美術愛好家
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先日、藤田嗣治の絵を見に行った。そんなに関心があるわけではないが行ってみようかなぁ的なノリであった。可愛がってくれた祖母が好きだった画家という理由もあった。結果、行って良かったと満足だった。
私からすれば、いわゆるイケズ顔、意地悪な顔つきの女の人のイメージが強い、そしてちょっと少女漫画的な藤田嗣治の絵。直に目にすると線の使い方が繊細で見事だと思った。乳白色の時代の絵も、晩年に描いた子供たちの絵の色の使い方も好きだった。色んな絵に登場してくる猫の表情はユーモラスで愛らしい。フランス?の家の部屋の窓から広場が見える風景画(やはり猫がソファーで寝ている)もドールハウスのような室内を描いたのも素敵。三日月を背にしたディアナ(月の女神)を描いた絵はお洒落でとても気に入った。
途中、知らない女性に声を掛けられた。会場はフロアごとに分かれていて、その女性は今自分が出てきた会場が最後になるのか分からなくなったらしい。私は作品リストからするともう一つ会場があるはずだと答えた。
その後もう一度ミュージアムショップでその人と会った。
「すみません。先程はスタッフの人と間違えてきいてしまいました」と言われた。
そこから何となくどんな画家が好きか、最近のお勧めの展覧会の話しなどをした。何か楽しかった。またどこかの美術館でお会いするかもしれないなどと言ってその場は別れた。
あとから連絡先をきけば良かったなって思ってしまった。でも同性とはいえ、初対面の相手にきかれたら怖いだろうなとも考えた。
私は美術館に行くときは大抵一人だ。観るのに自分のペースがある。連れがいるとそこはどうしても乱されてしまう。それが面倒だから一人で行く。
一人だから、同じように美術を愛する他の人と感想を言い合うこともないのだが、たまにはこういう交流もいいなと思った。
美術館の喫茶店で初対面同士でも感想を語り合う会とかやれたらいいのになぁ。まぁ、私の場合、その代わりのエッセイなんだろうけれど。
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