君がいない
[ 400字小説 / 08 ]
仕事からの帰り道、少し遠回りして電飾屋に寄った。悪い癖が出て何時間か悩んでしまったが、足りない分はこれでなんとかなるだろう。
「ただいま」
その声に返事はない。玄関で靴を脱ぎ、揃えていたところで飼い猫のルルが擦り寄って来た。
「起きてたのか」
頭を撫でてやろうとしたらかわされた。気まぐれだとの通説の通りルルは容赦ない。
「さてと」
部屋着に着替える前にリビングに向かい、昨日、届いた電飾を確認していく。どうやらこれで足りそうだ。ただ、自分ひとりで飾れるのかどうか、少しばかり不安が残るのだけれど。
君がいないクリスマス。いかに君に頼りっぱなしだったか痛感する。ひとり息子の聖夜は年末まで帰って来ないが、君がいないからといって、君が楽しみにしていた毎年恒例のハウスイルミネーションを絶やすわけにはいかない。
「さて。どうしたもんか」
何個もの段ボール箱に詰められた電飾を庭に運び、思わず独りごちた。
君がいない
2022/12/15
このお話は、毎日19時に出題されるお題で文章を書くスマホアプリ『書く習慣』で出題されたお題『イルミネーション』をもとに書いた散文を400字のショートショートに書き起こしたものです。