次の講義に間に合いそう・・蝉時雨が大きくなっていく。
キャンパスでの二人。
Úgy tűnik, hogy a következő előadásra még időben odaérek.
次の講義に間に合いそう・・蝉時雨が大きくなっていく。
加賀夕子はキャンパスのcontestで優勝し業界入りを果たした。
その当時、彼女はキャンパスでは花の存在であって当然だったのだが、仕事で忙しく姿を見せる事は少なかった。
葉山洋二は女優ともなれば、素人の此れは・・と言う女性とも桁違いの美しさを持っていて当然だ程度に思っていた。
其れにあまり身近な存在だっただけに、単に学友という意識の方が優先していたような気がする。
要は、彼女は業界人なのだからという区切りのような意識が強かったのだろうと思う。
キャンパスで周囲に学生がいるとすれば、素人美人であり、寧ろその方が学友にとり近づきやすかったのもよく分かる。
同じ様にキャンパスには、同期では中村雅俊などの業界人もいたが、足早に移動している姿に気が付く程度で誰かが一緒にいる様な事は無かった。
やはり、義塾くらいになればそういう暗黙の冷静さが存在していた事になる。
後に後輩とし、石原慎太郎の妻と予報士になった息子が二人で歩いていたのを見た事があるし、タイガースのドラマーも同じだったが後に高校の教師になったと聞いた。
かなり後の事になるが、同じ業界のタレントと結婚をした事からしても住んでいる世界が違うという事だろう。
卒業も近くなり、彼女が卒業に必要な単位を取れるようにと同じ講義を専攻しノートを取ってあげていたのも友情のなせる業に過ぎない。
彼女の時間に余裕がある時に、講義の内容の中でのポイントを説明する事も同じ意味合いと考えて良いだろう。
何も進む方向が異なれば、ずっと後の後輩である竹内まりやの様に才能を生かした方向に進む事を優先するのは当然。
特別の才能の持主であれば、学歴など全く必要では無くなる。
中には中途退学をし、TV会社に入社する者もいたが、彼女には何故か頑張って卒業をして貰いたいと思った。
それ以降はミスコンからTV局のキャスターというコースがあったりしたようだが、世代の差は考え方や行動に影響するようだ。
決して好ましい事では無いが、最近のニュースに大学の後輩の記事が偶に載る事があるが、猥褻行為をした様なケースでレベルが低下したと思う。
洋二達の時代にはそういう輩はおらず、彼女のケースでも単に立派な役者になって貰いたいと思うだけだった。
互いに社会に出れば別の道を歩むのだからと、そんな事を至極当然に感じた。
二人で卒業証書を取りに行ったのが、彼女と行動を共にした最後だった。
洋二は、最初の就職先は約二年程勤めたが、元から考えていた専門職を目指し転職をした。
資格試験はそう難しいものではないが、実際に活動するのには経験がものをいい、そうで無ければ役に立つ専門職とは言えない。
何の仕事でもそうだが、覚えた知識は最低限の常識に過ぎず、更に実務での知識や難解な経験を積む事で一人前になっていく。
公務員などの場合には、簡単な試験さえ受かれば部署も決まり、後は極狭い範囲での実務を覚え、年数が経てば役職も上がっていくという、或る意味、ところてん式の職場の見本の様なもの。
其れだから少しでも自分の管轄外の事を聞かれると、全く無知で担当は別ですからとの返答が返って来るだけ。
幅広い知識や経験に無縁な公務員を見る度に、さぞかし詰まらないだろうになど思うのだが、其の本人は却って楽だという満足心に満たされているのだろう。
企業法務や法曹界で一人前になるには、六法は最低限の教科書のようなものに過ぎず、先輩に教えて貰ったり法廷での経験を積む事で人による差が生じる。
同じ弁護士でも其々能力や特異な分野が異なるのは、本人の希望も然りであるが、手法や話法に能力の差が生じるのは生まれ持っての頭の回転の差や専門的なlevelでの創造性も関係してくると思う。
ただ、能力で無く共通に会得しなければならないのは、案件毎に、例えば関連する業種により其々法律が異なるから、其れを会得していく度に、自然に数多くの法を覚えていく事に繋がるという事。
具体的には、弁護士により民事・刑事双方の経験を積むのだが、得意な分野が異なったり医療訴訟などを嫌う者もいる。
最初は事務所にもある様な書式を作成したり、管轄裁判所で若干異なる決まりを覚える事などから始めていく。
