ペ ル ソ ナ

 ふわりと、春のにおい。
 にぎわっている公園で、ソフトクリームをたべるのはひさしぶりだった。にんげんたちは、みんな、解き放たれた小動物みたいで、愛しい、と、彼は云って、わたしは、にんげんを愛しいと感じる、彼の、その心をひとりじめできたらいいのにと、いつも思っている。池には、無数のボートが浮かんでいて、かけまわる子どもの、はしゃぐ声が、おおきくなったり、ちいさくなったりする。ひとりきり。ふたりぐみ。かぞく。団体。いままで、かごのなかしかしらなかった、小鳥みたいに。

(世界がみせる、昼のかお)

(夜はまた、ちがうかお)

 ゆうがたになって、きょういちにちのニュースをみれば、きっと、愛しい、という気持ちも、うすれるでしょう。かわいらしい、ちいさなどうぶつ? もしかしたら、獣。肉食で、エゴイスト。生と、性への執着。孤独に苛まれて、承認欲求をみたすため非人道的行為に走った末の孤立を、想像できないでいる。
 かわいそうないきものだって、同情してくれてかまわない。彼にならば。

ペ ル ソ ナ

ペ ル ソ ナ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-15

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