ」
「じゃあほら、はい」
「…」
「ああ、開けるんだっけ。ちょっと待って」
開けてからまた僕は座るんだけど、また袂が膝の上に乗ってくるので動けないなと苦笑した。
「袂、冬休みがもうすぐ来るよ。それとね、袂に渡したいものがあるんだけど」
「なあに?」
「うん、これ」
僕はそれを引き寄せた。
「これなあに?」
「ドリル」
「ドリル?」
「そう、これをね、袂にって冬至が買ってきてくれたんだ。
 ほら、ここに小学1年生って書いてあるでしょ」
「うん」
「だからこれをやってみて。それで、メロンソーダを飲みに来た時に見せて。
 僕がまるつけをしてあげる」
「え」
「全部合ってたらはなまるをあげる、間違ってるところがあったらばってんをつけてあげる」
「…はなまる…」
「そうだよ、だからちゃんと考えて答えを書くんだよ。
 はなまるが欲しかったら、問題文をよく読んで、それで、」
「…総太朗、俺の書いた読書感想文出して、今すぐ出して」
「…袂?」
「今すぐ出して、今なら書ける、すぐに書く、だからボールペンも一緒に貸して」
「…」
あれだ、と僕は思った。
だからなるべく急いで鍵を開けた。
原稿用紙。
全部で、37枚。
それからボールペンを取って、袂の前に出す。
「…袂、なの?」
「話しかけないで、気が散る」
「…うん」
時々、だった。
時々、袂が、17歳のあの袂に戻る時があることを、僕は知った。
そして、その戻る時間もだんだん長くなっていくのも分かった。
前は一分ほどだった、でも今はもう、五分もあの頃の袂だ。
「…この後だ、ここで俺はこう書こうとしてた、
 でも心臓が止まりかけて、そんで、」
「…」
僕はそれを見ていた。
「…んー?あれ、俺、どうしたのかな?しゅぱしゅぱ飲もうっと」
「…戻った」
また袂に戻った。
1年生の袂だ。
でも時間にして5分は、袂は17歳になった。
それがいつ出るのかを僕は知れない。
きっかけさえ、つかめない。

杵柄元就の番

本日は12月22日です。
冬至の日なので、母さんが柚湯を作ってくれました。
ただ思うのですが、うちの浴槽は小さいと思います。
でも柚がぷかぷか浮かんでいるのは実に面白いと思います。
それに匂いがいいです。
なので、1つだけ拝借して部屋に置いてみました。
レイ、ユウマ、見てくれてるかな?
これが柚だよ。
冬至の日には柚湯に浸かるんだ。
それに今日は一番、夜が長い日です。
部長はまだ悪夢を見るのでしょうか。
俺も夢を見てみたいです。
夢って言うのは何なのでしょうか。
掲示板に貼物をしてきました。
もう女子は怖くないです。
むしろ、話しかけると向こうが喜んでくれます。
びっくりです。
今日は総合女子部の陸上部の金森先輩にお逢いしました。
金森先輩はハードラーなので、障害走のスペシャリストです、
いつも監査の時に見ていたので、話しかけてみました。
すると、金森先輩が俺をかっこいいと言ってくれました。
褒められると嬉しいものです。
声がいいとも言われました。
俺が生徒会長になれば、特例で放送部はなくなりません。
だから俺は頑張ります。
部長と二人で放送部を頑張っていくことが、
今の最高の倖せです。
一ノ瀬先輩はもうじき気づくでしょうね。
高瀬先輩はきっと気づかないでしょうけど、
部長は気づくでしょうか?
とても楽しい1日でした。
明日もいいことがあるといいなと思います。

杵柄元就

上智比呂の番

何だかお前の文章は夏休みの絵日記を見ているようで滑稽だ。
一ノ瀬先輩が何に気づくんだ?
それから柚湯は僕も浸かったぞ。
冬至の日はそういうものだ。
それと、むやみに女子に話しかけるな。
お前がどんな奴だかばれてしまうぞ。
…とは書いたものの、
これは単なる嫉妬だ。
金森先輩というのはハードラー?
それはあれか、ハードルを跳ぶ選手ってことか。
僕は文化部担当だからあまり陸上部の人のことを知らないんだ。
それでだな、
お前は何か僕に聞きたいことはないか?
何でも聞いてくれ。