それ以外にもやらなければならない事は幾らでもあり、幅広い経験こそが自らを成長させる為の唯一の手段でもある。
卒業し暫くは異業種の同窓生との交流もあったが、時を重ねるに連れ、専門的な日常に追われるようになり、交流も同じ法曹界などに携わる者に限られて来るのが常とも言える。
夕子からは時々連絡があった。彼女はきっと女優としての一流の道を歩んでいるのだろう。
映画やTVを見る事はあまり無かったが、ニュース記事に目を通すのは欠かせない事と言えそうだ。
偶々立ち寄ったカフェの、ラックから取り出した週刊誌で彼女に関する記事を見た。
其れには彼女が出演している映画などや、業界人同士の出来事の触り程度も載っていた。
彼女に交際中の男性がいるような記事になっている相手の男性の外見だけを考え、彼女ならお似合いだろうと思ったりした。
暫らくした頃、彼女から結婚をするので・・との手紙が届いた。
彼女が結婚するのであれば、どうして式に呼んでくれなかったのだろう?など思ったが、何時までも学生時代の彼女でもあるまいに、正に大女優なのだから当然だろうとも。
只、手紙に同封されていた写真が、卒業当時の二人を友人に写して貰ったものだったから少しおかしな気もした。
「・・貴女は業界人であるので、結婚すると窺い祝福でもと思ったのですが、生憎、一般人である小生としては、其の晴れ姿を見るだけの身分でなかった事、聊か残念ではあります。何れまたお会いできることを楽しみにしております。其れではお幸せに」
取り敢えず文面で挨拶を。
何か、心残りの様なものも感じたが、丁度europe に渡航する仕事の要請がある日系企業から。
此の国の弁護士で、USAの弁護士資格を取得する者はいても、この国での仕事が忙しければ、そうもいかないのは当然だろう。
少なくとも知人や法人からの要請でも無ければ、両方の国で活躍するきっかけも掴めないだろう。
先日の皇室関係者などは、どんな目的で?と考えたところで意味は無く、其々考えがあるのだろうというに過ぎない。
増してや、europeともなれば28か国での仕事であり、言語の問題や国民性に諸事情も関係し一筋縄ではいかなくなる。
其れに、国際情勢もある意味勘案すれば、取り敢えず海外でとなったとしても、西側諸国や東側諸国との関係も考えなければならない。
Englishのみならという言葉の点はこの際、bilingual同時通訳をつけるしかない。
この国での活動を重視するか、思い切りよく海外での活動を優先するかは人にもよる・・と言ってしまえばまるで他人事のようと思われるのだろうが。
其れと、今回はこの国の現地法人からの。その点は若干助かる様な気もするのだが。
依頼案件が都合よく偏っておれば良いのだが、案外、出たとこ勝負であったり?
勿論、建前はこの国の法人・個人の案件。だが、そうとばかり言ってはいられない事も・・?
国際弁護士などと言う言葉がNHKのキャスターの口から洩れ、独り歩きをする事がある。
言いたい事は理解できるがその様な資格など存在しない。
世界を股に掛け活動する弁護士と言ってしまえば聞こえは良いが、実際にはややおかしな事になりそうな気もする。
何れにしても賽(さい)の目は。
精一杯頑張ったのは事実。或る意味超人的なScheduleとも言えるような事になった。
というのも、日系企業から次第に離れていく様な事情が生じる事にも。
勿論、事務所はeuropeに設けてあるが、lawyerも数か国のnativeを雇用する様になっていた。
洋二も一時は身体の不調を訴え・・。
其処に、UKでの貰い交通事故に遭う。
思っていたより時間は早く過ぎ去っていき、洋二が帰国する事を度々重ねる様に。
そんな折だったが羽田に降り立った時、スマフォが振動する。何処から?
懐かしい声に驚いた。
夕子から、あれ以来・・本当に久し振りの。其れも、突然だった。
在りし日の出来事に、当時の彼女の姿を重ねる。
「・・相変わらず忙しそうね。何時か時間の都合が付けば、食事でも如何かしら?」
「相変わらずって?・・ああ、いや、君こそ忙しい身じゃないのかな?最近は業界の・・話題などにお目にかかる事は無いんだが。元気でやっているんだろう?」
「・・ええ、貴方ほど・・」
語尾は聞こえなかったが・・。
結局、都合をつけ、昔よく行った眺めの良いホテルで夕食をとる事にした。
彼女の話を聞くうちにまさか・・?と。結婚までは知っていたが・・離婚・・?
