変身願望
あおい はる
変身をとげた。あのひと。バケモノになる、という感覚を、知らないままに生きていたはずなのに、おそらく、一皮むけば。(血を吸ったみたいに、赤い月の夜だった)
街が、海底に沈んだように静かに、えいえんのねむりにつく頃。ひとびとのやさしさがすべて偽りだった、わけではなく、単に、そのやさしさを疑うようになり、他者、というものへの恐怖と侮蔑がまざりあって、だれかのことを、衝動的に嫌いになってゆく感じをわるくないと思うし、最低だとも思う。驕りと虚勢は等しく。おびえているじぶんをかくすみたいに、だれかを蔑む。そういうふうになりたくないから、あのひととおなじ、バケモノになりたい。
もしくは、星の肉。
変身願望