上智比呂

杵柄元就の番⓶

交換日記というものは1日ごとに交換すると町田に聞きました。
クラスに戻ったら、すごい拍手でもって迎えられたので、
俺はもう驚きの連続です。
今江が俺をばしばし叩いてくるので、
ああまたかと俺はその肘の傷を消毒し、
大判の絆創膏を貼ってあげました。
でもおかしいと思います。
町田は、交換日記は1日ごとに渡し合うと言うのです。
でも俺が書き終えて持って行くと、
何故かすぐに上智が突っ返して来るので、
これでは交換日記にならないと思うのですがいかがでしょうか。
1日に1度交換しあうのがセオリーだぞと町田が言います。
でも何故、1日のうちにこうも何度も書かなくてはいけないのでしょうか。
それから、今日は生徒会がないので放送部に行きますが、
高瀬先輩が今とてもくまモードなので、
俺達は原稿室に逃げ込んでいます。
あれで本当に日本一のアナウンサーになれるのでしょうか?
どんなに冷酷なニュースでも、読まなくてはいけないのがアナウンサーです。
あんな顔つきで読めるのかなと、俺はそれだけが心配です。
上智に聞きたいことはあります。
返事です。
お友達になってくださいという俺のお願いの返事は、
いつくれるのでしょうか。

杵柄元就

橘総太朗の疑問

「では部長、少々書道部に行ってまいります」
「何で」
「ですから、このノートを上智に渡すためです。
 でもどうして俺はこんなことをしないといけないのですか?
 これも課題ですか?
 生徒会長になるためには乗り越えるべき大きな壁なのですか?」
「…ああそうだね、そうだろうね。
 行ってきなさい、上智に渡して、それで戻ってきたら発声練習するから」
「はい、行ってきます」
交換日記って、普通、1日にそう何度も何度も交換するんだっけ?
猪瀬と天野は1日に1回、ノートを交換していただけだ。
でも見ていれば、杵柄と上智は1日に何回もそのやり取りをしている。
まるで伝言ゲームみたいだと僕は笑った。


「戻りました」
「上智はどうしてた?」
「猪瀬先輩に殴られてました」
「あはは、猪瀬は容赦ないから…まあ、非力だから上智も痛くはないだろうけど」
「でですね」
「ん?」
「また、これを返されました」
「…上智がそこで待ってろと言って、それを待って、
 それで返事を貰って来たわけだな?」
「よく分かりましたね!さすが部長です!」
…何だか頭が痛いな、いや、頭痛じゃなくて、もっと違う意味で、なんだけど。
「じゃあ発声練習を、」
「あ、部長、その前にこれを書かないといけないので」
「…分かった、お前には大事なことだから、待ってるよ」
「助かります」

上智比呂の番⓶

だから何で友達なんだよ?
僕が言っているのはそれ以上の関係だって。
お前は僕を何だと思ってるんだ?
僕は友達以上の気持ちをお前に伝えたいのに、
何故理解しないんだ?
いい加減気が付けよ、
僕だって大嫌いなピンク色のノートなんだぞ、
こんなの持ってるのを見られてもみろ、
女子だと勘違いされるだろうが!
でもクラスメイトはお前をよく理解してくれているようだな。
もう会長もそうは1年7組をどうこうしないだろう。
ただ、始業式の日のようなことがあったら、
今度は僕が何とかしてやる。
絶対に僕がお前を守ってやる。
だから安心して、お前は会長になるんだ。
分かったか。

上智比呂

杵柄元就の番③

あの、意味がよく分かりません。
守るというのは、男性が女性をという意味合いで使うと思うのですが。
ああでも、先輩は部長をお守りするためにいるのですから、
一概にそうは言えませんね。
ただ、俺も放送部の部員なので、
発声練習をしなければなりません。
だからもう突っ返さないで頂きたいのですが?
部長は寛容な方なので待っていてくれますが、
本来ならば雷が落ちるところです。
前の部長だったら間違いなく、
俺はグラウンドを3周走らされていたでしょう。
どうか分かって下さい。
ああ、もう一度聞きます。
お友達になってもらえますか?

