壊れた眼鏡

[ 400字小説 / 10 ]

お題:書く習慣、とりとめもない話

眼鏡が壊れた。右の柄の部分がバキッといった。眼鏡がないと生活できないわたしは、とりあえずセロハンテープを巻いて応急処置したのだけれど、案外、誰もそれに気がついていないようだ。
忙しさから美容室に行けず、伸ばしっぱなしの髪も幸いしたのかも知れない。ただ、支柱が定まらず、なんとも心許なくて、わたしは仕事帰りに行きつけの眼鏡屋に寄った。

「いやー、見事に折りましたね。真っ二つに」
いつものお兄さん店員はそう言って笑い、
「今日はどうしました?」
まるで病院の診察のように聞いて来る。
「踏みました。おしりで。机に置いたはずなのに何故か椅子の上に落ちてて」
新しい眼鏡を勧めるでもなく、彼は笑いながらお直ししますねと奥に引っ込んで行く。初めての給料で買った眼鏡。散々悩んで買ったことを覚えてくれているようでとても嬉しいのだけれど。

本当は新しいのが欲しいだなんて言ったら、彼はどんな顔をするのだろう。

壊れた眼鏡

2022/12/18

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壊れた眼鏡

眼鏡がある日常

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-16

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