一歩先へ
紅里の学校に転校してきた結葵。
結葵には秘密にしていることがある。
そして紅里も普段は気づかなかったことに気づき...。
赤い瞳の転校生
side灯里
さざ波がうるさいこの学校とももうすぐでおさらばできる。
「以上を持ちまして卒業生・・・」
私は体育館を見まわして溜息をついた。
「紅里ちゃん、ちゃんと前向いて、それと猫背になってる!ちゃんと注意しないと先生に叱られるよ。」
隣に座っている崎沢楓音から忠告を受ける。
私は頷きながら姿勢を正し、前を向いた。
そう、私たちは今卒業式の真っ最中。
校長先生の話を聞いている。
面倒くさいな、早く終わればいいのに。
ってゆうか楓音も喋ってたら叱られるでしょ。
早く終われよ。マジで。
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退屈な卒業式を終えて3か月。
高校に通ってだいたい2か月。
高校も中学と似てつまらない。
先生が話し出した。
今日もどうせつまらない話だろうと思って窓際を見ている。
「今日はみんなに伝えたいことがある。」
いつものパターンだ。
「転校生が来た。今から呼ぶが、質問をする時間をつくるから、何を質問するか考えておいてくれ。」
「紅里、何質問する?」
後ろの上田柚月がこついてきたが、
「転校生とか興味ないし。」
柚月は苦笑いしていた。
扉が開き、紫がかった黒の髪をなびかせて入ってきた。
「初めまして。天野結葵です!ぜひぜひ仲良くしてください!」
あまのゆき、か。一応覚えておこう。
結葵のこと
「ありがとう。何か質問はないか?」
「はいっ!」
白里綾芽だ。優等生ぶってる女子。嫌いなタイプ。
「天野さんの誕生日はいつですか。」
「私の誕生日は7月7日、七夕の日です。」
「他。」
「はい。」
杉本朱音だ。陽気で何でも首を突っ込む。うるさいやつ。
「好きな食べ物は何ですか。」
「好き嫌いはありません。」
「あと一つにする。他にないか。」
みんな手を挙げない。
「では質問の時間を終わる。窓から二番目の一番前の席に座れ。」
私は窓から一番目の一番前。つまり天野は私の横だ。
天野が横に座った。
「よろしくね。」
と笑顔で言われたが無視した。
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それ以来天野は人気者になった。私の横に休み時間、いろんな女子がやって来る。
うるさいんだけど。静かにしろよ。
そんなことを思いながら本を読んでるふりをした。
いつか聞こえた
「遠藤と仲良くしなくていいんだよ。」
という言葉に傷ついていることも知らずに。
天野結葵は天然?
結葵が転校してきて約2ヶ月。まだあいつの人気は途切れないらしい。
マジでうるさい。まぁ、流石に慣れてきたけど。
結葵は色んな人に相手されてるくせに、
「灯里ちゃん、遊ぼうよ〜。」
っとか言って遊びに誘いにくる。
ねぇ、鬱陶しいのもそうだけど、周りからの
「灯里はほっとこうよ。それより、私たちと遊ぼう?」
っていうのがもっと鬱陶しい。
私は遊びたくないってことを顔に出してるのに、結葵には伝わってないみたいだ。おかげで私はうるさい周りからの声に囲まれてるのに。天然なんだろうか。はっきりいって、私はあいつが嫌いだ。だけど、どこが嫌いかを訊かれると答えることが出来ない。あいつが近くにいると自分の劣っているところが全て分かる。あいつはかわいくて、優しくて。私には敵わない。
そんな奴に好意持たれたってどうしようもないのに。それに、私、友達なんてもう、つくりたくない。できるなら、あいつと友達になってみたい。でも、もう、あんな辛い思い、したくない。
灯里の過去
灯里は、小学生の頃、いつも一緒に行動していた子がいた。灯里はずっと、「この」
結葵の心の中
side結葵
この学校に来てもう2ヶ月くらい経った。まだ周りのJKにいちゃつかれてる。面倒だよね、こうゆうの。私は灯里ちゃんと喋りたいのに。灯里ちゃんってなんかクールなんだけど、なんか可愛いんだよね。だから一緒にいたいのに、みんなやめろって言うんだよね。でも、灯里ちゃんは私といるのは嫌みたい。それくらいは《オーラ》の色を見なくてもわかってしまう。だって顔に出てるんだもん。他の子はほとんどの場合顔に出すことないし。《オーラ》の色を見ないと時をとめることが出来ないから。「葵、葵ちゃ…、結葵ちゃん!」
横から大塚柚架(通称ゆづっち)が心配そうに顔を覗いてきた。
一歩先へ