杵柄元就

橘総太朗の疑問⓶

「部長、書道部まで行ってまいります」
「…あのさ、もう今日はやめた方がいい。
 また同じことになる。
 待ってろと言われて、お前は待つだろう。
 上智は答えを書いて、渡して来るはずだ。
 それをお前はここに持ち帰って来て返事を書くだろう。
 それじゃあ部活に支障が出るんだよ。
 お前は唯一の僕の後輩なんだ、
 発声練習をしないと。
 それから原稿を書くのだって教えたいし、
 式典の司会の仕方だってもう教えておかないといけないんだ。
 だから今日は終わりだ、
 続きはまた明日にしてくれ」
「…しかし部長、これは課題なんですよね?
 俺は課題はやるべきだと思うんです。
 きちんと取り組むことが、生徒会長への道です。
 …でもさすがに俺も疲れました。
 上智が意味不明なことばかり書くから、
 返事をするのに困惑します」
「じゃあ持ち帰って家で続きを書いてくるんだ。
 お前が持ち帰れば上智だって恥ずかしくないだろう。
 ピンク色のノートを持ち歩く男子高校生って、
 まあ、変だけどな」
「じゃあそうさせてもらいます。
 俺もさすがに書道部までこうも何度も往復するのは嫌です。
 いくら俺でも疲れます」
「じゃあ発声練習からだ、ほら、お前の好きな空を見ながら、
 腹式呼吸をする。
 いいか」
「はい」
しかしなあと僕は杵柄のその声を聞いている。
いい声だ。
高瀬もいい声だった、それに一ノ瀬はウグイス嬢として出張するくらいだ。
僕の声もみんなはいいと言うけれど、
杵柄の声も味がある。
そうだ、今度から校内放送を杵柄に任せてみよう。
多分こいつのことだ、
原稿書きのことだってもう理解しているだろう。
僕が原稿室で書いている姿を見ていたはずだし、
それ以上に成長が早いんだ。
だからこの放送部も、引継ぎなど必要ない。
ただちょっと、やり方を教えれば杵柄は何だって器用にこなせるはずだから。

「原稿書きですか」
「うん、僕があそこで書いているのをよく見ていただろう」
「ええ、掃除もしていましたから、原稿は大体は分かります」
「そうだった。すごく綺麗に整頓されているから、
 見やすくて助かる」
「ああでも時々、誤字脱字がありました。
 あの字は高瀬先輩の字ですから、
 指摘はしませんでしたが、
 だから左から二番目のところは少々、厄介です」
「原稿、読んでたのか?」
「はい、掃除は慣れていますので、掃除しながら原稿は全て読みました。
 だから書き方も書式も把握してます。
 でもあの左から二番目のところの原稿だけは、
 厄介ですから気を付けてください」
「…」
なんて器用なんだろう。
すごい。
掃除をしながら全ての原稿を読んでいたというのか。
「ああそれと、あれは部長の字だったのですが」
「あ、ああ、汚い字だよな」
「いえ、そうではなく、もっとこうしたらいいんじゃないかなあと思う場所があって、
 ちょっと持ってきますね」
「…」
杵柄が原稿を一部持ってきた。
「ここです、この始まり方です。
 最初に司会は放送部部長の橘総太朗が務めさせて頂きます、
 とありますが、
 ここをもうちょっと変えた方がいいと思いました。
 それからですね、あちらの原稿なのですが、」
「ちょ、ちょっと待って、全部の原稿を丸暗記でもしてるのか」
「え?ああ、はい、そうですけど?」
「…待ってくれるか、お前は初めての生徒監査でもすぐに名前と顔を一致させたし、
 ここにしまってある原稿の全てを把握してる、
 ほ、宝物室の原稿はどうなんだ、そっちは覚えてるのか?」
「ええ、全部頭に入ってます。
 ただ難解な原稿がありましてね、それだけはよそに移してあります。
 昔の原稿なので、恐らく一ノ瀬先輩の原稿でしょう。
 校内放送の原稿なのですが、あれはですね、」
もういい、と僕は話を遮った。
もう駄目だ、こいつは器用で、記憶力も抜群で、
それにきっと成績だっていいはずだ。
だから中学を殆ど行かなかったのに青陵の総合進学部に特別推薦で入ってきたんだ。
それだけの資質がありながら、自分に自覚がない。
「…あの、部長?俺、何か変なことでも言いましたか?」
「僕は藤堂に結構長い時間、引継ぎを受けたんだ、
 でも杵柄にはそれが必要なかった、
 僕が書いた仕事の指示書をただ読んだだけで引継ぎすら必要なかったんだ、
 それに放送部のことだって原稿を丸暗記できて、
 駄目なところも指摘できる、
 つまりは、お前はものすごく、仕事ができるということなんだ。
 ただ、壊滅的に鈍感すぎる…
 上智にそれを矯正してもらうことが、いや違うな、
 上智も同じなんだろう、
 猪瀬に頼る」
「あの、部長?」
杵柄、と僕は見上げた。
「会長命令だ、もうお前には命令はしたくなかったけれど、
 仕方がない。
 生徒会がある日は僕じゃなく、猪瀬に仕事を教われ。
 ない日は袂と話すんだ。
 分かるか?」
「…何故副会長の猪瀬先輩に教えを乞うのですか」
「僕が教えることがもうないんだよ、
 猪瀬に教わるんだ。
 上智はもう引継ぎを終えてる、
 だからお前は猪瀬にこれからいろいろと学ぶんだ。
 猪瀬は経験者だ、中等部から生徒会をやってきた人間だから、
 お前が欲しい答えをくれる。
 分かったら返事」
「はい、分かりました!」
「じゃあもう帰ろう…上智を家に送っていくんだろう?
 書道部ももう終える頃だろうから、
 迎えに行ってやれ」
「はい!ではお先に失礼いたします」
なんでなんだろうなあ、と僕はその大きな背中を見つめる。
「何で理解できないんだろう…上智ははっきり好きだと言っているのに、
 でもどうして杵柄は理解できないんだろう?
 ここまで仕事に完璧で、忠実で、
 先輩に対しても敬う気持ちだってある、
 それなのにどうして上智の言うことだけをどうして理解できないんだ?
 猪瀬の言ってることは理解してる、
 僕の言ってることも、
 …袂なら分かるのかな」