理由は、性格の不一致?・・彼女の事であるから、人を見る目に狂いは無かろうに・・。
まるで、時間の経過が信じられないような・・二人。其れでもグラスを傾けては、久し振りに箸を・・order。
いろいろ話をするが・・。
「まだ、箸の持ち方がおかしいのね?」
「・・其れはそうだよ。箸など・・海外で持ち方など分かる者はいないから・・」
と言いだしてから、どうもラーメンが食べたくなり、頻繁にParisやAsiaなど・・何処でも、何件かの路地裏の店を好んで行っていた事を思い出す。
洋二の以前の事務所に電話したようだ。其れで洋二が渡航したと聞いた。
その後も洋二の仕事ぶりを知る者から・・?其れで・・相変わらず忙しい・・と。
業界の現在の状況から個人的な事。
其処で、特に気になったのは、彼女の母上の具合が悪いという事だ。
あの頃、彼女の家に遊びに行った時の母上の顔を思い浮かべたのだが、はっきり覚えている。
何か、それも多少は其の事に関係があるような気がした。家族思いの彼女だった。さぞかし気にしているのかも知れないとも思う。
「・・其れは、さぞかし・・良かったら、僕、一度お見舞いに行けたら・・。いや、実は僕も体調がすぐれなく・・ああ、余計な事を。でも、其れ、今回の事と?」
其れ以上言える訳は無い。
其の晩、二人は久し振りでは無い様な・・昔の様に会話を続けていた。彼女の言葉の端端に、何か、引っ掛かる事があるような気がするのは・・?
他人の家の様に感じられる住まいに帰宅し・・。
14インチのpersonal computerで、過去の業界関連のニュースを調べ始める。
「今、最も美しいと言われている女優、葉山淑子(本名加賀夕子)さんが、記者会見の席上、電撃結婚を発表・・相手は銀行員の男性亀田浩二さん・・」
「・・葉山淑子・・主演女優賞・・アカデミー賞受賞・・受賞・・受賞・・」
「・・葉山淑子が語る、母の認知症との戦い・・」
「・・破局か・・」
他にも記事はあったが、要点だけ見れば大方の推測はつく。
先ず驚いたのは、彼女の芸名を改名した際に洋二の苗字を使っていた事だった。
あとは、ナンバーワン女優として数々の賞を受賞した事。其れに・・母・・破局・・。
後半はあまり良い記事ではないのが気に掛かった。
先日、夕食を共にした時に・・その内・・二つの事を話していたが?
何か、自分に聞かせたくない事があったのかも知れない・・。
其れに・・よく考えてみれば、洋二が海外で忙しくなどという事を知っている者・・?
洋二は彼女の離婚の件については、家裁に持ち出すまでもないからと、男性との交渉を引き受けた。
銀行員とはいっても、外為(がいため~外国為替)関係の担当だったらしいが、営業手腕に乏しく、客先を怒らせた事も一度ならず・・万年平?義塾を出、女優の妻を娶った男の七不思議?と言われていた?
其れで、夕子の稼ぎに頼っており、二人の間に口論が絶えなかった?
彼は、外為担当でEnglishは話せたのだが・・Last・・。
「・・Take it easy!・・」
洋二は自らの病院に行った帰りに彼女と待ち合わせをし、母上の具合をと施設を訪ねた。
母上には洋二の記憶は無いようだ、認知症。洋二は其れでも面会が出来良かったと思う。彼女はさぞかし失望を・・と考える。身内は他にはいないのだから。
洋二は再び渡航する事は考えていない。
彼女の今後の事が気になった・・其れでも女優であるから?
しかし、幾ら、大女優と雖も・・仕事とプライベートは違う。
出来るだけ力になりたいと思っている。
あの頃の二人に戻る事は出来ないにしても・・。
洋二は、最初に勤めた会社でも、次の事務所でも言われた事がある。
「・・逃げ足が速いね・・」
しかし、身体を壊した今はそうもいかない・・それだけでは無いが・・。
羽田で、電話越しに夕子が話した事を思い出す。
語尾がはっきり聞こえなかったが・・確か・・?
「・・貴方ほど・・逃げ足は速くないから・・」
決して速くはないし、逃げた覚えなどない。少なくとも・・あの頃は・・逆に遠慮をしていたに過ぎない。
夕子が、芸名を洋二の苗字に変えていた事は・・聞かない事にした・・多分・・何かの間違いなのだろう・・。
二人は肩を並べて歩いている。
洋二は夕子の瞳に視線を・・。
「・・時が、いや、何がどう変わろうと、僕は・・変わらない・・あの当時とね・・」
女優である夕子と・・洋二・・。
何とか・・次の講義に間に合いそうだ・・。
あの頃の蝉時雨(せみしぐれ)が再び大きくなっていく・・。
夕暮五時の斜光静かに・・campusの芝生の上におち、二人・・心を誘う・・。
「by europe123 original」
<p></p><p><iframe class="youtube_iframe" width="488" height="274" src="https://www.youtube.com/embed/WOd05LXYI2g" frameborder="0" allowfullscreen=""></iframe></p>
次の講義に間に合いそう・・蝉時雨が大きくなっていく。
幸せの筈の・・。