柳瀬橋袂の理

「ねえ袂、ドリル、やってみた?」
ノックをするとノックをして鍵を開ける前に袂は入ってきてしまう。
その手にはあのドリルがある。
「うん、やってみた」
「じゃあまるつけの時間だよ」
「んー」
「どうしたの、間違えたとか思ってるの?」
「ううん、あのね、…そうたろう、これ、違うよ」
「え?」
袂はドリルをぱらぱらとさせる。
「俺、これじゃない。俺がやってたのは違うドリルだよ」
「どういうドリルなの」
「んーと、あ、あれだよ、あれ!」
「え?物理?」
「あとあれもだよ、俺、こんなの簡単だもん、
 だって掛け算から始めたんだから、
 その前の勉強なんかしたくないよ」
知識は抜けてないのか。
僕は僕がかつてやっていたドリルを出してみた。
「こういうの?」
「そうだよ、これこれ。だからふじわらに言っておいてよ、
 俺はこんな低レベルじゃないよって」
「でも時計も読めないでしょ、数字だってできないじゃない」
「でも違うから違うの!前の続きをしたいから、そっちにしてって言って」
「…分かった。でも今日はいいの?メロンソーダ飲まないの?」
「…」
「業者がちゃんと入れて行ったよ。
 だからもう売り切れじゃない」
「ねえそうたろう、俺って、…俺って馬鹿なの?」
びっくりした。
「な、何でそう思うの」
「泉が、100点をまた取ったよ。
 はなまるをせんせいにもらった。
 でも俺ははなまるじゃなかったよ。
 俺は馬鹿なのかなあ?
 泉は勉強が嫌いだって言ってるのに、テストはいつも満点だ。
 嘘つきだ」
「…勉強はね、できても、嫌いだって思う人はいるんだよ。
 僕だって最初は嫌いだったんだ。
 でもお父さんがドリルを買ってきてくれて、
 駄目なところを教えてくれた。
 でも僕は今勉強はできるけど、そんなに好きじゃない。
 その子と一緒だ」
「そうなの?」
「うん。僕はただ教わって、できるようになって、
 それが当たり前だったから、好きだとも嫌いだとも思わない。
 だから前に、好きな教科は何かって聞かれたけど、
 どれも好きじゃないから、何もないって答えた」
「そうなんだ」
じゃあいいやと袂がまた僕の膝の上に座る。
「ねえ袂、聞きたいことがあるんだ」
「なあに」
「杵柄のことなんだけどね、あいつ、生徒会長の仕事を僕が教えなくても理解したんだ。
 それだけじゃない、天野が残していった猪瀬のための副会長の仕事内容も把握してる。
 放送部のことだって、部長の僕より原稿を全部丸暗記するほどなんだ。
 きっと頭がいいんだ。
 器用すぎる。
 猪瀬の言うことも分かる、僕の言うことも分かる、
 なのに上智の言ってることだけを理解できないんだ。
 おかしくない?
 何も教えてないのに全部分かってる、それなのに、上智の事だけ、
 どうしても理解しないんだ。
 どうしてなのか分からない」
僕は袂の頭に顔をうずめた。
「もとなりはなんて言ってるの」
「何で上智は理解しないんだって、それだけ」
「じょうちは」
「何で杵柄は理解しないんだって、同じことを言う」
「あのね、俺が思うに、それって泉と同じなんだと思うの」
「え?」
小学一年生と同じ?
「もとなりが欲しいって思ってる言葉を、じょうちが言わないから、
 だからもとなりは分からないんだよ。
 もとなりは言ってたよ、権力も愛情も恋情も要らないって。
 欲しいのは理解してくれる人なんだって。
 もとなりはじょうちに言って欲しい言葉があるんだよ。
 それを言ってくれないから、先に進めないんだ。
 分かる?」
「…杵柄が、言って欲しい、言葉」
「きっともとなりはずーっと待ってるはずだよ、
 じょうちが気づくまで待ってるはずだよ。
 だからそうたろうがすることは、
 すべきことは、
 もとなりを理解することなんだ。
 何に苦しんで、何に悩んで、何を欲しがっているのかを、
 そうたろうが理解してあげることが、
 たいせつなんだよ」
うんと僕は頷いた。
いい匂いがする。
袂の頭の匂いがする。
寮の部屋のお風呂に入ってるんだから、
使っているシャンプーとかは一緒のはずだ。
でもどうしてか、すごくいい匂いがする。
「だからそうたろうは偉いんだよ、
 みんなを分かろうと頑張るからだ。
 もとなりはもう分かってるよ、
 ただ欲しい言葉を待ってるだけなんだ。
 もとなりはそうたろうが好きなんだ、
 そうたろうが前に言ったことを覚えてるはずだよ。
 それと同じことをじょうちが言えたら、
 きっともとなりはもっとすごい人になるよ」
「うん…」
できればずっとこうしていたい。
袂がずっと膝の上にいてくれればいい。
でも袂はやりたいことがあって、それで戻って来ただけだ。
きっとそれをやり終えたら、天国に帰ってしまう。
それに、と僕は引き出しを見る。
あの原稿を出してと言ったあの声は、前の袂だった。
何かを書くんだという様子だった。
もしかして、それが袂のしたいことなんだろうか。
やり残したことなんだろうか。
でもいつ出るか分からない17歳の袂を、僕は直視できない。
思い出して、泣きそうになってしまう。
ごめんと言ってしまう。
きっと袂は怒るだろう。
だから僕は何も言わない。言えない。
でも、この時は長くは続かない。
時間は無情にも、流れていくのだから。
いつか袂は帰る。
居るべき場所に帰る。
だからそれまでは、たくさん、話をしようと思った。
満足するまでとことん付き合おう。
そういうことも、僕は愛情だと思うんだよ袂。
愛してるから、僕が君を守る。
君が帰るその時まで、僕が守るから。
だから今だけは、抱っこさせててね。

上智比呂の番③

何でお前が部長の横に陣取ってるんだよ。
しかもまた僕を送っていくし、
今朝も迎えに来たな。
知ってるんだぞ、お前はどうしてそう遠回りをしてまで、
僕を送り迎えするんだ?
実に不可解だ。


上智比呂

杵柄元就の番④

部長の命令なんだから仕方がありません。
猪瀬先輩に教えてもらえと言われたから、
だからここに座っているだけです。
でもどうして文字にする必要があるのですか?
こんなに近くに座っているのに、
普通に話をすればいいだけだと思うのですが?


杵柄元就

キレる猪瀬大地

「橘!何だよこれ!上智と杵柄は何してるんだよ!
 さっきから俺の前をピンクのノートが行ったり来たり!
 交換日記じゃねえよ、これはただの筆談だろう!?」
「悪いけどそれがふたりの交換日記なんだよ、それと猪瀬、
 今日から杵柄の面倒を見て欲しいんだ。
 もう僕が教えることはないから、
 だからお願い」
「…お前が教えることがないってことは引継ぎは終わってるてことだろ!
 俺だって上智にはもう終わった。
 これ以上杵柄に何を俺が教えるの!」
「交換日記の極意?」
「は?はー?」
とりあえずだなと俺はさっきから目の前を行ったり来たりしているノートを避けながら、
杵柄に向き直った。
「なあ、お前は何が欲しいんだ?何がいいんだ?」
「何ですかやぶからぼうに」
「お前はもう立派に生徒会長になれるよ!上智も副会長合格!
 でも橘がまだそれを許せないのはさ、
 お前にちょっと問題があるからなんだよ。
 それを正せってんだろ。
 杵柄、お前ができる生徒会の仕事を羅列してみ」
「ええと、草案作りと草案の読み込み、決済印の押し方と、決済印の保持、
 それから生徒監査に部活の監査、部費申請日の応対方法、
 あああと金庫の開け閉めとマスターキーの取り扱いです」
「おいおい、上智の仕事も入ってるぞそれ」
「ですから、勉強したんですからできて当たり前です。
 でも運動部管轄なのは俺なので、文化部に対してはあまり知ることがありません」
「そりゃあ、文化部は上智に叩き込んだからな。
 でもさ、それ!交換日記の意味分かってる!?
 さっきから人の目の前をさっさかさっさか手渡しして!
 1日かけて相手に伝えたいことを書くのが交換日記だろ!
 何で5分間隔で渡し合ってんの!」
「猪瀬先輩、違いますよ?5分じゃないです、3分と42秒ですよ?」
「ああもういい!やめろ!上智はペンを置け!
 お前は字が下手なんだから練習を先にしろっての!
 それから杵柄!お前はこの不毛なやり取りをどう思うんだよ!
 何でやめないんだ?上智が好きだからだろ!
 上智とこうやって交換日記することが嬉しいはずだ!
 違うか!?」
俺は真咲と交換日記をやれて嬉しい。
今日は何を書いてくれたかなと次の日に見るのが楽しみだからだ。
でもこいつらのやってるのは交換日記じゃない。
単なる筆談だ。
「嬉しくないですよ、すげえ面倒ですもん」
「じゃ、じゃあ何で応じてるんだよ」
「だって上智が言い出したことですから、だから付き合ってるだけです」
「だからその意図は何!」
「意図ですか?そうですね、考えてもなかったですね…
 まあ、強いて言えば、喧嘩、でしょうか」
「け、喧嘩!?」
「だって上智は俺のこと全然分かってくれません、
 先輩は分かってくれるのに、どうしてですか?
 部長もあまり分かってくれませんけど」
「先輩って誰だよ」
「先輩は先輩ですよ」
「俺?」
「違います、先輩です」
だあー!
俺は叫んだ。
「じゃあもういい、率直に聞くわ。お前は上智に何て言ってもらいたいんだ!?
 上智はお前を好きだと言ってる、
 言ったそうじゃないか、僕の心はもうお前のものだ、
 そう言ったって!」
「ですから、返事ですよ返事。俺はそれを待ってるだけです」
「返事って?」
「お友達からお願いしますっていうお願いの返事ですよ。
 でもこいつ、一向にその返事をくれないから、
 だからこうしてるんじゃないですか」
「…おい上智」
俺は上智に向き直る。
「お前、何でそれが分からないの?杵柄が待ってるのはそれだろう、
 それをお前が書けばこの不毛なやり取りは終わる。
 何で書いてやらないの」
「だから僕は言ってるじゃないですか!恥を忍んで言ってるんですよ!
 もう僕の心はお前のものだって、なのに何で僕が譲歩するんですか」
「…あーあー、つまりはこういうことね?
 杵柄はレベル1で、上智がレベル99ってこと」
何それと橘が聞いてくる。
「俺、スマホでゲームやってるんだけどさ、
 最初は誰でも主人公が超弱いの。
 レベルが1なの。
 だから敵もそれに合わせてレベル1で出てくるの。
 で、経験を積むとレベルが2に上がる。
 すると敵のレベルも2に上がるって仕組み。
 杵柄は超初心者で、上智が超ハイレベル、だから噛み合わないんだよ。
 杵柄はスライムで苦戦してるのに、上智はもうラスボスの目の前でぎったぎったにしてるってことよ」
俺は杵柄に向き直る。
「お前が欲しいのは、『はい、お友達になりましょう』、そうだろう?」
「そうです!さすがは猪瀬先輩ですね!天野先輩がメロメロなのがよく分かります!」
俺は今度は上智に向き直る。
「お前が欲しいのは、『俺も好きだよ、上智』、そうだろう?」
「そうです!さすがは部長です!天野先輩がメロメロなのがよく分かります!」
というわけだよ橘と俺は冷ややかに言った。
「分かった?」
「え、同じじゃないの今の」
俺は頭を抱えた。
駄目だ、橘がまじもんの鈍感なんだわ…。
「いいか上智、杵柄はお前の心なんか今はまだどうでもいいんだ、
 お前には酷だろうがな、心のことはちょっと置いておいて、
 杵柄が欲しがってる答えをあげるんだ。
 分かるだろ、どう言えばいいか」
「僕の心は、」
「違うって!『友達になってやる』、それだけだよ!」
「何でですか、部長、僕は友達以上の気持ちを杵柄に持ってるんですよ?」
「じゃあこう考えろ、お前は親鳥だ、親鳥。
 杵柄はお前の後をついて回る可愛いひよこだ、
 分かるか」
「こんなでかいのがどうしてひよこなんですか」
「例えだよ!
 とにかく言え!杵柄に!『友達になってやる』とだけ言え!」
「分かりましたよ…。杵柄、友達になってやるよ」
その瞬間だった。
今までむすっとしていた杵柄が笑顔になったのだ。
「そ、そうか!なってくれるのか!俺の友達になってくれる気になったのか!」
「あれ、部長、何だかこいつ、変ですよ」
「変なのはお前もだよ…」
「やっとだ、やっとだ!部長!やっと上智が友達になってくれました!
 俺、嬉しいです!今なら100メートルを5秒台で走れます!」
「…いや、無理だと思うけど?」
やったあやったあと杵柄はその日、ものすごく上機嫌だった。
ただ上智は、不服そうだったが。
「じゃあ友達になった記念に、俺の部屋に来い、上智!」
「お、おい、一応上智はな、」
「分かったよ…ま、まさか、今度こそ会長のサイン入りポスターとか貼ってないだろうな!?」
「え、え、」
「俺が今まで育てていた猫の話をしてやる、
 もうインスタは閉じちゃったけど、スマホに写真がたくさん残ってる、
 それで全部の猫を紹介する!
 ああ部長、もうこんな時間ですね、上智を家に呼んだので、
 俺達帰っていいですか!?」
「…いいよ」
「じゃあ上智行くぞ!みんな可愛い子ばかりだからな、俺の自慢の子たちばかりだ!
 ああ夢みたいだ、友達に猫の話をする…
 俺は何て倖せだろう!では部長、猪瀬先輩、お疲れさまでした!行くぞ上智!」
「あ、ああ。…ではお先に失礼します」
というわけだよと俺は橘に言う。
「相手を知れば戦えるって言うだろ、上智は杵柄を、杵柄は上智をちゃんと見てなかったんだ。
 お互いに欲しい言葉や行動が違いすぎるんだ、
 精神年齢の違いなのかな、
 杵柄は小学生以下、そんで上智は真咲より上だ」
「…猪瀬、お前すごいな。だてに天野といちゃいちゃしてなかったな」
「…あの、お前こそそれでよくキラキラ柳瀬橋とお付き合いできてたなと、俺は思うよ…」

コトワリⅦ

コトワリⅦ

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  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2023-03-18

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  1. 杵柄元就と上智比呂
  2. 杵柄元就の番
  3. 上智比呂の番
  4. 杵柄元就の番⓶
  5. 橘総太朗の疑問
  6. 上智比呂の番⓶
  7. 杵柄元就の番③
  8. 橘総太朗の疑問⓶
  9. 柳瀬橋袂の理
  10. 上智比呂の番③
  11. 杵柄元就の番④
  12. キレる猪瀬大地